TIS
中計目標を1年前倒しで達成見込み
TISの上半期(4-9月期)は売上高、利益はともに上期として過去最高を更新。今年度(20年3月期)通期の売上高見通しは前年度比3.6%増の4360億円に上方修正し、21年3月期までの中期経営計画の目標で掲げた4300億円を1年前倒しで達成できる見込み。営業利益率は今年度通期で9.6%の見通しで、中計目標の10%まであと一歩のところまできている。
TISのユーザー企業のうち一部業種を除いて、IT投資が増加傾向にあること。なかでもTISが強みとする決済関連の案件が売上増に大きく寄与した。決済関連ビジネスの内訳を見ると、金融業以外の業種にも決済サービスを手掛ける動きが広がり、決済サービスを立ち上げるための個別SI案件が好調に推移。上期30億円規模の増収効果があったという。
TISは、デジタル決済総合プラットフォーム「PAYCIERGE(ペイシェルジュ)」を独自に開発しており、デジタル口座やモバイル財布、店舗向けQR決済といったキャッシュレス関連サービスを拡充してきた。これは同社が中期経営計画で掲げる「サービス型ビジネスを成長エンジンと位置付ける」取り組みの一環。しかし、この上期だけ見ると「決済関連ビジネスでも、まだ個別SIの比率が多い」(桑野徹会長兼社長)と課題意識を持つ。中計最終年度の来年度に向けてサービス型のビジネスの一段の拡大を目指していく。
JBCCホールディングス
超高速開発でSIの収益力を高める
JBCCホールディングス(JBグループ)は、主力の「SI事業」と「サービス事業」のセグメントの粗利率が大きく改善したことで、この上半期の営業利益は前年同期比50.3%の大幅増となった。利益重視に舵を切り、SIの手法もこれまでの手組み中心から超高速開発、アジャイル開発の手法へと転換してきた効果が数字にも表れてきた格好だ。一方、「システム事業」セグメントの上期粗利は、Windows 7の保守終了に伴う利幅の薄いパソコン販売の増加で同1.6%減少している。
東上征司社長
超高速開発、アジャイル開発の直近の応用例として、ネスレ日本の受発注データ転送システムの刷新案件が挙げられる。JBグループは南米ウルグアイの超高速開発ツール「GeneXus(ジェネクサス)」を使い、従来比で3分の2の時間でシステム開発を完了したのに加え、「ソースコード自動生成によって保守効率も従来比で5倍に高めた」(東上征司社長)と胸を張る。
主力のSI事業の改革の成果が出はじめていることから、通期(20年3月期)営業利益も期初予想の24億円から29億円(前期比10.2%増)に上方修正している。達成できれば21年3月期をゴールとする中期経営計画で示した営業利益目標27億円を1年前倒しで達成できる見通しだ。
伊藤忠テクノソリューションズ
海外売り上げ600億円達成に手応え
伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)は、5G(第5世代移動通信システム)や継続収益(リカーリング)型ビジネス、海外事業などの重点領域が伸びたことで上半期は増収増益の決算となった。5G関連の事業規模は上期100億円規模となり、下期もこの勢いが継続する見通し。クラウドサービスをはじめとする継続収益型は上期330億円となり前年同期比で16.6%の伸長。海外事業は252億円で41.6%伸びている。
5Gについて菊地哲社長は、「ソフトウェアで制御するため開発や構築に工数がかかるのが特徴だ」と指摘。4Gまではハードウェアを仕入れて納入する箱売りの要素が多かったのに対し、5G特有のシステム構築の技量が求められる。CTCはユーザーである通信キャリア先で5Gの構築経験を積んでおり、こうした実績が評価されるかたちで受注につなげている。
海外事業ついては、今年9月にインドネシアで2社のSIerのM&Aを実施している。両社の年商は合算で約76億円、従業員数は同約320人。タイやマレーシアなどの既存子会社と合わせてASEAN地域でのビジネス拡大を加速。海外関連の売上高は21年3月期を最終年度とする中期経営計画で600億円を目指しているが、「かなりいい線までいくのではないか」(菊地社長)と手応えを感じている。
SCSK
年商約170億円の中堅SIerを傘下に
SCSKの上半期は、良好な受注環境が追い風となって売上高、営業利益ともに過去最高を更新した。製造や流通、金融、通信、運輸、エネルギーなどSCSKの主要顧客の業種全てで売り上げが伸びたことが業績を押し上げた。AUTOSAR準拠の車載OS「QINeS BSW(クインズビーエスダブリュー)」で先行投資がかさむ車載システム事業でも、他の車載ソフト開発全体の受注が好調に推移したため売り上げ、利益ともに伸びている。
「QINeS BSW」を巡っては、自動車メーカーのマツダが適合性の検証をスタート。すでに複数社と契約を結んでおり、ほかにも複数社との商談が進行中だという。また、この10月30日には年商約170億円のMinoriソリューションズの完全子会社を視野に入れた株式公開買付けを発表。MinoriソリューションズとはSCSKの協力会社として10年来の協業関係にあることに加え、「CAE(コンピューター支援エンジニアリング)などSCSKにはない強みを持つ」(谷原徹社長)とし、開発人員の確保だけでなく、双方の強みを生かしたクロスセルの効果も見込めるとしている。
上半期の二桁増が目立つ
「下期偏重」を押しのける勢い
上期決算を俯瞰すると売上高、利益ともに二桁成長が目立つ。下期偏重の傾向が見られる情報サービス産業ではあるが、それを上回る旺盛な需要がうかがえる。売上高、利益ともに上期二桁増を達成したSCSKは、年商約170億円のMinoriソリューションズをグループに迎え入れる見込み。SCSKの今年度(20年3月期)売上高見通し3800億円との単純合算ベースで3970億円となる。年商4000億円プレーヤーに大きく迫る勢いだ。
日鉄ソリューションズ(NSSOL)も上期売上高が前年同期比20.2%増、営業利益が34.1%増と二桁増を記録。今年度の売上高見通しを2935億円に上方修正。3000億円に手が届くところまできている。森田宏之社長は、「SEの稼働率が高水準で推移しており、利益率の高い案件を優先している」と、NSSOLの価値を最大化できる案件を通じて、上期の営業利益率を10%台に乗せるとともに、通期でも同様の水準を目指していく。
一方、NTTデータと野村総合研究所(NRI)は、海外進出先でのコスト増の要因を抱えている。NTTデータは多くのSIerをM&AしてきたEMEA(欧州・中東・アフリカ地域)地域での構造改革に100億円規模を投入。「収益力の強化に努めている」(本間社長)。NRIは上期の海外売上高の7割近くを占めるオーストラリアでのM&Aに伴うのれん代の影響で、「営業利益率8%ほどあるオーストラリアの主要子会社は、のれん代を差し引くとほぼトントン」(此本会長兼社長)だと話す。
情報サービス業は、その国々の内需に依存する側面が強い。今、受注環境が良好な国内も長期的に見れば少子高齢化の影響は避けられない。此本会長兼社長は、「オーストラリアは人口が増えており、IT投資意欲も高い。中長期的に見て魅力ある市場」と位置付け、引き続き成長市場への取り組みに力を入れる。