日本IBM(橋本孝之社長)が新分野のコンピューティング・システム「エキスパート・インテグレーテッド・システム」の第一弾として発表した「IBM PureSystems」。汎用機の柔軟性、アプライアンスの使いやすさ、クラウドの俊敏性を合わせ持つ新システムで、これまでのIT業界の常識を覆すという。ただ、まったく新しいシステムということもあって、販社の多くは様子見の姿勢をみせている。
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| 橋本孝之社長 |
4月12日、日本IBMが開催した「PureSystems」の発表会見で、橋本社長は「まったく新しいカテゴリであり、今日は歴史的な発表になる」とアピールした。また、「IT業界の常識を覆す」とも表現した。
「PureSystems」は、IBMが全世界で蓄積してきたシステム構築のノウハウを「パターン」として定義し、ユーザー企業の実情に適したかたちでシステムを提供するものだ。システムの各部分をモジュール化し、ユーザー企業のニーズに応じて最適なハードウェアやソフトウェアを構成していく。ユーザー企業のニーズに「PureSystems」1台で応えるという点では、汎用機に似ている。また、設置して4時間後には稼働を開始することができるアプライアンスの簡便性も持ち合わせている。さらに、ユーザー企業が要望すればモジュールの追加などによって、迅速にユーザー企業の使いたい機能を追加できる。まるでクラウドサービスのようだ。汎用機、アプライアンス、クラウドの三拍子が揃ったシステムについて、販社はどのように考えているのか。
販社の間では、「さまざまなハードを組み合わせずに済むので、ユーザー企業に提案しやすいように思う」という声が聞こえる。「PureSystems」を売るようになれば、ハードの選択の幅が小さくなって、ライバル販社との差異化が図りにくくなるが、アプリケーションで強みを発揮したり、日本IBMのノウハウを結集した「パターン」を生かした提案力で案件を獲得するというわけだ。また、「複数のメーカーの製品を組み合わせるよりも単独メーカーの製品を導入したほうがトラブルなどに対処しやすくなる。だから信頼性が高いと考えるユーザー企業が多いはず」とみる向きもある。
ただ、「実際に売れるかどうかはわからない」というのが多くの販社の本音のようだ。販社の多くは、これまで複数メーカーのハードを組み合わせてユーザー企業に提供していた。ユーザー企業の要望に応えるためにマルチベンダー化を図ってきたビジネスモデルを、1メーカーだけ提案するモデルに変えるのは難しい面がある。
オラクルやシスコシステムズ、デルなども、サーバーとストレージ、ネットワークなどを統合した製品を発売している。1台のシステムでユーザー企業のニーズに応えるというモデルが時代の流れなのかもしれない。
とはいえ、実際に売れるかどうかは、販社がメーカー1社だけで構成されたITシステムを販売することにメリットを見出すことができるかどうかにかかっている。(佐相彰彦)