2013年、マシン同士がIPネットワークを通じて情報を交換し合うM2M(Machine to Machine)ビジネスが活性化する兆しがみえてきた。すでにM2Mのアプリケーションを実行するためのプラットフォームを投入している大手システムインテグレータ(SIer)に加え、来年は中堅規模のSIerもM2Mプラットフォームを市場に投入することが明らかになった。日商エレクトロニクスは現在、M2Mプラットフォームを開発中で、2013年度に発売する予定。アイネットも、来年、M2Mビジネスに取り組むことを明らかにしている。

日商エレクトロニクス
瓦谷晋一社長 ネットワーク構築に強い日商エレクトロニクスは、今年10月、社長直属の専任組織を立ち上げ、M2Mプラットフォームの開発に着手した。プラットフォームは、電力使用を見える化するスマートメーターを展開する電力事業者をはじめ、M2Mのサービスプロバイダに提供するものだ。2013年度中(2014年3月期)に発売するという。
日商エレクトロニクスの瓦谷晋一社長は、「M2Mは、これまでも技術的には実現可能だったが、通信費用が高額なことがボトルネックになって、普及してこなかった。そうした状況にあって、当社は通信コストを下げることをテーマに掲げてプラットフォームの開発を進めている」と説明する。

アイネット
梶本繁昌社長 瓦谷社長の指摘のとおり、M2Mビジネスは、まだ黎明期の段階にある。M2Mは、データのリアルタイム収集・分析によって、エネルギー使用の効率化や物流の改善、交通の整理など、あらゆるシーンで活用することができる。しかし、これまで大手SIerしかM2Mプラットフォームの展開に取り組んでこなかったこともあって、M2Mの実際の活用事例はまだ数少ない。
現時点でM2Mプラットフォームを市場に投入しているのは、「Xrosscloud」のNTTデータや「CONNEXIVE」のNECなど、大手プレーヤーだけだ。M2Mプラットフォームを開発・展開するには、システム/ネットワーク構築のノウハウはもちろんのこと、収集したデータを蓄積するための基盤となるデータセンター(DC)も不可欠なので、SI/NIノウハウとDC設備の両方を有する事業者でなければ実現することができない。
そうしたなかで、昨年あたりからDC事業を推進し、DC設備を強化してきた中堅規模のSIer/NIerが、ここにきてM2Mプラットフォームの提供にビジネスチャンスを見出している。日商エレクトロニクスは大阪と北海道のほか、横浜にもDCリソースをもっており、これらを活用するかたちでM2Mプラットフォームを構築する。
DC事業で日商エレクトロニクスと提携している独立系SIerのアイネットも、M2Mビジネスに取り組むことを明らかにしている。同社は今年10月、横浜に置くDCの増設を開始し、1年後をめどに稼働開始を予定している。梶本繁昌社長は、「当社は、SI部隊とDCの両方を揃えているので、M2Mサービス展開に必要なインフラを提供することができる」と語る。流通や製造の事業者に、M2Mプラットフォームを投入する構えだ。
M2Mは、コスト削減や時間短縮、省エネといった観点から、必ず需要があるとみられる。SIerは、いかに低コストでM2Mアプリケーションの実行環境を実現することができるか──。通信費用を抑えたM2Mプラットフォームの開発は、SIerの腕の見せどころとなる。(ゼンフ ミシャ)