このところ、IBMの「PureSystems」に代表されるハードウェア・ソフトウェアの垂直統合型アーキテクチャが再び登場し、IT業界では、システム構築（SI）のニーズが縮小する、極端にいえば、「SIがなくなるのではないか」という危機感が募りつつある。

　システムインテグレータ（SIer）は、オフショア開発やクラウドコンピューティングの普及によって、以前から従来型ビジネスの見直しを余儀なくされてきた。追い討ちをかけるように、垂直統合型がシステムの新しいアーキテクチャとして定着すれば、SIerは、これまで以上に事業モデルのテコ入れを迫られることになる。

　日本IBMシステム製品事業システムx事業部の東根作成英・事業戦略担当部長によれば、「ユーザー企業は、システムのインフラ部分にお金をかけすぎている」ということになるらしい。IBMは、この4月に「PureSystems」をグローバルで発表した。ソフト・ハード統合型でシンプルなシステム構成によって、設計から開発、運用までのプロセスが大幅に短縮できることを訴求ポイントとしている。ユーザー企業からみれば、コスト削減につながるのでメリットが大きいが、設計・開発・運用をビジネスの柱としているSIerの立場からすれば、その多くは事業が縮小してしまうという懸念を抱いていることは間違いない。

　しかし、視点を変えてみれば、垂直統合型アーキテクチャの普及は、逆にSIerのビジネス拡大を促す可能性をもっているともいえる。垂直統合型アーキテクチャでは、システムの設計や開発に必要な時間を短縮することで、SI案件ごとの受注金額が減る。これは避けられない事実だ。だが、その一方で、時間短縮によって、SIerは案件に投入する時間や人材のリソースを他の案件の獲得に活用することができる。要するに、リソースを増やさずに案件の数を増やし、それによって、案件ごとの受注金額の減少を補うことが可能になるわけだ。

　日本は、GDP（国内総生産）あたりのIT投資比率が米国の半分程度にとどまっている。ユーザー企業は、ビジネスのグローバル対応や生産性の向上を図るために、プライベートクラウドへの移行をはじめとして、システムの再構築を喫緊の課題としている。システム構築の需要は必ずあるはずだ。

　SI事業者は、新しい市場環境に対応するために、いち早くリソース活用の効率化を実現する必要がある。垂直統合型アーキテクチャ時代の到来をきっかけとして、早期にビジネスモデルの変革に踏み切ることが、生き残るための策となる。（ゼンフ ミシャ）