Special Feature
【Oracle CloudWorld現地レポート】マルチクラウド戦略の推進へ 重視するものは?
2022/12/01 09:00
週刊BCN 2022年11月28日vol.1947掲載
【米ラスベガス発】10月17日、米Oracle(オラクル)が年次カンファレンスイベントを開催した。リアル会場での開催は3年ぶり。会場はこれまでのサンフランシスコからラスベガスに移り、名称も“OpenWorld”から“CloudWorld”に改められた。内容は名称変更の通りクラウドにフォーカスし、キーワードとして挙げたのは、ハイブリッド、エッジコンピューティングも含む「マルチクラウド」、そして「インダストリークラウド」。これらクラウド戦略を進める上で重要となるのが、顧客、パートナーとのエコシステムになるという。現地からイベントの様子をレポートする。
(取材・文/谷川耕一 編集/藤岡 堯)
米オラクル ラリー・エリソン会長
オラクルではこの要望に応えるための一つとして、これまで「Oracle Cloud Infrastructure」(OCI)でしか利用できなかった「MySQL HeatWave」をAWSでも利用できる「MySQL HeatWave on AWS」を2022年9月から提供している。さらにCloudWorldのタイミングで、「MySQL HeatWave for Azure」も発表した。Azure版が“on”ではなく“for”となっているのは、2社のクラウドデータセンターを相互接続する「Oracle Cloud and Microsoft Azure Interconnect」を用い、AzureからOCI上のMySQL HeatWaveを透過的に利用できるようにしているからだ。Azureとの間では、載せるのではなく密につなぐことでマルチクラウドを実現している。
クラウドデータセンターを密につなぐことで「一つのクラウドから、他のクラウドも利用できるようになる。これをまず米Microsoft(マイクロソフト)と協力して実現した」とエリソン会長。多くのクラウドサービスでは、データを入れる時には課金されないが、クラウドサービスからデータを取り出そうとすると大きなコストがかかる。Interconnectを使ったマイクロソフトとの協業では、クラウド間でのデータの出し入れコストを無料にしている。単に高速なネットワークで接続するだけでなく、コストも考慮した協業体制を築けていることで「顧客がクラウドサービスを自由に選んで使えるようになる」と述べ、このような関係性を「Open Multi-Cloud Ecosystem」だとエリソン会長は主張する。
将来的にはクラウドサービスの相互接続はさらに進み、クラウド間の壁は崩壊するとも語る。すでにAzureだけでなく、AWSとの間でもInterconnectで相互接続する協業が進められている。「OCI以外のクラウドプロバイダーを使っている多くの顧客がおり、それらのクラウドの機能をOCIからでも使えるようにする必要がある」と言うのは、2日目の基調講演に登場した、OCI担当のクレイ・マグワイクEVPだ。
マグワイクEVPの基調講演では、OCIのコンソールから数回クリックするだけでAWSのアカウントとOCIのアカウントをリンクし、Interconnectを用いて双方の間を高速な仮想プライベートネットワークで接続するデモが行われた。接続後にOCIのコンソールでシェルを開けば、そこからAWS上のPostgreSQLのデータベースにストレスなくアクセスできる。さらにAWSの運用監視サービスである「CloudWatch」を用いて、AWSのインスタンスとOCIのインスタンスが同じ画面で監視でき、それぞれが同じような性能で稼働している様子も示された。
「これは素晴らしいことであり、このようなテクノロジーを使うことでユーザーはクラウドの移行や選択を容易に実現できるようになる」とマグワイクEVP。その上で重要なのは、二つのクラウド間でのデータ送信の料金がかからないことだと言う。このようなクラウド間の協業の取り組みは、デモンストレーションで終わらせるようなものではない。オラクルはこの領域のイノベーションを続けると約束する。「クラウド間の境界がなくなり、より深い統合が実現する。より多くのクラウドプロバイダーと同じ価値を提供できるようにする」。
米オラクル クレイ・マグワイク EVP
