情報サービス業のビジネスモデルが大きな変化を遂げるなか、準大手や中堅・中小のSIerは新ビジネスやアイデアビジネスの立ち上げに意欲的に取り組んでいる。あの手この手でビジネスチャンスを掴もうとするSIerの姿に迫った。(取材・文/安藤章司)
“強みの横展開”が成功のカギ第2、第3のオンリーワンを確立
準大手や中堅・中小のSIerは、自らの強みを伸ばすことで勝ち残りを目指す。得意とする業務システムを別の業種へ横展開したり、実績のあるアウトソーシングのノウハウをクラウド分野へ応用したりなど“強みの横展開”を推進していくことで競争優位性を高める。売り上げや投資の規模だけの勝負では、業界大手や海外有力ベンダーに到底太刀打ちできない。オンリーワンの強みを生かせる領域で勝負することで、第2、第3のオンリーワンを打ち立てる──。大手の猛攻をかわしながらビジネスを伸ばす戦略だ。
●国内市場の二極化が進む 国内情報サービス市場は、緩やかながら改善に向かっているとはいえ、多くの中堅・中小のSIerにとってみれば依然として厳しい状況だ。
帝国データバンクの調べによれば、2012年のシステム・ソフトウェア開発事業者の倒産件数は221件で、2000~2012年までの間で最悪となるなど、淘汰の嵐が吹き荒れている。また、日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の「企業IT動向調査2013」(IT予算の速報値)によれば、2013年度のユーザー企業のIT予算が前年度よりも「増加」すると回答した企業は38.6%で、「減少」する企業の割合(34.4%)をわずかに上回った。しかし、IT予算が前年度比で「不変」と回答した割合は前年度比で8.7ポイント増えていることなどから、「マクロ的な視点でみると、おおむね横ばいの状況」(JUAS)と分析している。
国内市場の成熟度が高まるなかで、SIerの勝ち組と負け組の二極化が進むとともに、勝者による寡占化も同時に進行していくものとみられている。
クラウドサービス一つをみても、データセンター(DC)の規模や投資体力では、野村総合研究所(NRI)、ITホールディングス(ITHD)といった年商3000億円プレーヤーやDC専業大手事業者には到底及ばず、使い勝手のいいパブリッククラウドサービスを提供するAmazonの存在感も決して無視できない。そこで中堅どころのSIerが打ち出しているのは、インフラ寄りのIaaSやPaaS的なものではなく、SIerの本分である業務アプリケーションを軸にデザインしたサービスを前面に押し出すことで差異化を図る方策だ。
●特色ある独自商材で勝負 有力SIerのアイティフォーは、2012年8月に本格的な自社運営DCを開設するとともに、クラウドサービスと親和性の高いネット通販システムの拡充を急いでいる。ネット通販では、楽天やヤフー、ビッターズなど複数のショッピングモールに出店するケースが多いことから、多店舗出店対応の在庫や販売管理システムのニーズがある。そこで、まずは2013年春先をめどにクラウド上で稼働する複数店舗連携ツールを開発し、さらには夏をめどに自社開発のネット通販システム「ITFOReC」に対応したバックヤード(基幹業務)システムのリリースを目指す。
組み込みソフトに強いコアは、センサデバイスなど組み込み技術を生かしやすい要素を生かしたM2M(マシン・トゥ・マシン)のサービスメニューを体系化した。サービス名を「ReviveTally(リバイタリ)」として、得意のセンサデバイス技術を駆使することで、農業や遠隔監視、物流、交通、ヘルスケアなどの多種多様な領域への横展開を推進している。また、日本IBM系SIerの日本情報通信(NI+C)は、高い付加価値(ハイバリュー)を指向するIBMのソフトウェア商材の特性を最大限に生かすことで競争優位性を高める。NI+Cではこうしたハイバリューソフトウェアの今期(2013年3月期)売上高に占める構成比を前年度比3ポイント高めた10%に拡大することを目指す。いずれも強みを伸ばす戦略だ。
次項からは、有力SIer6社の“強みの横展開”の事例をレポートする。
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