Special Feature
6年ぶりのメジャーバージョンアップ Windows 11
2021/07/20 09:00
週刊BCN 2021年07月19日vol.1883掲載

マイクロソフトは6月末、Windowsの次期バージョンとなる「Windows 11」を発表した。「Windows 10が最後のバージョンのWindowsになる」という方針を撤回し、6年ぶりにメジャーバージョンアップを行う格好となる。企業にとっての注目すべき新機能は何か、そして気になるサポートライフサイクルはどうなるのか。現時点で判明している最新情報をお伝えする。
(取材・文/日高 彰)
2015年7月にWindows 10がリリースされてから6年が経過し、いよいよ次期バージョンとなるWindows 11が正式に発表された。リリース時期は今年後半とされており、年末商戦期にはWindows 11を搭載したPCが店頭に並ぶことになる。また、一定の条件(後述)を満たしているPCには、Windows 10から11へのアップデートが無償で提供される予定だ。
マイクロソフトでは、Windows 11は「Windows 10のコードベースを基盤として構築されているため、現在使用しているソフトウェアやソリューションとのネイティブな互換性が実丸現される」としている。言い換えれば、劇的なアーキテクチャーの変化があるわけではなく、必ずしもアップデートを急ぐ必要はない。
しかし、いずれやってくる乗り換えの時期に備え、情報の収集に動いておいて損はないだろう。まずはWindows 11の新機能について概観してみたい。なお、機能説明にはWindows Insider Previewで7月9日現在入手可能なプレビュー版(ビルド22000.65)を用いているため、製品版のリリースまでに仕様は大きく変わる可能性がある。
中央配置のスタートメニュー
Windows 11は10をベースに開発されたとはいえ、ユーザーインターフェース(UI)にはそれなりに大きな変更が加えられている。まず、タスクバーに表示されるアイコンは従来左寄せだったところ、中央に配置され、それにともなってスタートメニューの位置も中央に変更となった。従来スタートボタンは画面左下にあったが、横幅の広いディスプレイやマルチディスプレイ環境が普及しつつあることから、マウスポインターの移動距離を短縮するために中央へ移動したのだろう。なお、設定で従来と同じ左寄せに変更することもできるが、タスクバー自体を画面の上端や左右に配置することはできなくなった。
スタートメニューからはタイルが削除され、アプリやファイルのアイコンのみの表示となった。スマートフォンやタブレットのメニュー画面を意識したものと考えられる。ウィンドウやボタンの四隅は角が取られて丸くなり、アイコンもやや立体的なデザインになるなど、フラットなイメージを追求していたWindows 8や10とは異なる印象になっている。
ウィンドウを配置する機能には進化が見られる。ウィンドウ最大化ボタンにマウスポインターを乗せると、ウィンドウをタイル状に並べるためのメニューが表示され、複数のアプリケーションを重ならないように表示できる。Webブラウザーで調べ物をしながらWordで文章を作成する、Excelシートを表示しながら会計ソフトに数値を転記するといった作業に便利だ。
また、ノートPCと外付けディスプレイを組み合わせたマルチディスプレイ環境の使い勝手も向上している。従来はマルチディスプレイの状態から外付けディスプレイを切り離すと、外付けディスプレイ側に表示されていたウィンドウがノートPC本体側に移動し、再び外付けディスプレイを接続してもそのままの状態だった。しかしWindows 11では、マルチディスプレイ中にどのウィンドウが外付けディスプレイ側に表示されていたかを記憶しており、外付けディスプレイを再接続したときに元のウィンドウの位置が復元される。
プレビュー版にはまだ実装されていないが、Windows 11ではTeamsがプリインストールされ、標準のチャット/通話アプリとして使用される予定だ。既にMicrosoft 365でTeamsを使用している企業ユーザーにはあまり影響のない変更点だが、従来はSkypeが標準アプリとして使われていた部分がTeamsによって置き換えられる形になる。
Win32アプリもストアに対応
UI同様に大きな変化が加えられるのが、アプリストアの「Microsoft Store」だ。アップル/iOSの「App Store」や、グーグル/Androidの「Google Playストア」が多くのユーザーによって活発に利用されているのに対し、Microsoft Storeの利用は低調で、Windows 10に標準搭載されているにもかかわらず、ほとんど開いたことがないというユーザーも少なくないのではないか。今回マイクロソフトはここに改善を加えようとしている。一つは、従来はUWP(ユニバーサルWindowsプラットフォーム)と呼ばれる形式にパッケージ化されたアプリケーションの配布に特化していたMicrosoft Storeを、通常のデスクトップアプリケーションであるWin32形式にも対応させる点だ。多くの開発者が慣熟しているWin32アプリケーションの配布が可能になることで、製品の提供チャネルとしてMicrosoft Storeを選ぶベンダーの増加が期待できる。Windows 11の発表会では、アドビが主力製品の「Creative Cloud」をMicrosoft Store経由で配布することがアナウンスされている。
