国内大手電機メーカーがIT事業の軸足をSIサービスへと移して久しいが、メーカーとそのパートナー各社との間では、依然としてサーバーやストレージなど製品の商流を通じたつながりが中心となっている。ハードウェアを中心としたプロダクト事業の存在感が薄まりつつある中、長年にわたって築いてきた販売店との関係を、どのように今後のビジネスに生かしていくのか。8月・9月に相次いで新製品と施策を投入したNECの取り組みを通じて、これからのパートナービジネスのあり方を探る。(取材・文/日高 彰)
2017年度を底にプラットフォーム事業好転
メインフレームやオフコンに始まる国内電機メーカー各社のハードウェア事業だが、2003年ごろからはx86サーバーへの置き換えが進み、10年ほど前からはパブリッククラウドによる市場の侵食も始まった。
サーバー、ストレージ、ネットワーク機器といったカテゴリではいずれもコモディティ化が進んでおり、特定メーカーの製品でないと要件に合致しないというケースは少なくなっている。平たく言えば、長年同じメーカーの製品を導入してきた企業が、明日にでも他社製品に乗り替えることができる時代が既に訪れているということになる。グローバルベンダーに比べて規模で劣る国内メーカーが、自社でサーバーやストレージを設計・製造する事業をいつまで維持できるのか、懐疑的な見方は少なくない。
しかし足下では、市場の旺盛なIT需要に支えられ、国内メーカーのプロダクトビジネスは一定の利益を確保しながら手堅く推移している。NECのセグメントでいう「システムプラットフォーム」事業(サーバー、ストレージ、業務端末および、運用管理ツールやミドルウェアなどのソフトウェア製品)も、14年度から17年度までは売り上げが前年比マイナスで続いていたが、18年度は久々に好転。19年度は上期にWindows 7のサポート終了に伴うPCの買い換え需要が集中し、下期はその反動減で再び減収に転じる予想となっているが、PC販売を除くITインフラ製品事業は堅調に推移しているほか、18年度に収益を圧迫していた構造改革費用がなくなることから、利益面では大幅な改善が見込まれている。
本永 実事業部長
プラットフォームソリューション事業部の本永実・事業部長は、「製品の高性能化による集約率の向上や、パブリッククラウドへの移行といった市場の傾向は、IT製品の販売台数にとっては押し下げ要因となる。しかしそれを上回る勢いで、企業によるITリソースの需要は高まっている」と述べ、市場の大きなトレンドとしてはオンプレミスのIT製品に対し向かい風が吹いているが、IT市場全体の成長がそれを上回っているのが現状だと説明する。19年度上期は、サーバー製品(ハイパーコンバージドインフラ含む)の販売が前年比2ケタ増で推移したという。消費増税前の駆け込みという可能性もあるが、受注残も多く抱えており、10月以降に急激な揺り戻しがあるとは考えていないという。
事業セグメントに含まれる製品が異なるため単純比較はできないが、富士通、日立製作所とも18年度のプラットフォーム事業は前年比微増か横ばいで推移しており、一旦下げ止まりの局面を迎えた形だ。
直販・間販のマーケティング部門を統合
とはいえ、本永事業部長は「中長期的に見て、プラットフォーム事業の厳しさが増しているのは間違いない。製品・ソリューションの市場価値を高めていく必要がある」とも話し、プラットフォーム事業の先行きに関して危機感は隠さない。特にプラットフォーム製品では「全国のお客様に製品をお届けし、その後のサポートを提供する“ラストワンマイル”は販売パートナーが担っている」(本永事業部長)ため、パートナーと共に提供価値を高めなければならない。
NECでは従来、「パートナーズプラットフォーム事業部」が販売店向けのマーケティング機能を担っていたが、昨年4月、直接販売・間接販売両方のビジネスに関与する「プラットフォームソリューション事業部」が発足し、同事業部がプラットフォーム製品の企画・販促を取りまとめる体制となった。かつては大企業向けと中堅・中小企業向けで取り扱う商材が大きく異なっていたが、最近では中堅・中小企業でもAI・IoTのソリューションが求められたり、大企業からも導入スピードの早いアプライアンス製品が求められたりと、商材の境目がなくなりつつある。そのため、大企業中心の直販ルートと、中堅・中小企業中心のパートナー経由でマーケティング部門を分けておくよりも、むしろ統合することで、価値の高い商材をより幅広く提案できるようになると判断した。
プラットフォームソリューション事業部では、プロダクト販売の形態を取りながらも、パートナーが従来の保守契約よりも高付加価値のサービスを提案できるよう、商材やツールを強化している。
例えば、サーバー等のログを収集し稼働状況のレポートを作成する機能を、クラウドサービスとして提供。レポートは「サーバー診断カルテ」という文書の形態で発行され、販売パートナーはこれを資料として活用し、顧客に対して機器の増設やソフトウェアの更新、予防的なメンテナンスなどを提案することができる。伝統的な営業スタイルならば、定期的に「御用聞き」で訪問していたのに対し、運用業務の一部をクラウドサービスが肩代わりすることで、訪問回数やタイミングの最適化を図り、パートナーの負荷を減らしながら商談の成約率をアップできるとしている。今後はセキュリティ製品などにも対象を広げるほか、サイバー攻撃の被害を補償する保険商品なども組み合わせて月額制で提供することで、ビジネスを物販型からサービス型へとスムーズに移行させることをねらう。
そして、NECがパートナー経由のプロダクトビジネスを新たなステージに移行するためにこの夏打ち出したのが、ハイパーコンバージドインフラ(HCI)製品におけるコンテナの強化と、新たなパートナープログラムだ。
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