パブリッククラウドは過去数十年において、最も進化が加速したテクノロジーの一つだ。マグワイクEVPは「これがなければ、多くのビジネス変革はなし得なかっただろう」と話す。とはいえ、現状では世の中のワークロードの30%程度しかパブリッククラウドで動いていない。素晴らしいテクノロジーがあるからといって、それを全てのユーザーが利用できるわけではないのだ。
多くのワークロードがパブリッククラウドで動いていない理由の一つは、プライバシーに関する法律や規制への対応によって引き起こされる複雑化への懸念だ。ほかにも必要なデータを適切に制御し、求められる高度なレスポンスや、性能を得たい場合や、高度な可用性を実現したい際にも、パブリッククラウドには技術的、あるいは経済的な制限がある。またクラウドへの移行コストや手間も増大しがちで、移行後も多くの顧客が予想よりはるかに高額な請求額に頭を悩ませているとマグワイクEVPは指摘する。
これらのワークロードをパブリッククラウドに移行できない問題を解決するには、適切なクラウドパートナーを選ぶことが重要となる。にもかかわらず「多くの企業が、実はサポートが十分にないクラウドパートナーを選び、立ち往生している」とみる。
オラクルではワークロードをクラウド化できないことに対し、まず、Cloud@CustomerやDedicated Regionというセキュアで強力なエッジのソリューションを提供し対処してきた。自社でクラウドオペレーターを抱え運用できる体制がある企業ならば、これらのサービスを使うことで、エッジサイドのクラウドでワークロードを動かしプライバシーの規制などの問題に対処した上でクラウド本来のメリットも享受できる。
一方でそれが難しい企業は、適切なパートナーと協創の形でクラウドジャーニーを歩むこととなる。これを加速するため、パートナー企業が顧客のためのクラウドオペレーターに容易になれるようにしたのが、Oracle Alloyだ。Alloyは、パートナーであるクラウドオペレーターが、ユーザーのクラウド利用のコスト予測や適切な管理ができる。また、さまざまなOCI上のサービスを容易に顧客に展開でき、コストに直結する性能についても適切に制御できる仕組みを提供する。
AlloyではパートナーがOCIと独自のソフトウェアサービスなどと組み合わせて新たな価値を加えることが可能だ。さらに他のクラウドサービスとの連携なども容易に実現できる。その上でそれらを、パートナー独自のブランドとして顧客に提供できる。Alloyのコントロール権はクラウドオペレーターとなるパートナーが持ち、顧客のニーズに応じて柔軟な制御が可能となる。日本オラクル・三澤社長
日本には、自社データセンターを運用しアウトソーシングやコロケーションなどで、大規模な顧客システムを構築、運用管理しているSI企業などが多い。そういった企業が「Alloyでクラウドテクノロジーを活用できるのは、かなり魅力的なはずだ」とも三澤社長は指摘する。日本にはデータ主権を守りたいと考えている顧客企業も多く、彼らもまたAlloyを活用できるパートナーの登場には高い関心を示すだろう。そしてAlloyのようなサービスは、「他の競合ベンダーにはないものだ」とも強調する。
三澤社長は今回のCloudWorldを通じ、オラクルの戦略が改めて顧客中心に戻ったと感じている。これは、クラウド時代に成功を収めるためには顧客中心の考え方でなければならず、またそれを実践するには自社だけでなくパートナーとのエコシステムが必要になることの表れでもある。
そのためあらためて日本でも、パートナーエコシステムには力を入れる。ここで言うエコシステムとは、Oracleの製品やサービスを積極的に扱ってくれるパートナーを増やす仕組みではなく、パートナーと一緒に顧客のクラウドジャーニーを成功に導けるようにする協創体制を指す。
OCIの領域であるIaaS、PaaSのシェアでは、まだまだAWSやAzureには及ばない。しかし、そのOCI上にはFusion ApplicationsとNetSuiteの強いSaaSがあり、Cernerの買収などで強化している業界特化型の強力なインダストリークラウドもある。それぞれのクラウドが今後は30%以上、基盤のOCIはさらに50%程度は成長すると三澤社長は予測する。
つまりOCIを加えたこれら四つのクラウドサービスを合わせれば、その規模はかなり大きく、今後はこのトータルのOracle Cloudのビジネスが、さらに大きく伸びるはずだと三澤社長は自信を見せる。
(取材・文/谷川耕一 編集/藤岡 堯)
Open Multi-Cloud Ecosystemを実現