(出典:米マイクロソフト)
また、一般にアプリストアで製品を販売すると、アップル、グーグル、マイクロソフトといったプラットフォーム事業者に売り上げの一部を手数料として支払う必要があるが、今回マイクロソフトは、ソフトウェアベンダーが自前の決済システムを用意した場合、手数料を無料にするという施策を発表した。
プラットフォーム事業者とソフトウェアベンダーの“取り分”の比率をめぐってはしばしば論争を招いており、米国では大手ゲームメーカーとアップルの間で訴訟にも発展している。決済システムを自社で用意できるベンダーに限られるものの、今回マイクロソフトが打ち出した“取り分ゼロ”の方針は業界において異例の動きであり、ソフトウェアベンダーやコンテンツプロバイダーにとってMicrosoft Storeの魅力は大きく高まることになる。
Microsoft Storeのもう一つの強化策は、Androidアプリへの対応だ。消費者に人気のアプリには、iOSやAndroidといったモバイル端末向けにしかリリースされていないものも多い。そこで、アプリ開発者が新規にWindows版を開発しなくてもPCユーザーをターゲットにできるよう、Windows 11ではAndroidアプリの実行が可能になる。
ただし、グーグルのPlayストアが搭載されるのではなく、Microsoft Storeにアマゾンの「Amazonアプリストア」を統合する形での対応となる。このため、Playストアで公開されている多数のアプリが利用できるようになるわけではないことに注意が必要だ。ただ、Twitter、Facebook、Instagram、Zoom、Spotify Musicなど、著名アプリにはAmazonアプリストアで公開されているものも多い。Windows 11がリリースされれば、Amazonアプリストアの注目度も高まり、より多くのアプリが公開されるようになるだろう。発表会では、人気動画アプリのTikTokがWindows 11で動作する様子が披露された。
(出典:米マイクロソフト)
大型更新は年1回に
企業のIT管理者にとって気になるのは新機能よりもむしろ、アップデートのサイクルやサポート期間だろう。Windows 10では、約半年に一度のタイミングで提供される大型アップデートを適用することで、Windows 10 Proの場合はアップデートの公開から18カ月、Windows 10 Enterprise/Educationの場合は最長30カ月(リリース時期による)のサポートが提供される方針だった。しかし企業ユーザーからは「大型アップデートが頻繁すぎて、検証や適用が間に合わない」といった声も寄せられていたという。
Windows 11でもサポートライフサイクルに関して基本的な考え方は変わらないが、大型アップデートの提供は年1回(暦年の下半期)とする方針が示されている。これに合わせてサポート期間はWindows 11 Proの場合24カ月、Windows 11 Enterprise/Educationの場合は36カ月に延長される。また、セキュリティアップデートは変わらず毎月提供される予定だが、アップデートのサイズは最小で従来の40%まで軽量化されるという。
一方、現在のWindows 10が今後どのような方針でサポートされるのかについては、約4年後の25年10月14日にサポート終了となること以外に、今のところこれといった情報はない。かつてWindows 10は「最後のWindowsになる」とされており、大型アップデートを適用する限りは半永久的にサポートが継続されるのではないかという期待も一部にはあったが、次期バージョンとなるWindows 11が正式発表されたことで、前述のサポート終了日は確定的なものになった。
今後もWindows 10のライフサイクルが変わらないとすれば、少なくとも24年上半期までは半年に一度の大型アップデートが継続して提供されることになる。しかし、Windows 11がリリースされる以上、Windows 10に対して大きな新機能の追加が行われるとも考えにくく、“大型”に値するアップデート内容が半年ごとに用意されるかどうかは微妙だ。
現時点で確定しているのは、今年後半にWindows 10に対する大型アップデート(バージョン21H2)が提供されることだけだが、それに前後してWindows 10の今後に関して何らかの発表が行われる可能性もある。
