Special Feature
注目されるHRDXの最前線 人事の業務はどう変わるのか
2022/09/05 09:00
週刊BCN 2022年09月05日vol.1937掲載
HR(Human Resources)テクノロジーが、メディアで取り上げられるようになったのは、ほんの数年前からだ。企業の在り方や働き方にも大きな影響を及ぼすともてはやされた。だが実態としては、いまだに前近代的な人事システムが稼働していたり、紙ベースの非効率的な業務が進められたりしている。そんな状況下で、最近、注目されつつあるのが、人事領域のDXとなるHRDXだ。HRテクノロジーの活用との違いはどこにあり、そして人事の業務をどのように変革するのか。企業による取り組みの最前線に迫る。
(取材・文/袖山俊夫 編集/齋藤秀平)
EYストラテジー・アンド・コンサルティング
「HRテクノロジーは、デジタライゼーションをするためのツール、手段だ。一方、HRDXは、データやテクノロジーをてこに企業や人事を変革する方向に軸足が置かれた概念と言える」
EYストラテジー・アンド・コンサルティングのピープル・アドバイザリー・サービスリーダー パートナーで、書籍「HRDXの教科書-デジタル時代の人事戦略」の監修者でもある鵜澤慎一郎氏は、HRDXとHRテクノロジーの活用の違いをこう述べる。
EYストラテジー・アンド・コンサルティング 鵜澤慎一郎氏
HRDXにはどのような意味があるのか。鵜澤氏は二つのポイントがあると指摘する。
まず一つめについて、鵜澤氏は「人事部は非効率性の極致と言っていい組織で、システムも分散化している。新しいデジタルテクノロジーを活用して、もっと業務を省人化・効率化させ、労働集約的な仕事を解き放し、価値のある仕事にシフトしていかなければならない」と話す。
二つめとしては、人事が経営者や従業員に新たな付加価値を提供していくことの重要性を挙げ「経営者や従業員に便利で役立つ人事情報をタイムリーに提示し、開かれた組織マネジメントをしていかない限り、この競争の激しい時代において素早い意思決定、質の高い判断ができない」と語る。
ほかにも、人事システムの老朽化やサイバーセキュリティなどへの対応もあるとの考えを示し「システムを刷新しなくてはいけないというハード的なイシュー、さらには人を中心に据えた経営が着目され、多くの企業がHRDXを重要な経営課題と位置づけて取り組んでいる」と解説する。
ただ、本当の意味で企業や組織が変わるのは容易なことではない。各企業もまだ第一歩を踏み出したに過ぎないのが現状だとし「大多数の企業はデジタライゼーションで止まっている。トランスフォーメーションはまだ道半ば。それが現在地ではないか」と捉えている。
三菱重工業
実際のところ、企業の人事部門はどのようにHRDXの実現に向けて取り組みを進めているのだろうか。一例として、三菱重工業の動きを取り上げてみたい。同社は、国内グループ企業の従業員約7万人への展開を視野にHRDXを推進している。取り組んでいるのは、新たにリプレースした基幹システムの自社およびグループ各社への展開と、それに伴う社員インターフェースの拡張だ。第1弾として、2021年10月、自社およびグループ7社にクラウド人事・労務ソフト「SmartHR」を導入した。
三菱重工業 引地 淳 部長
導入の狙いについて、同社HRマネジメント部の引地淳・部長は「三菱重工業本体とグループ会社で使用する基幹システムがそれぞれ異なる弊害があった。DXの推進に向け情報環境の整備を進めていくためにも、HRに関連するシステムをすべてリニューアルする判断をした。また、当社には現場にいる技能系と呼ばれる社員が数多くいるものの、1人1台のPCが支給されているわけではないため、紙の配布が前提となっていた。速やかに情報を届けるとともに、ペーパーレスを実現するためにも電子化に踏み切ろうと考え、SmartHRを導入することにした」と説明する。
選択の決め手となったのは、SmartHRの優れたユーザーインターフェースと年末調整などの付加機能の多さがある。さらに、事業継続性という観点で、SmartHR社の財務体質や経営者のビジョンなどでも優位性を認めたという。