基調講演に登場したラリー・エリソン会長兼CTOは、世界には「Amazon Web Services」(AWS)、「Microsoft Azure」「Google Cloud」そして「Oracle Cloud」などのクラウドがあり、多くの企業が複数のクラウドサービスを使っていると指摘する。顧客企業だけでなく米Snowflake(スノーフレイク)のようなISVも、稼働環境として複数のクラウドプラットフォームを選ぶようになった。複数のクラウドで使いたいとの要望はオラクルに届いており、その重要性を十分に認識している。
オラクルではこの要望に応えるための一つとして、これまで「Oracle Cloud Infrastructure」(OCI)でしか利用できなかった「MySQL HeatWave」をAWSでも利用できる「MySQL HeatWave on AWS」を2022年9月から提供している。さらにCloudWorldのタイミングで、「MySQL HeatWave for Azure」も発表した。Azure版が“on”ではなく“for”となっているのは、2社のクラウドデータセンターを相互接続する「Oracle Cloud and Microsoft Azure Interconnect」を用い、AzureからOCI上のMySQL HeatWaveを透過的に利用できるようにしているからだ。Azureとの間では、載せるのではなく密につなぐことでマルチクラウドを実現している。
クラウドデータセンターを密につなぐことで「一つのクラウドから、他のクラウドも利用できるようになる。これをまず米Microsoft(マイクロソフト)と協力して実現した」とエリソン会長。多くのクラウドサービスでは、データを入れる時には課金されないが、クラウドサービスからデータを取り出そうとすると大きなコストがかかる。Interconnectを使ったマイクロソフトとの協業では、クラウド間でのデータの出し入れコストを無料にしている。単に高速なネットワークで接続するだけでなく、コストも考慮した協業体制を築けていることで「顧客がクラウドサービスを自由に選んで使えるようになる」と述べ、このような関係性を「Open Multi-Cloud Ecosystem」だとエリソン会長は主張する。
将来的にはクラウドサービスの相互接続はさらに進み、クラウド間の壁は崩壊するとも語る。すでにAzureだけでなく、AWSとの間でもInterconnectで相互接続する協業が進められている。「OCI以外のクラウドプロバイダーを使っている多くの顧客がおり、それらのクラウドの機能をOCIからでも使えるようにする必要がある」と言うのは、2日目の基調講演に登場した、OCI担当のクレイ・マグワイクEVPだ。
マグワイクEVPの基調講演では、OCIのコンソールから数回クリックするだけでAWSのアカウントとOCIのアカウントをリンクし、Interconnectを用いて双方の間を高速な仮想プライベートネットワークで接続するデモが行われた。接続後にOCIのコンソールでシェルを開けば、そこからAWS上のPostgreSQLのデータベースにストレスなくアクセスできる。さらにAWSの運用監視サービスである「CloudWatch」を用いて、AWSのインスタンスとOCIのインスタンスが同じ画面で監視でき、それぞれが同じような性能で稼働している様子も示された。
「これは素晴らしいことであり、このようなテクノロジーを使うことでユーザーはクラウドの移行や選択を容易に実現できるようになる」とマグワイクEVP。その上で重要なのは、二つのクラウド間でのデータ送信の料金がかからないことだと言う。このようなクラウド間の協業の取り組みは、デモンストレーションで終わらせるようなものではない。オラクルはこの領域のイノベーションを続けると約束する。「クラウド間の境界がなくなり、より深い統合が実現する。より多くのクラウドプロバイダーと同じ価値を提供できるようにする」。
パートナーがクラウドプロバイダーになる
今回のCloudWorldでの大きな発表の一つに「Oracle Alloy」がある。これは、OCIを活用することでパートナーがクラウドプロバイダーになれるようにするサービスだ。オラクルでは、クラウドサービスを顧客の元に持っていく「Cloud@Customer」や「OCI Dedicated Region」を用意している。Oracle Alloyは、パートナー企業がOCIを用いて、独自のクラウドサービスを展開できるようにする仕組みで、利用するテクノロジーはほぼDedicated Regionと同様なものだ。
