決断を早めるきっかけに
大塚商会マーケティング本部
共通基盤新規
ビジネスプロモーション部
統合企画課
須田洋一 課長
大塚商会は、単独でIT導入支援事業者に登録した。補助金事業に携わるのは初めての経験といい、「手さぐりの状態」(マーケティング本部共通基盤新規ビジネスプロモーション部統合企画課の須田洋一課長)で手続きを進めた。
短期間で全国の営業担当者に周知するなど、準備には「かなりの労力を要した」(須田課長)が、マーケティング本部共通基盤ハード・ソフトプロモーション部の山田早千雄部長代理は、「ITを使って中小企業や小規模事業者の業務効率化を進める内容は、新たな試みとして面白い」と述
べた。
補助金制度では、ハードウェアは補助の対象になっていない。売る側は、対象となっているソフトウェアやサービスだけでなく、ハードも含めた形にしたほうが売りやすい。
しかし、須田課長は、「補助対象をソフトだけに限定することで、生産性向上という目的が明確になっている。制度の第一歩としては一定の理解はできる」とコメントした。
大塚商会マーケティング本部
共通基盤ハード・
ソフトプロモーション部
山田早千雄
部長代
補助金によって、どれだけの効果が生まれるかは未知数だが、山田部長代理は「補助金が出るということで、止まっていた商談が動くこともあると思う。お客さんの決断を早める一つのきっかけになることは確かだ」と期待した。
顧客との距離が近づく
内田洋行は、計18社で共同事業体(コンソーシアム)を組んでIT導入支援事業者に登録した。全社で足並みをそろえるため、業務アプリ作成用のPaaSを使い、新たなシステムを急きょ構築した。
内田洋行が構築したシステムの画面
内田洋行営業本部
営業統括グループ
第2企画部企画課
森岡 哲 課長
更新が繰り返される事務局側のシステムとの整合性をとるなど、厳しいスケジュールのなかで骨の折れる作業が連続した。営業本部営業統括グループ第2企画部企画課の森岡哲課長は、「本当に大変だった」と振り返った。
それでも、森岡課長は、「補助があるとはいえ、お客様には3分の1の負担はある。短期間に導入する必要もあり、売り手と買い手の双方で、何を使えば生産性の向上につながるかを考えるいいきっかけになった」と実感した。
さらに、「民間企業として、これまでは国の制度に対する免疫はあまりなかったが、今回の経験を通じて、今後はわれわれの事業に関連する国の補助制度をウォッチできるように変われたことは大きな効果だ」と語った。
内田洋行営業本部
営業統括グループ
第2企画部
中島 浩 部長
営業本部営業統括グループ第2企画部の中島浩部長は、「しっかりとお客様に情報提供するため、お客様のところに通う頻度は高まった」と述べ、補助金制度を通じて顧客との距離がより一層、近くなったと説明した。
パートナーとの関係が強化
リコージャパンも、計17社のコンソーシアムで対応。説明会を開くなどしてパートナーと一体となった取り組みを展開している。
リコージャパンが開催したパートナーを対象とした説明会
リコージャパンソリューション
サポート本部
業種スクラムパッケージ準備室
平間和人 室長
ソリューションサポート本部業種スクラムパッケージ準備室の平間和人室長は、「お客さんと一緒に、生産性をどう高められるかを考えることで、企業の体質強化や営業マンのトレーニング、品揃えの強化につながる。われわれにとってもメリットは多い」と補助金制度がもたらす効果を分析した。
さらに「お客さんが困っていることに対して、しっかり情報を提供できる会社であることが前提でビジネスができる。中小企業の生産性を上げるお手伝いができることを通じて、この点をもう一度、社内もパートナーも再確認している」と話した。
ターゲット絞った施策を
カシオ計算機営業本部
システム営業統轄部
システム戦略部
戦略企画室
佐野 敬 室長
カシオ計算機は、国内シェア14年連続1位の電子レジスター事業で培ったノウハウを生かし、飲食店にターゲットを絞った施策を計画している。
営業本部システム営業統轄部システム戦略部戦略企画室の佐野敬室長は、「補助金で長い付き合いができることは、飲食店にとっても、われわれにとってもプラスになる」と語った。
同社は、パートナーとコンソーシアムを組んで、コンサルティングサービスを含めた飲食店の経営支援を進める予定だ。
カシオ計算機営業本部
システム営業統轄部
システム戦略部
戦略企画室
三上哲章氏
営業本部システム営業統轄部システム戦略部戦略企画室の三上哲章氏は「ITの活用は、導入後の運用が重要。伴走者としてしっかり寄り添っていきたい」と強調した。
協会はどうみる?
補助金制度について、ITベンダーなどが加盟する協会はどうみているのか。パッケージソフトウェア会社など約540社が加盟する一般社団法人コンピュータソフトウェア協会(CSAJ)と、北海道のベンダー約80社で構成する北海道情報システム産業協会(HISA)に取材した。
●予算枠の拡大を
一般社団法人
コンピュータソフトウェア協会
荻原紀男
会長
CSAJの荻原紀男会長は、補助金制度の創設を評価しつつ、「総額100億円の補助金では、金額として全然足りない」と指摘し、国に対して予算枠の拡大を要望した。
荻原会長は、「利便性の高いサービスを作り上げて生産性を上げないと、日本の成長は限界を迎えてしまう」と危機感を示し、「今回は100億円の予算枠だったが、最低でも200~300億円を確保してもらいたい」と述べた。
補助金制度については、「会員はエンドユーザーに届きやすい製品をたくさんもっているので、補助金は非常に有益。反応は非常にいい」とし、新年度以降の継続も求めた。
また、「ITツールを登録する際、コンソーシアムのことを知らずに、必ずIT導入支援事業者にならないといけないと勘違いしたベンダーが多かった」と紹介。「結果的にIT導入支援事業者が乱立し、エンドユーザーがどのツールを選んだらいいか分かりにくい状況になってしまった」とし、分かりやすい説明や仕組みの見直しも必要との見解を示した。
●実態に即した制度に
北海道情報システム産業協会
中村真規
会長
地方のベンダーが加盟する全国地域情報産業団体連合会(ANIA)の前会長で、HISAの中村真規会長は、人手不足や高齢化が進む地方の実態に即した制度にするべきと主張した。
中村会長は、「大手だけでなく、地方のベンダーがつくるソフトウェアの価値が国に認めらえたのはうれしい」と国の姿勢を歓迎。そのうえで、「地方が置かれている状況は、都市部に比べて厳しいのが現実。ITで地方の生産性を上げていくことは非常に重要だ」と持論を展開した。
ただ、中小企業や小規模事業者がITツールを導入する場合、補助金の交付前に現金一括で支払う必要があることについて「補助金が出るといっても、事前に現金を用意するのは大きなハードルがある」と指摘。リースや分割払いを認めるなど、柔軟な対応を要求した。
さらに、多くの中小企業が抱える人手不足や高齢化といった課題が、地方ではより顕著になっているとし、事務手続きの簡略化などの負担軽減策も必要とした。