ただ、懸念点がなかったわけではない。大きかったのは、情報セキュリティに関する厳しいレギュレーションをどうクリアするかだった。これについては、SmartHRのようなクラウドの仕組みであれば、社内ネットワークに入ることなく、社外からスマートフォンからもアクセスができる。しかも、業務のデータとの切り分けも可能とあって、最終的にゴーサインが出た。引地部長は「当社グループにとっては、かなり画期的な出来事であっただけに、相当インパクトがあったはずだ」と強調する。
導入の効果はどうだったのか。同社グループから人事労務業務を委託されているMHIパーソネルの事業戦略推進部企画グループの内山康文・グループ長は、「各拠点にまたがっている現場の従業員に至るまで、リアルタイムで情報を展開・共有できている。また、ペーパーレス化が進んだことで、印刷業務や発送業務の短縮、アウトソース費用の削減など、定量的な効果も出ている」と手応えを実感している。
MHIパーソネル 内山康文 グループ長
今回の第1弾を含めて、同社グループでは五つのステップで共通したHR基盤の構築を目指す。引地部長は「膨大な人事関連のデータを分析し、戦略的な人事につなげていくことが、今後の大きなステップになってくる。その意味では、まだまだ入り口に立っただけに過ぎない」と語る。SmartHR
先進的な企業の人事部門が、HRDXにかじを切ろうとしている。そうした動きにベンダー側はどう対応しようとしているのだろうか。SmartHRの重松裕三・プロダクトマーケティングマネージャーは、HRDXの目的について「データを基に社員一人当たりの生産性を上げたり、従業員が継続的に働きたいと思える環境を整備したりしていくことが、大きな目的になってくる」とみている。
SmartHR 重松裕三 プロダクトマーケティング マネージャー
近年の同社の事業戦略を見ても、HRDXの目的達成を支援する企業へと進化しようとしている動きがうかがえる。特に、重松氏がプロダクトマーケティングマネージャーに就任した19年以降は、顕著であると言っていい。
重松プロダクトマーケティングマネージャーは「労務業務を行っているとデータがたまってくる。それらを一元的に管理し、可視化し、活用していくために、当社ではBIツールを開発し始め、従業員のエンゲージメントを測定するサーベイツールも提供するようになってきた。われわれが人材マネジメントと呼んでいる領域に向けたプロダクトを少しずつ開発している」と紹介する。
要は、HRDXの支援に向け、SmartHRがカバーする領域を広げようとしているわけだ。もちろん、これは簡単な話ではない。重松プロダクトマーケティングマネージャーとしても、自社が乗り越えなければいけない課題があることを認識している。「多くの企業が人材マネジメントを重要なテーマとして捉えている中で、われわれがまだ顧客に価値をもたらす、ど真ん中のプロダクトを提供できていない」とし、「会社全体としての適正な配置などを考えられるような新しいプロダクトを提供していきたい。そうすれば、人材マネジメント領域でしっかりと価値が提供できているといえるだろう」と話す。さらに「お客様の困りごとがないかは常に考えており、労務管理や人材マネジメントに次ぐ3本目の柱についても検討を進めている」と補足する。
ターゲットに合わせてSmartHRの位置付けを変えているのも、同社の戦略と言える。エンタープライズ企業には、SmartHRを従業員との接点、つなぐ役割として提案している。いわゆる、フロントシステムとしての立ち回りだ。一方、中小・中堅企業には、人事のデータベースとして利用してもらうことが多いという。
現在、SmartHRの登録企業数は5万社を突破している。相当な数だが、重松プロダクトマーケティングマネージャーはさらに先を見据えてこう語る。
「自らの強みを伸ばしていくだけでなく、全てのお客様に活用していただけるよう、今、できていない機能や足りていない機能に優先順位を付けて、スピード感を持って取り組みを進めていきたい」