パブリッククラウドは過去数十年において、最も進化が加速したテクノロジーの一つだ。マグワイクEVPは「これがなければ、多くのビジネス変革はなし得なかっただろう」と話す。とはいえ、現状では世の中のワークロードの30%程度しかパブリッククラウドで動いていない。素晴らしいテクノロジーがあるからといって、それを全てのユーザーが利用できるわけではないのだ。
多くのワークロードがパブリッククラウドで動いていない理由の一つは、プライバシーに関する法律や規制への対応によって引き起こされる複雑化への懸念だ。ほかにも必要なデータを適切に制御し、求められる高度なレスポンスや、性能を得たい場合や、高度な可用性を実現したい際にも、パブリッククラウドには技術的、あるいは経済的な制限がある。またクラウドへの移行コストや手間も増大しがちで、移行後も多くの顧客が予想よりはるかに高額な請求額に頭を悩ませているとマグワイクEVPは指摘する。
これらのワークロードをパブリッククラウドに移行できない問題を解決するには、適切なクラウドパートナーを選ぶことが重要となる。にもかかわらず「多くの企業が、実はサポートが十分にないクラウドパートナーを選び、立ち往生している」とみる。
オラクルではワークロードをクラウド化できないことに対し、まず、Cloud@CustomerやDedicated Regionというセキュアで強力なエッジのソリューションを提供し対処してきた。自社でクラウドオペレーターを抱え運用できる体制がある企業ならば、これらのサービスを使うことで、エッジサイドのクラウドでワークロードを動かしプライバシーの規制などの問題に対処した上でクラウド本来のメリットも享受できる。
一方でそれが難しい企業は、適切なパートナーと協創の形でクラウドジャーニーを歩むこととなる。これを加速するため、パートナー企業が顧客のためのクラウドオペレーターに容易になれるようにしたのが、Oracle Alloyだ。Alloyは、パートナーであるクラウドオペレーターが、ユーザーのクラウド利用のコスト予測や適切な管理ができる。また、さまざまなOCI上のサービスを容易に顧客に展開でき、コストに直結する性能についても適切に制御できる仕組みを提供する。
AlloyではパートナーがOCIと独自のソフトウェアサービスなどと組み合わせて新たな価値を加えることが可能だ。さらに他のクラウドサービスとの連携なども容易に実現できる。その上でそれらを、パートナー独自のブランドとして顧客に提供できる。Alloyのコントロール権はクラウドオペレーターとなるパートナーが持ち、顧客のニーズに応じて柔軟な制御が可能となる。
日本オラクル・三澤社長
「顧客中心のエコシステムに」
CloudWorldに参加していた日本オラクルの三澤智光社長は、日本においてもセキュリティクラウドやソブリンクラウドというキーワードが取り上げられており、データをしっかりと守れるクラウドサービスのニーズがあるという。それに対応できるDedicated Regionも野村総合研究所がいち早く導入しており、日本にはすでに実績がある。この経験は、Alloyの日本での展開においても有効となるはずだ。
日本オラクル 三澤智光 社長
日本には、自社データセンターを運用しアウトソーシングやコロケーションなどで、大規模な顧客システムを構築、運用管理しているSI企業などが多い。そういった企業が「Alloyでクラウドテクノロジーを活用できるのは、かなり魅力的なはずだ」とも三澤社長は指摘する。日本にはデータ主権を守りたいと考えている顧客企業も多く、彼らもまたAlloyを活用できるパートナーの登場には高い関心を示すだろう。そしてAlloyのようなサービスは、「他の競合ベンダーにはないものだ」とも強調する。
三澤社長は今回のCloudWorldを通じ、オラクルの戦略が改めて顧客中心に戻ったと感じている。これは、クラウド時代に成功を収めるためには顧客中心の考え方でなければならず、またそれを実践するには自社だけでなくパートナーとのエコシステムが必要になることの表れでもある。
そのためあらためて日本でも、パートナーエコシステムには力を入れる。ここで言うエコシステムとは、Oracleの製品やサービスを積極的に扱ってくれるパートナーを増やす仕組みではなく、パートナーと一緒に顧客のクラウドジャーニーを成功に導けるようにする協創体制を指す。
