Special Feature
ブロックチェーン普及の突破口になるか!? ジャスミーが目指す「インテル式」の市場開拓
2023/02/13 09:00
週刊BCN 2023年02月13日vol.1957掲載
米Gartner(ガートナー)の日本法人によれば、国内市場でブロックチェーンはハイプ・サイクルの「幻滅期」の底を脱し、社会実装のフェーズに移行し始めた(「週刊BCN」1940号参照)。ただし、ブロックチェーンを活用した汎用的なキラーソリューションはまだ市場に見当たらず、ブロックチェーンを中核技術とする「Web3」のバズワード化も本格的な市場拡大を後押しするには至っていない。そんな中、ジャスミーはハイブリッドワーク時代のニーズに応えたセキュアで生産性の高いPC活用を支えるソリューションを開発し、その拡販を足掛かりとしてブロックチェーン活用の裾野拡大を目指す。同社の設立メンバーで2018年11月から社長を務める佐藤一雅氏に、同社のビジョンや事業戦略を聞いた。
(取材・文/本多和幸 編集/藤岡 堯)
佐藤一雅 社長
ユーザーが安全に管理されているはずだと信じていたデータが、サイバー攻撃やシステムの欠陥、人為的な管理ミスなどによって流出してしまったり、ユーザーが望んでいないWebサイトに誘導するための広告・コンテンツ配信に利用されたりといった例は珍しくない。
こうした課題を解決すべく、デジタルサービスのユーザーである個人や企業など、データを本来の持ち主に帰属させた上で、セキュアに管理・活用できる環境を非中央集権型の仕組みで実現するというのがジャスミーの構想であり、そのための最適な技術基盤としてブロックチェーンに着目、採用したという経緯だ。まさにWeb3の基本的な考え方と共通するロジックと言える。
ジャスミーによるデータ管理・活用のためのサービスの柱は「Jasmy IoTプラットフォーム」で、そのコア技術が「Secure Knowledge Communicator」(SKC)と「Smart Guardian」(SG)だ(図参照)。
SKCは、データを本来の持ち主がコントロールできる環境をつくるための機能群となる。具体的には、データを所有者の意思に基づいてジャスミーのブロックチェーン上で分散管理・蓄積する機能、自身が保有するデータの授受を許諾したり、トレースしたりできる機能、そしてこれらの機能を利用するためのKYC(Know Your Customer、個人の識別と本人認証)機能などで構成される。
SGは、SKCを利用して作成されるIDにデバイスを簡単かつ安全にひもづけ、デバイスの持ち主だけが使用できる環境を実現する。例えばIoTデバイスが感知・測定したデータの送受信や遠隔操作のためのコマンドをセキュアに授受することを可能とする。また、独自のブロックチェーンと分散管理型ストレージの二重構造でセキュアにそれらのデータを保管・管理できる環境も提供しているという。
SGとSKCは特許申請中の独自技術だが、Jasmy IoTプラットフォームに採用しているブロックチェーン技術はオープンソースを活用したコンソーシアム型だという。随時最新のブロックチェーン技術を採用してサービスとしての最適化を図るというスタンスで、Jasmy IoTプラットフォームの差別化要素はSKCとSGであるのだろう。佐藤社長はこう語る。
「ブロックチェーンの黎明期は、ブロックチェーンエンジンそのものを差異化しようという考え方が市場でも支配的だったが、技術開発が進んで機能的な違いは小さくなっているし、インターオペラビリティ(相互運用性)も高まり、異なるブロックチェーン同士をスムーズに接続できるようになっている。どのブロックチェーンを使うかはそれほど重要ではなくなっており、ブロックチェーンを具体的なソリューションに活用しやすくするための仕組みづくりこそがジャスミーとして一番成果を出したいところだ」
しかし、そうしたビジネスを構築するにはある程度の時間がかかる。そこで短期的な戦略としては、まず自らがJasmy IoTプラットフォームを活用してパッケージソリューションを開発し、そのメリットと可能性を市場に問う。佐藤社長は「CPUメーカーとしての米Intel(インテル)の戦略にインスパイアされている」と話す。
「インテルはPCを普及させない限り自社のCPUは世界に広がらないと考えていて、以前は自前でPCもつくっていた。ブロックチェーンも同じ構図で、最初はプラットフォーマーが自ら最終製品・サービスを提供し、プラットフォームの価値を広く認知してもらう必要がある」
