2011年の国内IT産業は、クラウドやビッグデータ、スマートフォンなど、需要を喚起するキーワードが複数登場し、浸透した年だった。それを受けて幕を開けた12年。有力IT企業のトップは、今年の市場環境をどう予測し、どのような施策を講じてビジネスを伸ばそうと考えているのか。『週刊BCN』編集部は、昨年末に76社のSIerとディストリビュータ、一部のハードメーカー、ISVの経営層に直接取材し、共通の質問を投げかけた。その情報をもとに、12年の動向を探った。(取材・文/木村剛士)
業界の天気は「曇りのち晴れ」
希望的観測を込めて後半に期待か
2011年度上期は順調 IT企業の経営層は、2012年の市場環境をどうみているのか。それを天気にたとえてたずねた。その回答で最も多かったのは「曇りのち晴れ」だった。約70%のIT企業幹部がこう答えている。今は振るわない状況だと感じているが、後半になっての回復を見込んでいるようだ。
2011年は、3月11日に東日本大震災が発生し、IT産業の先行きも一気に暗くなった。11年4月から始まる新年度の見通しを発表しないIT企業も多くみられ、前年に比べて業績が大幅にマイナスになる可能性が高かった。しかし、結果的にはその悲観的な予測に比べて「落ち込み幅は小さくて済んだ」(JBCCホールディングスの山田隆司社長)。上期を振り返って、山田社長のような見解を口にするIT企業の経営者は多かった。
IT調査会社のIDC Japanが11年10月下旬に発表した最新(2011年)の国内IT産業規模予測では、8月に発表した数字と比較して0.8ポイント改善すると予測を修正した。同社は、11年の市場規模を前年比1.6%減の12兆4797億円としている。また、同じくIT調査会社であるノークリサーチは、11年12月中旬にx86サーバーの上期(11年4~9月)出荷台数を発表。前年同期比6.7%増の26万7852台とした。同社の伊嶋謙二社長は、「東日本大震災の影響は軽微で済んだ」と話し、通期でも6.1%増の54万2052台を見込んでいる。
下期は一転厳しく 思った以上にマイナスインパクトが小さかったにもかかわらず、12月の段階で現在を「曇り」と予想したのは、下期に入って停滞感を感じているIT企業が多いことが背景にある。富士通の山本正已社長は、年末のインタビュー時に、欧州の金融危機など世界の社会・経済環境の悪化を理由に挙げ、「下期に入って先行きが再び不透明になった」と話している。
2011年は、タイの洪水やギリシャの財政危機、急激な円高など、東日本大震災以外にも経済を悪化させるできごとが複数起きた年だった。とくに年の後半になって顕在化してきた事象が多く、それを不安視しているIT企業が多いのだ。
予想されたほどの悪影響を受けずに済んだ上期、東日本大震災以外の外的要因で再び厳しい環境に陥った下期。では、12年をどうみているか。
76社のIT企業に聞いた共通質問のなかで、2012年(12年度)の自社の売上高成長率をたずねている。それをまとめると、最も多かったのは、「0%以上5%未満」で全体の50.9%を占めた。続いて多いのが、「5%以上10%未満」で24.6%で、その次は「10%以上」の17.5%。約半数の企業が5%未満と予想していることをみると、慎重な姿勢をとる経営層が多いことがわかる。
キーワードは変革 共通質問では、自社のキーワードとなる言葉についてもたずねている。各社各様だが、傾向を探ってみると、2012年で目立つのは、「改革・変革」という言葉だ。経営者が好む言葉の一つだが、東日本大震災という想定外のできごとを経験した後、IT企業は改めて大きな変化を遂げなければならないという意識を高めてきているのだろう。
証券会社向けSIとアウトソーシングサービスを得意とするJBISホールディングスの内池正名社長は、「震災の影響で事業継続計画を見直す必要があり、社員も働き方をみつめ直している。これまでとは違う考え方で経営に当たらなければならないという意識が芽生えた年になった」と11年を振り返っている。
実は、2010年末にも同様に翌11年のキーワードを聞いているが、その時点で多かったのが「挑戦」だった。挑戦から変革へ──。有力IT企業のトップたちは、厳しい経済環境を予測し、変わることを強く意識している。
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