OCIの領域であるIaaS、PaaSのシェアでは、まだまだAWSやAzureには及ばない。しかし、そのOCI上にはFusion ApplicationsとNetSuiteの強いSaaSがあり、Cernerの買収などで強化している業界特化型の強力なインダストリークラウドもある。それぞれのクラウドが今後は30%以上、基盤のOCIはさらに50%程度は成長すると三澤社長は予測する。
つまりOCIを加えたこれら四つのクラウドサービスを合わせれば、その規模はかなり大きく、今後はこのトータルのOracle Cloudのビジネスが、さらに大きく伸びるはずだと三澤社長は自信を見せる。
【米ラスベガス発】10月17日、米Oracle(オラクル)が年次カンファレンスイベントを開催した。リアル会場での開催は3年ぶり。会場はこれまでのサンフランシスコからラスベガスに移り、名称も“OpenWorld”から“CloudWorld”に改められた。内容は名称変更の通りクラウドにフォーカスし、キーワードとして挙げたのは、ハイブリッド、エッジコンピューティングも含む「マルチクラウド」、そして「インダストリークラウド」。これらクラウド戦略を進める上で重要となるのが、顧客、パートナーとのエコシステムになるという。現地からイベントの様子をレポートする。
(取材・文/谷川耕一 編集/藤岡 堯)
米オラクル ラリー・エリソン会長
オラクルではこの要望に応えるための一つとして、これまで「Oracle Cloud Infrastructure」(OCI)でしか利用できなかった「MySQL HeatWave」をAWSでも利用できる「MySQL HeatWave on AWS」を2022年9月から提供している。さらにCloudWorldのタイミングで、「MySQL HeatWave for Azure」も発表した。Azure版が“on”ではなく“for”となっているのは、2社のクラウドデータセンターを相互接続する「Oracle Cloud and Microsoft Azure Interconnect」を用い、AzureからOCI上のMySQL HeatWaveを透過的に利用できるようにしているからだ。Azureとの間では、載せるのではなく密につなぐことでマルチクラウドを実現している。
クラウドデータセンターを密につなぐことで「一つのクラウドから、他のクラウドも利用できるようになる。これをまず米Microsoft(マイクロソフト)と協力して実現した」とエリソン会長。多くのクラウドサービスでは、データを入れる時には課金されないが、クラウドサービスからデータを取り出そうとすると大きなコストがかかる。Interconnectを使ったマイクロソフトとの協業では、クラウド間でのデータの出し入れコストを無料にしている。単に高速なネットワークで接続するだけでなく、コストも考慮した協業体制を築けていることで「顧客がクラウドサービスを自由に選んで使えるようになる」と述べ、このような関係性を「Open Multi-Cloud Ecosystem」だとエリソン会長は主張する。
将来的にはクラウドサービスの相互接続はさらに進み、クラウド間の壁は崩壊するとも語る。すでにAzureだけでなく、AWSとの間でもInterconnectで相互接続する協業が進められている。「OCI以外のクラウドプロバイダーを使っている多くの顧客がおり、それらのクラウドの機能をOCIからでも使えるようにする必要がある」と言うのは、2日目の基調講演に登場した、OCI担当のクレイ・マグワイクEVPだ。
マグワイクEVPの基調講演では、OCIのコンソールから数回クリックするだけでAWSのアカウントとOCIのアカウントをリンクし、Interconnectを用いて双方の間を高速な仮想プライベートネットワークで接続するデモが行われた。接続後にOCIのコンソールでシェルを開けば、そこからAWS上のPostgreSQLのデータベースにストレスなくアクセスできる。さらにAWSの運用監視サービスである「CloudWatch」を用いて、AWSのインスタンスとOCIのインスタンスが同じ画面で監視でき、それぞれが同じような性能で稼働している様子も示された。
「これは素晴らしいことであり、このようなテクノロジーを使うことでユーザーはクラウドの移行や選択を容易に実現できるようになる」とマグワイクEVP。その上で重要なのは、二つのクラウド間でのデータ送信の料金がかからないことだと言う。このようなクラウド間の協業の取り組みは、デモンストレーションで終わらせるようなものではない。オラクルはこの領域のイノベーションを続けると約束する。「クラウド間の境界がなくなり、より深い統合が実現する。より多くのクラウドプロバイダーと同じ価値を提供できるようにする」。
