米国の大リーグで活躍するヤンキースのイチロー選手が、日米通算4000本安打を達成した。彼は記者に問われてこう答えている。「自分が成長したかどうかは、恐らく一生、自分自身ではわからない」。ヒットを重ねるための知力と独自の理論をもち、努力を怠らず、光る打撃センスがあったからこそ成せる偉業だ。

 だが、欧米人に比べて体格で劣る日本人が、今度は医学の力でイチロー選手並みに世界に名を轟かせるプレーヤーを輩出できるかもしれない。「100メートル9秒台はあたりまえになる」という記事を週刊朝日が掲載した。運動の仕組みを力学的に分析する「バイオメカニクス」の研究は、日本がトップ水準にある。研究が進めば、確実に日本のスポーツは、世界をリードするというのだ。

 次のコンピューティングは何か。この議論の先に「Internet of Things(IOT、モノのインターネット)」というキーワードが浮かび上がる。ネットが普及した第一段階は「情報のインターネット」の時代。今は、そこに人が加わり「情報と人のインターネット」に差しかかっている。ネットの常時接続があたりまえになり、スマートデバイスが急速に普及した。

 その次がIOTという。簡単に説明すると、世の中にあるモノがセンサでつながり、そのデータなどを利用した世界が生まれる。例えば、チップを埋め込まれた「スマートピル」という薬が実用段階にある。ジェル状の錠剤を飲むと、胃酸で電気が発生して小さなプログラムが走る。この発信データを拾えば、服用データで誤飲や定期的に服用する指導ができるわけだ。

 センサを発するモノは、パソコンや家電製品、自動車などを加えて、7年後の2020年に世界の人口を超えるそうだ。数年前、「ユビキタス」が普及期を迎えるとの観測があった。だが、無線タグは高価で、バーコードは普及したものの拡張性に乏しく、社会の仕組みを大きく変えるまでには至らなかった。人を介さずにデバイス(機械)同士を相互につなぐ「Machine to Machine(M2M)」と通信技術の進歩は必須だが、IOTの時代は多くの革新が生まれるとの期待が大きく、無線タグなどに比べて応用分野も幅広いからだ。

 多くのITベンダーは、顧客企業の業務改善に向けてシステムを提案する。ITの進化は速い。新しい分野にいち早く取り組み、社会を変える気概がほしい。とはいえ、ITが社会をコントロールし、人の意志の介在が減るのは気味が悪い。イチロー選手の偉業のように人間味が残り、ITがうまく共存する社会が望ましい。