クラウド型オンラインストレージサービスの利用が法人市場で活性化しつつある。月額課金で安価に使えることが理由だ。しかし、オンラインストレージサービスが主流になってくれば、ユーザー企業がストレージシステムを構築するケースが少なくなって、機器販売ベンダーにとっては大きなダメージとなる可能性がある。そんななか、ストレージメーカーのニューテック(笠原康人社長)は、あえてオンラインストレージサービスを開始。同社の製品を担ぐ販社の付加価値商材と位置づけて拡販することに踏み切った。

柳瀬博文
取締役 ニューテックは、東京都港区にある本社と神奈川県鎌倉市にある「大船テクノセンター」の2か所にデータセンター(DC)を構築。そのDC内にクラスタ型ストレージ機器を構築し、オンラインストレージサービスを提供している。利用料金は、1~5GBで1GBあたり月額80円、10GBで月額50円、100GB~1TBで月額40円に設定している。
ユーザー企業は、インターネット環境があれば、専用ウェブGUI経由でパソコンからデータのアップロードやダウンロードができるほか、ニューテック製NAS「SmartNAS」を導入していれば、SmartNASに保存したデータを自動的にアップロードすることができる。アップロードしたファイルは日付やキーワードなどで検索が可能。データ転送をSSH(セキュアシェル)で暗号化・認証することに加え、認証やデジタル署名などに使われるハッシュ値「MD5」の管理で、中身が異なる同一ファイル名を別ファイルとして保存して改ざん防止を実現するなど、セキュリティも確保している。
オンラインストレージサービスを提供することにした理由について柳瀬博文・取締役営業技術部長は、「オンラインストレージサービスの多くは個人を対象にしており、企業が利用するにはセキュリティの点で不安が残る。ストレージ機器メーカーがサービスを提供することで、企業が安心して使える環境を整えていきたい」と説明する。
また、販社のビジネス拡大につながることも想定。「SmartNASのオプションとしてオンラインストレージサービスを組み合わせたり、単体で提供するなど、ストックビジネスが加わって新しい収益源をつくりだせるのではないか」とみている。
最近では、アマゾンウェブサービス(AWS)をはじめ、数多くのオンラインストレージサービスが登場しており、ストレージ機器メーカーのビジネスが縮小する可能性がある。ニューテックでも、現状の市場環境を見据えて「今後は機器とサービスの売上比率が半々になるだろう」と捉えている。機器だけでなく、サービスも提供することで、他のストレージメーカーとの差異化を図っていく。(佐相彰彦)