鵜澤氏は「経営戦略と人材戦略が完全に断絶している企業が多い。HRDXのような変革をしようとした時に、人事部門が優先順位を見間違えていて、経営層からするとまるで抵抗しているように見えてしまう。経営に寄り添う人事部門であるべきだ」とし、「戦略はすぐに変えられても、人材はすぐには変えられない。だからこそ、人事部門が長い時間軸で、組織や人材を先取りして考えていかなければいけない。いざ、HRDXに着手するとなったら、試行錯誤してクイックに導入していくべきだ。絶対的な正解はなく、完璧を求める必要もない。小さく生んで大きく育てていけばいい」と指南する。
重松プロダクトマーケティングマネージャーも、経営戦略と人事戦略のすり合わせを指摘したほか、テクノロジーを導入する目的の明確化を挙げた。「人事は独立した組織ではない。人事戦略は経営戦略に即したものであるべきだ。サクセッションプランにまでコミットする必要がある。また、目的に対して本当に最適なシステムを選ぶためにも、導入の目的や候補となるシステムの強みをしっかりと見極めることが大事になってくる」と言う。
最後に、HRDXの実現を支援するために、ITベンダーに期待していることを鵜澤氏と引地部長に聞いてみた。
鵜澤氏は「テクノロジーを売って終わりではなく、それをどう活用して付加価値を上げていくかに力点を置いてクライアントを支えていけば、本当の意味でのトランスフォーメーションの支援につながる」と主張する。
一方、引地部長は「SaaSは乗り換えが比較的容易にできるが、当社グループのような規模だと簡単にはベンダーを変えられない。レッドオーシャンな市場であるだけに、より良い製品を作って生き延びてほしい。また、ベンダーは、機能の幅を広げることにかなり注力しているように見えるが、それだけでなく、一つ一つの機能を充実させたり、ユーザーの声を聞いた上で改善を図ったりするところにもう少し力を入れてもらいたい」と求める。
HRDXは、これからが正念場となる。その成功に向けて、人事部門がどうあるべきか。そして、それをITベンダーがいかに支えていくか。本格的に問われていくことになる。
(取材・文/袖山俊夫 編集/齋藤秀平)

EYストラテジー・アンド・コンサルティング
変革に軸足を置いた概念
「HRテクノロジーは、デジタライゼーションをするためのツール、手段だ。一方、HRDXは、データやテクノロジーをてこに企業や人事を変革する方向に軸足が置かれた概念と言える」EYストラテジー・アンド・コンサルティングのピープル・アドバイザリー・サービスリーダー パートナーで、書籍「HRDXの教科書-デジタル時代の人事戦略」の監修者でもある鵜澤慎一郎氏は、HRDXとHRテクノロジーの活用の違いをこう述べる。
HRDXにはどのような意味があるのか。鵜澤氏は二つのポイントがあると指摘する。
まず一つめについて、鵜澤氏は「人事部は非効率性の極致と言っていい組織で、システムも分散化している。新しいデジタルテクノロジーを活用して、もっと業務を省人化・効率化させ、労働集約的な仕事を解き放し、価値のある仕事にシフトしていかなければならない」と話す。
二つめとしては、人事が経営者や従業員に新たな付加価値を提供していくことの重要性を挙げ「経営者や従業員に便利で役立つ人事情報をタイムリーに提示し、開かれた組織マネジメントをしていかない限り、この競争の激しい時代において素早い意思決定、質の高い判断ができない」と語る。
ほかにも、人事システムの老朽化やサイバーセキュリティなどへの対応もあるとの考えを示し「システムを刷新しなくてはいけないというハード的なイシュー、さらには人を中心に据えた経営が着目され、多くの企業がHRDXを重要な経営課題と位置づけて取り組んでいる」と解説する。
ただ、本当の意味で企業や組織が変わるのは容易なことではない。各企業もまだ第一歩を踏み出したに過ぎないのが現状だとし「大多数の企業はデジタライゼーションで止まっている。トランスフォーメーションはまだ道半ば。それが現在地ではないか」と捉えている。
三菱重工業
クラウドでセキュリティ基準をクリア