Jasmy IoTプラットフォームを活用したパッケージソリューションの第1弾として市場投入したのが「Jasmy Secure PC」だ。PCのセキュリティ対策や従業員の稼働状況の管理などを主な用途として想定する。
Secure PCは、管理対象の全PCにインストールする「エージェント」と、エージェントを管理する「マネージャー」という2種類のアプリケーションを組み合わせて使う。エージェントをインストールしたPCには、業務専用の暗号化されたドライブ「ゴーストドライブ」が生成される。ゴーストドライブは、「事前に設定したネットワークに接続する」「マネージャーアプリケーション経由で管理者から承認を得る」など、特定の条件をクリアしなければ使用できず、情報漏えいを抑止する効果が期待できる。
PC操作などに関するログデータを収集する機能も備える。収集されたログデータはハッシュ化(データをハッシュ関数で演算処理して不規則な文字列に変換すること)、匿名化され、Jasmy IoTプラットフォームのコンソーシアム型ブロックチェーンに書き込まれる。これによりログデータの信頼性を高めているという。
マネージャーは文字通り管理者向けの機能。管理対象PCの稼働状況などを詳細に把握できるほか、前述したようにゴーストドライブのアクセスを許可するなど、管理対象者のPCにダイレクトに制御コマンドを送信して遠隔操作できる。
ログデータの収集や可視化などをJasmy IoTプラットフォーム側のサーバーが担い、マネージャーはWebブラウザーで利用するかたちになるため、各従業員のPCにエージェントをインストールするだけで使い始めることができる。こうした手軽さと、ブロックチェーンを活用したセキュアなリモート環境のメリットを前面に押し出したい意向だ。
佐藤社長は「力を入れたいのが、ログデータを従業員の監視ではなく健康管理や生産性向上策を検討するためのデータとして活用してもらうこと。パートナー企業も巻き込んでソリューション開発を検討している」と話す。
法人向けIT市場の顧客との接点を広げ、サービスの認知度を高めるためのパートナーシップも拡大している。22年4月から、VAIOと連携してSecure PCのエージェントをインストールしたPCをDevice as a Service形式で提供している。22年11月にはクラウド勤怠管理システム「AKASHI」とのAPI連携も開始している。
また、ダイワボウ情報システムが取り扱いを本格化しており、販売体制の整備も進んでいる。「両社で半年ほどかけて売り方を議論し、そのフィードバックをプロダクトの改善にもつなげてきた」(佐藤社長)として、事業の成長を加速させたい考えだ。
Jasmy IoTプラットフォーム活用ソリューションの第2弾として、ブロックチェーン技術を使った個人情報活用サービス「Jasmy Personal Data Locker」(PDL)を提供している。導入企業は、顧客の個人情報を自社で取得・管理することなく、イベントやスポーツ観戦の入退場管理システム、アンケートシステムなどを構築できるほか、顧客の許諾を得てPDLに蓄積された個人情報や行動履歴データをマーケティングに活用することもできるという。
佐藤社長は「Secure PCは完全に法人向けだが、PDLはコンシューマーのデータが大量に蓄積されていき、より早いスピードでビジネスが成長する可能性もある。二つのソリューションを通してジャスミーの取り組んでいることの価値を広く理解してもらい、Jasmy IoTプラットフォームのエコシステム活性化にもつなげたい」と展望する。
(取材・文/本多和幸 編集/藤岡 堯)

Web3と共通する課題意識
ジャスミーが掲げるビジョンを端的に表現すれば「データの民主化を実現する」ことだという。人やモノ、サービスがインターネットでつながり、広くデジタルサービスが浸透するにつれ、発生するデータ量は増えていく。現状、こうしたデータの多くは巨大プラットフォーマーの中央集権型のシステムによって収集され、彼らの非常に強いイニシアティブの下で分析・活用されていることが新たな社会課題の要因になっているというのがジャスミーの問題意識だ。
ユーザーが安全に管理されているはずだと信じていたデータが、サイバー攻撃やシステムの欠陥、人為的な管理ミスなどによって流出してしまったり、ユーザーが望んでいないWebサイトに誘導するための広告・コンテンツ配信に利用されたりといった例は珍しくない。
