【大塚商会の戦略】
ハードとの連携で用途を創造
12年度に1000社の導入を狙う

萩原浩一係長 大塚商会は、オンラインストレージとして「たよれーる どこでもキャビネット」を提供している。同社は、SIerの強みを生かしてサービスとハードを連携することによって利用シーンを創造している。つまり、オンラインサービスの用途を広げることでユーザー企業を増やしているのだ。今年4月にサービスを開始し、初年度となる今年度(12年12月期)に、1000社の導入を目指す。
「どこでもキャビネット」は、パソコンや複合機で登録したデータを、ノートパソコンやiPadなどでどこからでも参照することができるサービス。データの登録は、パソコンでドラッグ&ドロップ、複合機でスキャンの簡単操作でできることがユーザー企業に好評だという。紙文書を複合機から登録して複数の拠点でファイルを共有したり、外出先でもノートパソコンやiPadで閲覧したりすることで、企業内・企業間でのスムーズなファイル共有やファイルの受け渡しなどが実現する。また、登録したデータの利用は、ブラウザだけでなく、Windows用、iOS用のアプリケーションで簡単に利用できることも売りだ。利用料金は、10ユーザーで50GBが利用できるプランで月額3000円(50GB)などと設定している。
ユーザー企業の獲得策について、萩原浩一・マーケティング部Webプロモーション部Webサービスプロモーション課係長は「ユーザー企業のニーズを吸い上げながらさまざまな利用シーンを創造することが重要」としている。同社が、これまでシステム構築で獲得したユーザー企業に対してサービスを提案。そのなかで、今、ユーザー企業が利用シーンをイメージしやすいのが、複合機との連携だ。「紙の資料を複合機でスキャンすれば、ペーパーレス化につながる。この方法がわかりやすくて受け入れられやすい」という。
また、建設業や製造業などでは「複数の企業間でデータのやり取りを行うために、どこでもキャビネットを導入している」という。一定期間のプロジェクトで利用するケースもあるので、「年単位や月額だけでなく、短期間での利用にも対応している」というように、使う側の利便性を前面に打ち出してユーザー企業を獲得している。
今後は、SMBに特化した利用シーンを創造することにも力を入れ、ファイルサーバーになることを訴えるなどで需要を開拓していく。
【ソフトバンクテレコムの戦略】
安全性とアプリケーションが強み
今後3年間は2ケタ成長を維持

林美徳課長 ソフトバンクテレコムのオンラインストレージ「PrimeDrive」は、安全性と高セキュリティを売りに、大企業の部門や中小企業など、さまざまな業種・業態の企業をユーザーとして獲得している。昨年8月に提供を開始し、今年10月末の時点で500社が導入。林美徳・営業開発本部クラウドサービス部アプリケーションサービス課長は、「計画を上回る件数を獲得している」と自信をみせている。
「PrimeDrive」は、利用料金が1GBで1万2600円から。個人向けやSOHO向け低価格ストレージ機器は1TBで1万5000円未満なので、1GBで換算すると、かなり高額だ。にもかかわらず導入者数が増えているのは、「このサービスのセキュリティ面を評価してもらっているから」と、林課長は説明する。
強みであるセキュリティについては、まずファイルの送信時、ファイルのダウンロードリンク「送付キー」を発行してメールを送信するので、万が一、誤送信が発生しても送付キーを無効にすれば相手側に閲覧されることがない。また、ファイル共有時は登録されたユーザー同士を秘匿することができるほか、10個のアクセス権限を任意の組み合わせでカスタム設定でき、安全で柔軟なファイル共有が可能となる。そのほか、特定の端末からだけアクセスを許可し、不正なアクセスを防止する機能をもっている。さらに、ユーザー企業から預かっているデータは絶対に消失しないように、「DR(ディザスタリカバリ)サイトを構築する」という。
「3か月から4か月のペースでアプリケーション機能の追加や強化を行っている」ということもユーザー企業の獲得につながっている。今年11月末には、サーバー内のデータ暗号化機能の追加、コーポレートポリシーのメニュー拡充、スマートデバイスのプレゼン機能の操作改善など、20~30項目の機能の追加・強化を予定している。
販売面では、企業間のデータのやり取りを用途提案のメインに据えて、「PrimeDrive」とiPadを組み合わせて提供している。現在は直販が中心だが、SMBを掘り起こしていくために「販売パートナーを増やすことも検討する」という。売上高は、今後3年間、2ケタ成長の維持を狙う。
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