実際のところ、企業の人事部門はどのようにHRDXの実現に向けて取り組みを進めているのだろうか。一例として、三菱重工業の動きを取り上げてみたい。同社は、国内グループ企業の従業員約7万人への展開を視野にHRDXを推進している。取り組んでいるのは、新たにリプレースした基幹システムの自社およびグループ各社への展開と、それに伴う社員インターフェースの拡張だ。第1弾として、2021年10月、自社およびグループ7社にクラウド人事・労務ソフト「SmartHR」を導入した。
導入の狙いについて、同社HRマネジメント部の引地淳・部長は「三菱重工業本体とグループ会社で使用する基幹システムがそれぞれ異なる弊害があった。DXの推進に向け情報環境の整備を進めていくためにも、HRに関連するシステムをすべてリニューアルする判断をした。また、当社には現場にいる技能系と呼ばれる社員が数多くいるものの、1人1台のPCが支給されているわけではないため、紙の配布が前提となっていた。速やかに情報を届けるとともに、ペーパーレスを実現するためにも電子化に踏み切ろうと考え、SmartHRを導入することにした」と説明する。
選択の決め手となったのは、SmartHRの優れたユーザーインターフェースと年末調整などの付加機能の多さがある。さらに、事業継続性という観点で、SmartHR社の財務体質や経営者のビジョンなどでも優位性を認めたという。
ただ、懸念点がなかったわけではない。大きかったのは、情報セキュリティに関する厳しいレギュレーションをどうクリアするかだった。これについては、SmartHRのようなクラウドの仕組みであれば、社内ネットワークに入ることなく、社外からスマートフォンからもアクセスができる。しかも、業務のデータとの切り分けも可能とあって、最終的にゴーサインが出た。引地部長は「当社グループにとっては、かなり画期的な出来事であっただけに、相当インパクトがあったはずだ」と強調する。
導入の効果はどうだったのか。同社グループから人事労務業務を委託されているMHIパーソネルの事業戦略推進部企画グループの内山康文・グループ長は、「各拠点にまたがっている現場の従業員に至るまで、リアルタイムで情報を展開・共有できている。また、ペーパーレス化が進んだことで、印刷業務や発送業務の短縮、アウトソース費用の削減など、定量的な効果も出ている」と手応えを実感している。
今回の第1弾を含めて、同社グループでは五つのステップで共通したHR基盤の構築を目指す。引地部長は「膨大な人事関連のデータを分析し、戦略的な人事につなげていくことが、今後の大きなステップになってくる。その意味では、まだまだ入り口に立っただけに過ぎない」と語る。
SmartHR
人材マネジメント領域を拡充
先進的な企業の人事部門が、HRDXにかじを切ろうとしている。そうした動きにベンダー側はどう対応しようとしているのだろうか。SmartHRの重松裕三・プロダクトマーケティングマネージャーは、HRDXの目的について「データを基に社員一人当たりの生産性を上げたり、従業員が継続的に働きたいと思える環境を整備したりしていくことが、大きな目的になってくる」とみている。
近年の同社の事業戦略を見ても、HRDXの目的達成を支援する企業へと進化しようとしている動きがうかがえる。特に、重松氏がプロダクトマーケティングマネージャーに就任した19年以降は、顕著であると言っていい。
重松プロダクトマーケティングマネージャーは「労務業務を行っているとデータがたまってくる。それらを一元的に管理し、可視化し、活用していくために、当社ではBIツールを開発し始め、従業員のエンゲージメントを測定するサーベイツールも提供するようになってきた。われわれが人材マネジメントと呼んでいる領域に向けたプロダクトを少しずつ開発している」と紹介する。