(取材・文/谷川耕一 編集/藤岡 堯)
Open Multi-Cloud Ecosystemを実現
基調講演に登場したラリー・エリソン会長兼CTOは、世界には「Amazon Web Services」(AWS)、「Microsoft Azure」「Google Cloud」そして「Oracle Cloud」などのクラウドがあり、多くの企業が複数のクラウドサービスを使っていると指摘する。顧客企業だけでなく米Snowflake(スノーフレイク)のようなISVも、稼働環境として複数のクラウドプラットフォームを選ぶようになった。複数のクラウドで使いたいとの要望はオラクルに届いており、その重要性を十分に認識している。
オラクルではこの要望に応えるための一つとして、これまで「Oracle Cloud Infrastructure」(OCI)でしか利用できなかった「MySQL HeatWave」をAWSでも利用できる「MySQL HeatWave on AWS」を2022年9月から提供している。さらにCloudWorldのタイミングで、「MySQL HeatWave for Azure」も発表した。Azure版が“on”ではなく“for”となっているのは、2社のクラウドデータセンターを相互接続する「Oracle Cloud and Microsoft Azure Interconnect」を用い、AzureからOCI上のMySQL HeatWaveを透過的に利用できるようにしているからだ。Azureとの間では、載せるのではなく密につなぐことでマルチクラウドを実現している。
クラウドデータセンターを密につなぐことで「一つのクラウドから、他のクラウドも利用できるようになる。これをまず米Microsoft(マイクロソフト)と協力して実現した」とエリソン会長。多くのクラウドサービスでは、データを入れる時には課金されないが、クラウドサービスからデータを取り出そうとすると大きなコストがかかる。Interconnectを使ったマイクロソフトとの協業では、クラウド間でのデータの出し入れコストを無料にしている。単に高速なネットワークで接続するだけでなく、コストも考慮した協業体制を築けていることで「顧客がクラウドサービスを自由に選んで使えるようになる」と述べ、このような関係性を「Open Multi-Cloud Ecosystem」だとエリソン会長は主張する。
将来的にはクラウドサービスの相互接続はさらに進み、クラウド間の壁は崩壊するとも語る。すでにAzureだけでなく、AWSとの間でもInterconnectで相互接続する協業が進められている。「OCI以外のクラウドプロバイダーを使っている多くの顧客がおり、それらのクラウドの機能をOCIからでも使えるようにする必要がある」と言うのは、2日目の基調講演に登場した、OCI担当のクレイ・マグワイクEVPだ。
マグワイクEVPの基調講演では、OCIのコンソールから数回クリックするだけでAWSのアカウントとOCIのアカウントをリンクし、Interconnectを用いて双方の間を高速な仮想プライベートネットワークで接続するデモが行われた。接続後にOCIのコンソールでシェルを開けば、そこからAWS上のPostgreSQLのデータベースにストレスなくアクセスできる。さらにAWSの運用監視サービスである「CloudWatch」を用いて、AWSのインスタンスとOCIのインスタンスが同じ画面で監視でき、それぞれが同じような性能で稼働している様子も示された。
「これは素晴らしいことであり、このようなテクノロジーを使うことでユーザーはクラウドの移行や選択を容易に実現できるようになる」とマグワイクEVP。その上で重要なのは、二つのクラウド間でのデータ送信の料金がかからないことだと言う。このようなクラウド間の協業の取り組みは、デモンストレーションで終わらせるようなものではない。オラクルはこの領域のイノベーションを続けると約束する。「クラウド間の境界がなくなり、より深い統合が実現する。より多くのクラウドプロバイダーと同じ価値を提供できるようにする」。
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