なお、マイクロソフトはWindows 10と11は共存できるように設計されていることを強調しており、「Windows Update for Business」「Microsoft Intune」「Endpoint analytics」などの管理ツールは、Windows 10と11のマシンが混在する環境でも正しく動作するとしている。ただし、サードパーティのセキュリティソフト、MDM(モバイル端末管理)ツール、展開ツールなどはこの限りではないので、Windows 11の導入に当たってはツールベンダーの対応状況を確認する必要がある。
そのほか、Windows 11ではInternet Explorer(IE)が非搭載となるため、IE依存の業務システムなどへはEdgeブラウザーのIEモードを利用してアクセスする必要がある。IEモードは標準では有効になっていないので、グループポリシー等での有効化作業が必要となる。Windows 10でもIEは22年6月15日をもってサポート終了となることが発表されているため、いずれにしても何らかの対応を行う必要がある。

マイクロソフトは6月末、Windowsの次期バージョンとなる「Windows 11」を発表した。「Windows 10が最後のバージョンのWindowsになる」という方針を撤回し、6年ぶりにメジャーバージョンアップを行う格好となる。企業にとっての注目すべき新機能は何か、そして気になるサポートライフサイクルはどうなるのか。現時点で判明している最新情報をお伝えする。
(取材・文/日高 彰)
2015年7月にWindows 10がリリースされてから6年が経過し、いよいよ次期バージョンとなるWindows 11が正式に発表された。リリース時期は今年後半とされており、年末商戦期にはWindows 11を搭載したPCが店頭に並ぶことになる。また、一定の条件(後述)を満たしているPCには、Windows 10から11へのアップデートが無償で提供される予定だ。
マイクロソフトでは、Windows 11は「Windows 10のコードベースを基盤として構築されているため、現在使用しているソフトウェアやソリューションとのネイティブな互換性が実丸現される」としている。言い換えれば、劇的なアーキテクチャーの変化があるわけではなく、必ずしもアップデートを急ぐ必要はない。
しかし、いずれやってくる乗り換えの時期に備え、情報の収集に動いておいて損はないだろう。まずはWindows 11の新機能について概観してみたい。なお、機能説明にはWindows Insider Previewで7月9日現在入手可能なプレビュー版(ビルド22000.65)を用いているため、製品版のリリースまでに仕様は大きく変わる可能性がある。
中央配置のスタートメニュー
Windows 11は10をベースに開発されたとはいえ、ユーザーインターフェース(UI)にはそれなりに大きな変更が加えられている。まず、タスクバーに表示されるアイコンは従来左寄せだったところ、中央に配置され、それにともなってスタートメニューの位置も中央に変更となった。従来スタートボタンは画面左下にあったが、横幅の広いディスプレイやマルチディスプレイ環境が普及しつつあることから、マウスポインターの移動距離を短縮するために中央へ移動したのだろう。なお、設定で従来と同じ左寄せに変更することもできるが、タスクバー自体を画面の上端や左右に配置することはできなくなった。
スタートメニューからはタイルが削除され、アプリやファイルのアイコンのみの表示となった。スマートフォンやタブレットのメニュー画面を意識したものと考えられる。ウィンドウやボタンの四隅は角が取られて丸くなり、アイコンもやや立体的なデザインになるなど、フラットなイメージを追求していたWindows 8や10とは異なる印象になっている。
ウィンドウを配置する機能には進化が見られる。ウィンドウ最大化ボタンにマウスポインターを乗せると、ウィンドウをタイル状に並べるためのメニューが表示され、複数のアプリケーションを重ならないように表示できる。Webブラウザーで調べ物をしながらWordで文章を作成する、Excelシートを表示しながら会計ソフトに数値を転記するといった作業に便利だ。
また、ノートPCと外付けディスプレイを組み合わせたマルチディスプレイ環境の使い勝手も向上している。従来はマルチディスプレイの状態から外付けディスプレイを切り離すと、外付けディスプレイ側に表示されていたウィンドウがノートPC本体側に移動し、再び外付けディスプレイを接続してもそのままの状態だった。しかしWindows 11では、マルチディスプレイ中にどのウィンドウが外付けディスプレイ側に表示されていたかを記憶しており、外付けディスプレイを再接続したときに元のウィンドウの位置が復元される。
プレビュー版にはまだ実装されていないが、Windows 11ではTeamsがプリインストールされ、標準のチャット/通話アプリとして使用される予定だ。既にMicrosoft 365でTeamsを使用している企業ユーザーにはあまり影響のない変更点だが、従来はSkypeが標準アプリとして使われていた部分がTeamsによって置き換えられる形になる。
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