要は、HRDXの支援に向け、SmartHRがカバーする領域を広げようとしているわけだ。もちろん、これは簡単な話ではない。重松プロダクトマーケティングマネージャーとしても、自社が乗り越えなければいけない課題があることを認識している。「多くの企業が人材マネジメントを重要なテーマとして捉えている中で、われわれがまだ顧客に価値をもたらす、ど真ん中のプロダクトを提供できていない」とし、「会社全体としての適正な配置などを考えられるような新しいプロダクトを提供していきたい。そうすれば、人材マネジメント領域でしっかりと価値が提供できているといえるだろう」と話す。さらに「お客様の困りごとがないかは常に考えており、労務管理や人材マネジメントに次ぐ3本目の柱についても検討を進めている」と補足する。
ターゲットに合わせてSmartHRの位置付けを変えているのも、同社の戦略と言える。エンタープライズ企業には、SmartHRを従業員との接点、つなぐ役割として提案している。いわゆる、フロントシステムとしての立ち回りだ。一方、中小・中堅企業には、人事のデータベースとして利用してもらうことが多いという。
現在、SmartHRの登録企業数は5万社を突破している。相当な数だが、重松プロダクトマーケティングマネージャーはさらに先を見据えてこう語る。
「自らの強みを伸ばしていくだけでなく、全てのお客様に活用していただけるよう、今、できていない機能や足りていない機能に優先順位を付けて、スピード感を持って取り組みを進めていきたい」
経営に寄り添う人事に
HRDXの推進に向けた人事部門のあるべき姿も考察してみたい。鵜澤氏がアドバイスするのは、経営と人事の連動と中長期的な視点での人材マネジメント、アジャイル&スモールなアプローチの3点だ。鵜澤氏は「経営戦略と人材戦略が完全に断絶している企業が多い。HRDXのような変革をしようとした時に、人事部門が優先順位を見間違えていて、経営層からするとまるで抵抗しているように見えてしまう。経営に寄り添う人事部門であるべきだ」とし、「戦略はすぐに変えられても、人材はすぐには変えられない。だからこそ、人事部門が長い時間軸で、組織や人材を先取りして考えていかなければいけない。いざ、HRDXに着手するとなったら、試行錯誤してクイックに導入していくべきだ。絶対的な正解はなく、完璧を求める必要もない。小さく生んで大きく育てていけばいい」と指南する。
重松プロダクトマーケティングマネージャーも、経営戦略と人事戦略のすり合わせを指摘したほか、テクノロジーを導入する目的の明確化を挙げた。「人事は独立した組織ではない。人事戦略は経営戦略に即したものであるべきだ。サクセッションプランにまでコミットする必要がある。また、目的に対して本当に最適なシステムを選ぶためにも、導入の目的や候補となるシステムの強みをしっかりと見極めることが大事になってくる」と言う。
最後に、HRDXの実現を支援するために、ITベンダーに期待していることを鵜澤氏と引地部長に聞いてみた。
鵜澤氏は「テクノロジーを売って終わりではなく、それをどう活用して付加価値を上げていくかに力点を置いてクライアントを支えていけば、本当の意味でのトランスフォーメーションの支援につながる」と主張する。
一方、引地部長は「SaaSは乗り換えが比較的容易にできるが、当社グループのような規模だと簡単にはベンダーを変えられない。レッドオーシャンな市場であるだけに、より良い製品を作って生き延びてほしい。また、ベンダーは、機能の幅を広げることにかなり注力しているように見えるが、それだけでなく、一つ一つの機能を充実させたり、ユーザーの声を聞いた上で改善を図ったりするところにもう少し力を入れてもらいたい」と求める。
HRDXは、これからが正念場となる。その成功に向けて、人事部門がどうあるべきか。そして、それをITベンダーがいかに支えていくか。本格的に問われていくことになる。
HR(Human Resources)テクノロジーが、メディアで取り上げられるようになったのは、ほんの数年前からだ。企業の在り方や働き方にも大きな影響を及ぼすともてはやされた。だが実態としては、いまだに前近代的な人事システムが稼働していたり、紙ベースの非効率的な業務が進められたりしている。そんな状況下で、最近、注目されつつあるのが、人事領域のDXとなるHRDXだ。HRテクノロジーの活用との違いはどこにあり、そして人事の業務をどのように変革するのか。企業による取り組みの最前線に迫る。
