視点

「ITの融合」目指して人材を育てよ

2012/02/09 16:41

週刊BCN 2012年02月06日vol.1418掲載

 「融合」という言葉を広辞苑で調べると、「とけて一つになること」とある。今、経済産業省ではこの言葉を盛んに使っている。世界の潮流となりつつある概念「Internet of Things(IOT、モノのインターネット)」を汲んだ言葉として、「IT融合」と称して国内産業構造の変革を訴えているのだ。経産省情報処理振興課の高橋淳課長は、言葉の意味をこう説明する。「ITというツールを使い倒せば、何ができるかが理解できる」と。

 グローバル市場で勝ち抜く産業を生み出すために、ITを中核に据えた戦略的な取り組みが必須であり、日本はここにこそ優位に立つチャンスがある。成長が鈍化しているIT産業の行く末を考えれば、IOTに着眼したソフトウェア技術・人材を生かして、「世界をあっと言わせる発想力」を鍛えることが不可欠となっている。

 IOTとは、世界のあらゆる情報がデジタル化され、インターネット/センサーネットワークを通じて、それらの情報が広く流通する世界を指す。すでに実行に移されつつあるスマートグリッド・コミュニティや、ネットワーク化の進展が期待される自動車、ロボット、医療・健康機器、農業をはじめとする第一次産業などで新規ビジネスの創出が見込まれる。例えば、自動車が発する情報をセンサーを介して情報収集し、公共施設や観光情報などを適宜発信するといった異業種サービスを展開することが検討されている。

 情報家電や自動車の分野では、すでにIOTの競争が始まっている。日本メーカーを追う韓国は、2015年までに「世界五大IT融合大国」に躍進することを目標に、政府が「IT融合拡散戦略」を推進している。世界のITベンダーをみれば、IBMやGoogleなど巨大企業がIOTを成長分野とみて主導権争いを演じている。IBMは、エネルギー、水道、交通などの情報を自動的に収集・分析・活用する「スマーターシティ」を欧米や新興国に展開中だ。

 日本は、この潮流に乗ることができているか。情報処理推進機構(IPA)の報告書によれば、国別のIT技術者の供給数は主要国で最低。IOT社会の全体像を描けるIT人材が不足しているのだ。だが、見渡してみると、国内には約1万3000社のソフト開発会社があり、数十万人のIT技術者がいる。目の前の顧客に向けて生産性を高めるソフトを開発・提供することも重要だ。しかし、将来を見据えたとき、官民挙げて次の展開を考える時期に来ている。
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