主要SIer、ITベンダーがこぞって「社会インフラ」ビジネスを強化している。ビッグデータやソーシャル、M2M(マシン・トゥ・マシン)などIT基盤技術を積極活用。国が推進する番号制度や医療福祉などと密接に絡むだけでなく、新興国向けの輸出ビジネスにもプラスに働く。(取材・文/安藤章司)
「社会インフラ回帰」で復活へ

NTTデータ
岩本敏男社長 M&A(企業の合併と買収)をテコに破竹の勢いで海外展開を進めるNTTデータの岩本敏男社長は、昨年末、今後NTTデータが一段と力を入れて参入を推進していくブラジルやアルゼンチンなど南米主要国を歴訪した。印象の残ったことの一つに「日系ITベンダーのなかではNECが素晴らしい仕事をしていた」ことを挙げる。ライバルを評価するなど滅多なことではしないはずだが、岩本社長はNECの南米での仕事を素直に評価する。
かつて連結売上高4兆円を軽く超えていたNECだが、ここ数年の業績不振であわや年商3兆円を切るかと周囲をハラハラさせる急降下ぶり。さぞかし社内は意気消沈しているかと思いきや、今のNECは社会インフラの需要によって着実に息を吹き返しつつある。半ば桎梏(しっこく)となっていたコンシューマ系の事業に区切りをつけ、「社会ソリューション事業」に経営資源を集中させたことで、NECソフトの古道義成社長がいうところの「NEC本来の強み」を生かせるようになったことが背景にある。

NECソフト
古道義成社長 ライバルのNTTデータが評価するのは、NECが南米で相次いで受注した大型案件である。13年10月には、ブラジル・サンパウロ近郊のバイシャーダスタジアムのICT構築を受注したと発表。14年6月に開催予定のサッカーW杯の開催に向けて、スタジアム関連だけで4件目の大型受注となる。
NECで海外事業を担当する森田隆之常務は、「南米ではITを活用した社会インフラ整備絡みの商談が活発に進んでいる」と、手応えを感じている。
NECが世界の市場から評価されているのは、顔・指紋などの認証技術や国民ID、国境・入国管理、施設統合監視などのパブリックセーフティ分野だ。ビッグデータ分析やスマートエネルギー、防災防衛など「社会ソリューションに深く関わる領域」(NECソフトの古道社長)も注目を集めている。
これらはNECがかつて力を入れていたパソコンやスマートフォン、日本型の受託ソフト開発ではないことに注目すべきだ。
基幹系偏重の日系ベンダー

東芝ソリューション
河井信三社長 日本の大手SIer、ITベンダーは、よくも悪くも基幹業務システムや社会インフラ系を偏重する傾向がある。パソコンやスマートデバイスは、中国や韓国が安くて品質のよいものを大量に製造できるし、最先端ITはもはや米国の「専売特許」といってもいいほど彼我の差は開いている。
しかし、基幹系や社会インフラ系なら、国内でも底堅い需要が見込めるうえに、アジア・南米の成長市場の最も強いニーズは、まさに社会インフラの領域にある。NECや日立グループ、東芝ソリューション、NTTデータなど国内主要SIerやITベンダーがこぞって社会インフラを注力分野に掲げるのは、国内や海外成長市場でのビジネスを狙ってのことだ。社会インフラやそれを支える基幹系システムなら、NECの例のように、大手ベンダーの収益を支えるだけの大規模な受注が見込めるという事情もある。
東芝グループの全社横断社内カンパニーのクラウド&ソリューション社に昨年10月1日から属している東芝ソリューションの河井信三社長は、「東芝グループのIT戦略を当社が支える」と、東芝ソリューションそのもののグループ内での位置づけが大きく変わったという。電力・エネルギーやスマートコミュニティ、医療など社会インフラそのものといえる東芝の主力商材のIT部分を担っていくことで、国内外でビジネスを伸ばしていく体制に切り替えた。「自社だけがよければいいという体制ではなくなった」(河井社長)として、グループ全体のビジネスを伸ばすためのIT戦略を重視する。
日本のSIerは、一括請負型でゼロからシステムをつくるスクラッチ開発を強みとしているが、これは海外では通用しにくい。NECや東芝、日立の売れ筋商材をみても、通信機器や発電装置、ストレージなど社会インフラを支えるなんらかのキーデバイスやプラント的な商材が介在しているケースが多い。東芝ソリューションはこうしたキーデバイスに絡むかたちで、自らのITソリューションを国内外へ展開しようとしている。では、メーカーではないSIerは、社会インフラビジネスにどう接近すべきなのか。次項以降で詳報する。
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