SIerの動き
●【内田洋行の場合】
「エデュモール」を180自治体が導入
ITとファシリティの融合も提案 内田洋行(柏原孝社長)は、2005年から提供している教育用コンテンツ配信サービスの「EduMall(エデュモール)」を提供し、このサービスで約180自治体を顧客として獲得した。デジタル教科書の普及を継続して進めており、ITとファシリティの融合によって、次世代の教室空間を提案している。

内田洋行の「フューチャークラスルーム」はITとファシリティの融合を提供している
青木栄太部長 「エデュモール」は、小中学校用のデジタル教科書をはじめ、資料や図鑑など教育に関わるコンテンツを配信しているサービスで、学校など顧客は1年間などの期間契約でサービスを受けられる。総務省が中心となって実施した、全国8地域98校の小中高校の端末3500台程度を接続してネットワークを活用した教育用コンテンツ配信の実証実験を経て、内田洋行がサービスとして実現したものだ。青木栄太・公共本部教育コンテンツ企画部長は、「教科書改訂から約2年が経過し、最近はコンテンツメーカーが『エデュモール』を販路として認めてくれるようになった」と自信をみせる。今年4月下旬の時点で、コンテンツ数が900タイトルに達しており、アライアンスを組んでいるコンテンツメーカーとして26社を獲得している。
教科書改訂時は、コンテンツメーカーがDVDなど自社パッケージで売ることが多く、デジタル教科書に関心の高い学校側も導入する傾向が高い。しかし、教科書改訂から3年目となる現在では、コスト面からパッケージを導入するケースが少なくなっており、「期間契約で利用できる『エデュモール』へのニーズが高まっている」としている。また、4年のスパンで教科書改訂があることから、「2015年に大きく伸びることを期待している」という。
教室内のIT化については、電子黒板やパソコンを提供しているほか、机や椅子などファシリティを含めて「フューチャークラスルーム」という名称で、「児童や生徒の机を黒板に向けて並べる“箱型”の教室ではなく、新しい教室空間を提案している」そうだ。「フューチャークラスルーム」に対する学校側のニーズは、「現段階ではこれからだが、十分に可能性がある」と断言する。
●【富士ソフトの場合】
STBをハブにしてシステムを提供
タブレット端末との連動にも着手 富士ソフト(坂下智保社長)は、文教市場向けビジネスの拡大に向け、STB(セットトップボックス)をハブにして校内のシステム・ネットワークを提供している。現段階では、デジタルコンテンツの教材を表示するアイテムとしてデジタルテレビを提案しており、今後はタブレット端末との連動にも着手してビジネスを拡大する方針だ。
同社は、今年4月1日に「みらいスクール事業部」という文教市場に特化したビジネスを手がける組織を新設した。責任者の砂岡克也・みらいスクール事業部部長は、「年を追うごとに案件が増えてきたことから専門の組織として設置することになった」としている。
同社が文教市場向けビジネスに本腰を入れるようになったのは、引き合いがあったからだが、「実は、映像配信分野でニーズがあって、映像を中心とする校内放送システムのリプレースを行ったところ、教材コンテンツ配信システムの構築にもつながった」という。映像を配信するためのサーバーを設置して各教室にSTBとデジタルテレビを設置。その配信サーバーを使ってデジタルの教材コンテンツを配信し、STBを経由してデジタルテレビで表示するシステム「みらいスクールステーション」を提供することになった。同事業部の石川敏明・戦略営業室長は、「今年4月の時点で85校に導入した」と、実績を語る。

砂岡克也部長(左)と石川敏明室長 今後は、「みらいスクールステーション」と連動するデバイスとしてタブレット端末を見据えており、無線機能を搭載したSTBを経由してタブレット端末に教材コンテンツを表示する仕組みを実現した。砂岡部長は、「一人一台の割合でクライアントを普及させるには、パソコンではなくタブレット端末が適している」とアピールしている。
現在、文教市場に強いベンダーとのアライアンスを進めているほか、地場ディーラーを販社として獲得することも模索している。全国で販社網を構築することによって、2013年度(2014年3月期)に2000校への導入を目指している。
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