セキュリティベンダー
マカフィー
「IoTは“ホワイトリスト”で守る」

佐々木弘志
シニア・セキュリティ・アドバイザー 「IoTの本質は、OT(Operational Technology)とITの融合にある。OTとITでIoTとなる」と、マカフィーサイバー戦略室兼ガバメント・リレイションズの佐々木弘志シニア・セキュリティ・アドバイザーは語る。OTとは、主にモノを制御する技術を指す。OTで制御されたモノが情報ネットワークにつながることで、IoTの世界が開けるというわけだ。そして、モノが情報ネットワークにつながれば、セキュリティ対策が必要不可欠となる。
「最近は、IPアドレスが振られた機器が製造現場に増えて、情報ネットワークにつなぎやすくなっている。それはつまり、ウイルスなどの攻撃を受けやすくなることを意味する」(佐々木シニア・セキュリティ・アドバイザー)。
現在、1日で約20万ものマルウェアが発生するといわれている。製造現場の担当者が、製造機器のセキュリティ対策に割くことができる時間は限られる。常に新たな脅威に対応していくのは、簡単ではない。そこでマカフィーが提供しているのが、「ホワイトリスト型」のウイルス検知ソフトだ。ホワイトリスト型では、許可されたプログラムに限って稼働を許す。「製造現場でのPCや機器の用途は限定されているため、必要なアプリケーション以外は動かさないという設定が成り立つ」と佐々木シニア・セキュリティ・アドバイザーは語る。決まったプログラムしか動かせないので、未知のマルウェアが侵入したとしても悪さができない。
「現時点でもいろいろなモノがネットワークにつながっている。コンビニならキオスク端末やプリンタ、ATM。それらの用途は限られるので、ホワイトリスト型が使われている」(佐々木シニア・セキュリティ・アドバイザー)。また、同社はインテルとともにチップレベルでのセキュリティ対策を推進している。IoT時代を見据え、デバイスそのものにセキュリティ対策を埋め込んでいく考えだ。
ソフトウェアベンダー
SAS Institute Japan
「IoTで得たデータから将来を予測する」

小林泉
マネージャー 「モノから得たデータには、大きく二つの使い方がある。一つは、すでに起こったことへの対処だ。アラートやレポートなどによる“見える化”は、対処タイプの活用になる。もう一つは、将来の予測。予測をもとにした最適化を推進する」とSAS Institute Japanビジネス推進本部アナリティクスプラットフォーム推進の小林泉マネージャーは語る。
製造業では、製造機器から得たデータを分析し、歩留まり向上に役立てることが考えられる。例えば、製造機器内の温度が一定限度を超えると、不良品発生率が高まる。製造機器内の温度を調べていれば、問題を事前に回避できるが、別の製造機械や製造工程に根本的な原因があるかもしれない。そこで、IoTによって複数の製造工程のデータを同時に分析し、初期工程の段階から対処するというわけだ。
製造機器などから得られるセンサのデータは、非常に膨大となる。そのため、SASではデータを蓄積するのではなく、ストリーミングデータとして処理するソリューションも提供している。「センサからは、小さなデータがどんどん入ってくる。ゼロコンマ何秒の世界。そうしたデータはリアルタイムで処理すべきだ」と小林マネージャーは指摘する。リアルタイム分析は、異常発生を知らせる閾値の見直しにもつなげられる。
「閾値は、今まで技術者の経験に頼ってきた。しかし、リアルタイムで分析すると、『10』でやっていたものが『10.7』でできることがわかるかもしれない。高度な統計手法を用いれば、閾値を見直すことができる」(小林マネージャー)。技術者が築いた匠の世界においても、IoTによる改善が期待される。
記者の眼
「経営とITの融合」は、IT活用の重要性を説明するにあたって、長らく使われてきたキーワードだ。ITは単なる効率化を進めるツールではなく、経営の視点から取り組むべき重要課題というわけだが、多くの経営層にはぴんとこなかった。それを「ITリテラシーが低い」として片づけるのは簡単だが、本当にそうだろうか。
ITベンダーは、自社の製品を売りたいばかりに「経営とITの融合」を乱発してこなかったか。経営に役立つITだとしても、経営層の判断が本当に必要だったのか。
製造業にとって、IoTは経営層がITを意識する絶好の機会。製造工程の可視化だけでなく、製品そのものに付加価値を与えるからだ。現時点のITベンダー各社の取り組みは製造工程でのIoTのソリューションが主流になっているのは、製品に関するIoTはメーカーが主導して初めて成り立つからだ。経営層のITリテラシーが低ければ、IoT時代を生き抜くことはできない。そこをサポートすることが、ITベンダーの役割となる。
ただし、ITベンダー側から「経営とITの融合」を喧伝すれば、ユーザー企業の経営層が拒絶するという過去の轍を踏むことになりかねない。IoT時代は間違いなく到来している。顔文字のようでかわいい「IoT」の字面のように、ITベンダーにはモノづくりニッポンを楽しくする方向で支えていただきたい。