インテグレーションは減らない
アプリ開発で独自の付加価値を
日本オラクルや日本IBMの動きに刺激されて、垂直統合型システムが相次いで登場する状況下、多くのSIerは、SIの需要が縮むのではないかと危機感を強めている。その危機感を払拭しようと、メーカーはアプリケーション開発をキーワードに掲げ、パートナーが利益を確保できるビジネスに取り組んでいる。
「Exaシリーズ」や「PureSystems」は、導入コストが比較的高額になることもあって、従業員数1000人以上で、複雑なシステム構成をシンプル化しようとしている企業を主なターゲットに据えている。メーカーは、ユーザー企業の経営層に対するハイタッチ営業などによって、提案活動を推進しているところだ。
●本格普及の兆し  |
日本オラクル 首藤聡一郎 ディレクター |
2年ほど前から導入が進み始めている日本オラクルの「Exaシリーズ」は、メガバンクや証券会社などの金融業界で需要が高まっており、導入事例が着実に増えつつあるようだ。「Exaシリーズ」担当で製品事業統括の首藤聡一郎ディレクターは、「ニーズが確実にあることを踏まえ、垂直統合型システムの普及に最優先で取り組む。向こう数年、開発や販売への多額な投資を計画している」と、「Exaシリーズ」の展開を語る。
日本IBMは、5月発売のインフラストラクチャ「PureFlex System」に続き、8月にはミドルウェアを含めたプラットフォーム「PureApplication System」の出荷を開始するなど、「PureSystems」の展開に本腰を入れている。日本IBMのトップセラーであるJBCCホールディングスが、ユーザー企業向けの検証環境として、日本で「PureFlex System」の第1号機を今年6月に購入。このマシンを検証用の機材として活用する。JBCCホールディングスは、「PureSystems」の販売戦略を練っているところで、今秋からは「PureSystems」の提案を本格化していくという。
日本IBMのシステム製品事業システムx事業部で事業戦略担当部長を務める東根作成英氏は、「今年発売した『PureSystems』の2機種はあくまでも第一世代で、製品のポートフォリオを順次進化させる」と、今後も積極的に開発を推し進める姿勢をみせる。日本IT業界の有力プレーヤーである日本オラクルと日本IBMがビジネス拡大に攻勢をかける状況にあって、垂直統合型システムはSIerにとってこれまで以上に無視できない存在になりつつある。

JBCCホールディングスが検証環境として設置した「IBM PureFlex System Japan 1号機」を収容するラック(同社の東京・蒲田オフィスにて)
●機会損失を補う施策を打つ  |
日本IBM 東根作成英 事業戦略担当部長 |
日本IBMの東根作・事業戦略担当部長は、「『PureSystems』の販売は、つき合いの深いパートナーと一緒に取り組んでいく」と、パートナー販売に力を注ぐ方針を強調。パートナーとの関係を重視する日本IBMは、多くのSIerが垂直統合型システムの普及によってSI案件が減少することを懸念しているなかで、「PureSystems」の販売を手がけるパートナーにとってもメリットがあるということを訴えている。「『PureSystems』も、必ずインテグレーションがついて回る。オープンシステムと比べると案件の幅が狭くなるが、件数自体は変わらない」(東根作事業戦略担当部長)と断言する。
日本IBMは、販売パートナーに対して、案件の縮小による機会損失を補うために、これまでシステムの設計や開発に使った時間や人材といったリソースを、アプリケーション開発をはじめとする他の分野に活用することを促している。同社は、プラットフォーム製品である「PureApplication System」上で動くアプリケーションの開発を基本的にパートナーに任せており、アプリケーションの販売を行う仕組みとして、認定パートナーとのコミュニティサイト「PureSystems Centre」を開設した。このサイトでは、パートナー130社以上のアプリケーションパターンを掲載している。日本IBMは、「PureSystems Centre」で、低コストで迅速にアプリケーションをデリバリする仕組みを用意することによって、ERPやCRMなど、パートナーにとっても利益が出る「PureSystems」用のアプリケーション開発を促進しているわけだ。
●SIer独自の力を発揮 一方、日本オラクルは、「Exaシリーズ」上で動くアプリケーションを自社で開発し、製品に組み込んで提供することを基本方針としている。米国本社はここ数年間、CRM(顧客管理)などのアプリケーションベンダーを買収し、自社アプリケーション製品のポートフォリオを拡充してきた。同社は「Exaシリーズ」の販売を手がけるパートナーを、「当社の製品を数多くのユーザー企業に知ってもらうために不可欠」(首藤ディレクター)と考えている。自社製品に付加価値をつけるべく、アプリケーション開発の一部を販売パートナーに任せ、「日本のSIerでなければできないもの」(同)の開発を狙うという。
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