――2022年度(23年3月期)は4カ年中期経営計画の最終年度となる。目標達成に向けた手応えは。
営業利益については、今年度(22年3月期)1040億円を見込んでおり、中計目標に対して1年前倒しで達成できる見通しだ。重点分野の海外については、オーストラリア市場への進出に続いて、北米でも従業員数約740人の中堅SIerを新しくNRIグループに迎え入れた。オーストラリアでの事業はすでに軌道に乗っており、これに北米でのM&Aを加えることで目標の海外売上高1000億円に迫っていく。
代表取締役会長兼社長
此本臣吾
――営業利益の中計目標を前倒しできるほどの業績好調の背景は何か。
国内においては、主要顧客の経営トップが、先進的なデジタル技術を駆使したビジネス変革に対する迷いがなくなった点が大きい。コロナ禍の実質2年間で人々の行動様式が大きく変わり、企業向け、個人向けのビジネスを問わずオンライン化が加速度的に進んだ。企業が勝ち残っていくためにはデジタル化への投資をためらっている時間がなくなりつつある。デジタル化投資の大きな波は向こう数年続くと見ている。
北米での営業地域を広げる
――海外についてはどうか。
主要進出先であるオーストラリアでの一連のM&Aはほぼ完成形に近づきつつある。稼ぐ力も高まっており、あとはカバーできていない地域や機能を補う小規模なM&Aになっていく。一方、北米で新しくグループ入りしたSIerのCore BTS(コアBTS)は、米インディアナ州に拠点を置きつつ、主にM&Aによって東海岸の顧客を中心にサービスを提供してきた。当社の資本力を生かして北米での営業地域を一段と広げていきたい。
――競争が激しい北米市場でSIビジネスは通用するのか。
顧客の指示書通りにシステムを構築する従属的なSIは、日米問わず先進国では十分な価値を発揮できない。コロナ禍で厳しい移動制限が課されても、インドなどでのオフショア開発が問題なくできることが証明された。とはいえ、デジタル技術を駆使して新しいビジネスを顧客とともに立ち上げる“価値共創の領域”は、オフショアでは対応しにくい。顧客のビジネスや業界のことを熟知し、先進的なデジタル技術にも長けた人材に対する需要は今後も増え続ける。
――22年をキーワードで表すとすれば何か。
「飛躍」だ。コロナ禍後の経済回復もさることながら、一度起こった人々の行動変容は元には戻らない。顧客企業の多くがデジタル変革に向けてアクセルを踏む中、共創を通じて価値創出できる人材集団を供給し続けることで、ビジネスを飛躍的に伸ばしたい。