(取材・文/袖山俊夫 編集/齋藤秀平)
EYストラテジー・アンド・コンサルティング
「HRテクノロジーは、デジタライゼーションをするためのツール、手段だ。一方、HRDXは、データやテクノロジーをてこに企業や人事を変革する方向に軸足が置かれた概念と言える」
EYストラテジー・アンド・コンサルティングのピープル・アドバイザリー・サービスリーダー パートナーで、書籍「HRDXの教科書-デジタル時代の人事戦略」の監修者でもある鵜澤慎一郎氏は、HRDXとHRテクノロジーの活用の違いをこう述べる。
EYストラテジー・アンド・コンサルティング 鵜澤慎一郎氏
HRDXにはどのような意味があるのか。鵜澤氏は二つのポイントがあると指摘する。
まず一つめについて、鵜澤氏は「人事部は非効率性の極致と言っていい組織で、システムも分散化している。新しいデジタルテクノロジーを活用して、もっと業務を省人化・効率化させ、労働集約的な仕事を解き放し、価値のある仕事にシフトしていかなければならない」と話す。
二つめとしては、人事が経営者や従業員に新たな付加価値を提供していくことの重要性を挙げ「経営者や従業員に便利で役立つ人事情報をタイムリーに提示し、開かれた組織マネジメントをしていかない限り、この競争の激しい時代において素早い意思決定、質の高い判断ができない」と語る。
ほかにも、人事システムの老朽化やサイバーセキュリティなどへの対応もあるとの考えを示し「システムを刷新しなくてはいけないというハード的なイシュー、さらには人を中心に据えた経営が着目され、多くの企業がHRDXを重要な経営課題と位置づけて取り組んでいる」と解説する。
ただ、本当の意味で企業や組織が変わるのは容易なことではない。各企業もまだ第一歩を踏み出したに過ぎないのが現状だとし「大多数の企業はデジタライゼーションで止まっている。トランスフォーメーションはまだ道半ば。それが現在地ではないか」と捉えている。
(取材・文/袖山俊夫 編集/齋藤秀平)

EYストラテジー・アンド・コンサルティング
変革に軸足を置いた概念
「HRテクノロジーは、デジタライゼーションをするためのツール、手段だ。一方、HRDXは、データやテクノロジーをてこに企業や人事を変革する方向に軸足が置かれた概念と言える」EYストラテジー・アンド・コンサルティングのピープル・アドバイザリー・サービスリーダー パートナーで、書籍「HRDXの教科書-デジタル時代の人事戦略」の監修者でもある鵜澤慎一郎氏は、HRDXとHRテクノロジーの活用の違いをこう述べる。
HRDXにはどのような意味があるのか。鵜澤氏は二つのポイントがあると指摘する。
まず一つめについて、鵜澤氏は「人事部は非効率性の極致と言っていい組織で、システムも分散化している。新しいデジタルテクノロジーを活用して、もっと業務を省人化・効率化させ、労働集約的な仕事を解き放し、価値のある仕事にシフトしていかなければならない」と話す。
二つめとしては、人事が経営者や従業員に新たな付加価値を提供していくことの重要性を挙げ「経営者や従業員に便利で役立つ人事情報をタイムリーに提示し、開かれた組織マネジメントをしていかない限り、この競争の激しい時代において素早い意思決定、質の高い判断ができない」と語る。
ほかにも、人事システムの老朽化やサイバーセキュリティなどへの対応もあるとの考えを示し「システムを刷新しなくてはいけないというハード的なイシュー、さらには人を中心に据えた経営が着目され、多くの企業がHRDXを重要な経営課題と位置づけて取り組んでいる」と解説する。
ただ、本当の意味で企業や組織が変わるのは容易なことではない。各企業もまだ第一歩を踏み出したに過ぎないのが現状だとし「大多数の企業はデジタライゼーションで止まっている。トランスフォーメーションはまだ道半ば。それが現在地ではないか」と捉えている。
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