Special Feature
中国ローカル市場 いまだ視界不良 日系ITベンダーの市場開拓の糸口はどこにあるのか
2014/09/25 21:33
週刊BCN 2014年09月22日vol.1547掲載
4.どうやってクロージングするか スタートしないプロジェクト
A社は、無事に自社ソリューションの案件を受注できた。しかし、これで安心できないのが、中国ローカルビジネス。思わぬ落とし穴が待っていることもある。
セゾン情報システムズの上海法人では、ファイル転送ツールの英語版「HULFT7e」と中国語版の「海度」を中心に、昨年度(13年12月期)はパッケージソフト販売事業で約1000万円を売り上げた。しかし、高屋敷国弘総経理は、「実は、昨年度のパッケージソフト販売事業の受注額は、7000万円ほどあった」という。受注額と売上高に大きな隔たりがあるのは、受注したプロジェクトがなかなか進まないからだ。
とくに厄介なのが、案件の受注後に、先方の担当者が変わってしまうケース。日本では、ビジネスは会社と会社の契約という意識が根づいているが、中国ではビジネスでも個人間でのやり取りが尊重される。担当者が変わると「自分が発注した案件ではない」と言われてしまうこともある。
●たび重なる仕様変更に嫌気
無事にプロジェクトを開始できても、次なる悩みが降りかかってくる。それは、仕様のたび重なる変更だ。中国では、プロジェクトの途中で仕様が頻繁に変わって、開発工数が想定以上に増えてしまう。
これらの問題をなんとか乗り越えたA社だが、その後のやり取りで悩まされた。それは、売掛金の回収という問題だ。契約書には「9月末までの振込」と書いてあるのに、10月になってもいっこうに振り込まれない。
ローカル企業の経理担当者は、支払いを遅らせることが評価の対象になるといわれている。一般的に、一件の売掛金の回収には3年はかかるという。しかし、売掛金が回収できないと、事業の継続が困難となってしまう。
ウイングアーク1stの上海法人では、BIツール「Dr.Sum EA」を中国ローカル企業向けに提供していて、これまで約100社の導入実績がある。しかし、売掛金の回収には苦しんでいた。そこで、同社の島純総経理がとった戦略が、ライセンス形態の変更だ。Dr.Sum EAは一括導入のオンプレミス型で提供していたが、ライセンスを2分割にした。最初は180日で区切り、その後、支払いがあれば永久ライセンスに切り替える。
同様に、支払いの遅延に対して有効に使えそうなのが、月額制で提供するクラウドサービスだ。ローカル企業が支払いに応じなければ、サービスを停止すればいい。
5.どうやってサポート契約を取るか 保守サポートが取れない
売掛金の問題を解消したA社では、ローカル企業の顧客数が、どんどん増えていった。ところが、毎年の売上高は大きく増えていない。
理由は、システムの保守サポート契約が取れていないからだ。中国ローカル企業には、「壊れる以前に投資するよりも、壊れたときに考える」という意識があるため、保守サポート契約を好まないのである。
サイオステクノロジーの北京法人は、ローカル企業を中国ビジネスの主要顧客としていて、企業の事業継続を支援する高可用性クラスタソフト「LifeKeeper」とデータ複製ソフト「DataKeeper」を販売している。大塚厚志総経理は、「ここ数年は、年間で数百ライセンスを販売している」というが、保守やライセンス更新の契約をしてくれるケースは少ない。そこで、同社は、販売ライセンスを増やすために、聯想集団(レノボ)と協業した。だが、保守サービスの契約増という根本的な問題の解決には至っていない。
アスプローバの上海法人も、パートナーとの連携を強化することで、今年度(2014年12月期)上期は、ローカル企業向けビジネスが日系企業向けの2倍に拡大。しかし、保守契約に関して徐総経理は、「販売数のうち半数程度が取れていない」と語る。そこで、同社では、ユーザー導入事例の公開を条件にして初年度の保守を無償で提供し、次年度からの契約につなげようとしている。
記者の眼
中国ローカル市場は無限に拡大 日系ITベンダーが開拓を焦る必要はない
中国ローカル市場の開拓に立ちはだかる壁についてみてきた。これらの課題を一つひとつ克服していくには、時間と企業体力が求められる。日系ITベンダーは、一件ずつ慎重に経験・ノウハウを積み上げていく必要がある。
結論をいえば、ローカル企業向けビジネスについては、現段階では必勝法は存在しない。リスクを背負う覚悟が必要だ。日本本社は、そのことを十分に理解したうえで、中国法人を支援していかねばならない。
その意味において、現状の日系ITベンダーのビジネスで、顧客のほとんどを日系企業が占めていることは、悪いことではない。むしろ、ローカル企業の開拓には体力が必要であるからこそ、日系企業向けビジネスで事業基盤を築きあげておく必要があるといえる。多少のリスクを背負っても、事業を継続できるだけの余裕をもっておくことが望ましい。
ローカル市場は巨大で、魅力的にみえるが、その開拓を焦る必要はない。今後も市場は無限に拡大してき、日系ITベンダーのチャンスは消え去るわけではない。今は、足場を固めながら、少しずつ進んでいけばいい。
中国には、数百社の日系ITベンダーが進出している。最近では、従来の日本向けオフショア開発だけでなく、中国国内に向けたITビジネスに力を注ぐようになってきている。しかし、日系ITベンダーの現地ビジネスは、顧客の大半が日系企業であって、中国ローカル企業の開拓に成功している例は見当たらない。上海を中心とする現地での取材を通して、ローカル市場の開拓に立ちはだかる壁は何か、どうすれば道が開けるのかを探った。(取材・文/上海支局 真鍋武)
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