こうした課題を解決すべく、デジタルサービスのユーザーである個人や企業など、データを本来の持ち主に帰属させた上で、セキュアに管理・活用できる環境を非中央集権型の仕組みで実現するというのがジャスミーの構想であり、そのための最適な技術基盤としてブロックチェーンに着目、採用したという経緯だ。まさにWeb3の基本的な考え方と共通するロジックと言える。
ジャスミーによるデータ管理・活用のためのサービスの柱は「Jasmy IoTプラットフォーム」で、そのコア技術が「Secure Knowledge Communicator」(SKC)と「Smart Guardian」(SG)だ(図参照)。

SKCは、データを本来の持ち主がコントロールできる環境をつくるための機能群となる。具体的には、データを所有者の意思に基づいてジャスミーのブロックチェーン上で分散管理・蓄積する機能、自身が保有するデータの授受を許諾したり、トレースしたりできる機能、そしてこれらの機能を利用するためのKYC(Know Your Customer、個人の識別と本人認証)機能などで構成される。
SGは、SKCを利用して作成されるIDにデバイスを簡単かつ安全にひもづけ、デバイスの持ち主だけが使用できる環境を実現する。例えばIoTデバイスが感知・測定したデータの送受信や遠隔操作のためのコマンドをセキュアに授受することを可能とする。また、独自のブロックチェーンと分散管理型ストレージの二重構造でセキュアにそれらのデータを保管・管理できる環境も提供しているという。
SGとSKCは特許申請中の独自技術だが、Jasmy IoTプラットフォームに採用しているブロックチェーン技術はオープンソースを活用したコンソーシアム型だという。随時最新のブロックチェーン技術を採用してサービスとしての最適化を図るというスタンスで、Jasmy IoTプラットフォームの差別化要素はSKCとSGであるのだろう。佐藤社長はこう語る。
「ブロックチェーンの黎明期は、ブロックチェーンエンジンそのものを差異化しようという考え方が市場でも支配的だったが、技術開発が進んで機能的な違いは小さくなっているし、インターオペラビリティ(相互運用性)も高まり、異なるブロックチェーン同士をスムーズに接続できるようになっている。どのブロックチェーンを使うかはそれほど重要ではなくなっており、ブロックチェーンを具体的なソリューションに活用しやすくするための仕組みづくりこそがジャスミーとして一番成果を出したいところだ」
セキュアなリモート環境を手軽に
Jasmy IoTプラットフォームは文字通りプラットフォームとしてのサービスを志向している。長期的には、さまざまなプレイヤーがJasmy IoTプラットフォーム上でサービスを構築し、ブロックチェーンを活用したサービスが世の中に浸透していく世界をつくるのが同社の目標だ。しかし、そうしたビジネスを構築するにはある程度の時間がかかる。そこで短期的な戦略としては、まず自らがJasmy IoTプラットフォームを活用してパッケージソリューションを開発し、そのメリットと可能性を市場に問う。佐藤社長は「CPUメーカーとしての米Intel(インテル)の戦略にインスパイアされている」と話す。
「インテルはPCを普及させない限り自社のCPUは世界に広がらないと考えていて、以前は自前でPCもつくっていた。ブロックチェーンも同じ構図で、最初はプラットフォーマーが自ら最終製品・サービスを提供し、プラットフォームの価値を広く認知してもらう必要がある」
Jasmy IoTプラットフォームを活用したパッケージソリューションの第1弾として市場投入したのが「Jasmy Secure PC」だ。PCのセキュリティ対策や従業員の稼働状況の管理などを主な用途として想定する。
Secure PCは、管理対象の全PCにインストールする「エージェント」と、エージェントを管理する「マネージャー」という2種類のアプリケーションを組み合わせて使う。エージェントをインストールしたPCには、業務専用の暗号化されたドライブ「ゴーストドライブ」が生成される。ゴーストドライブは、「事前に設定したネットワークに接続する」「マネージャーアプリケーション経由で管理者から承認を得る」など、特定の条件をクリアしなければ使用できず、情報漏えいを抑止する効果が期待できる。
PC操作などに関するログデータを収集する機能も備える。収集されたログデータはハッシュ化(データをハッシュ関数で演算処理して不規則な文字列に変換すること)、匿名化され、Jasmy IoTプラットフォームのコンソーシアム型ブロックチェーンに書き込まれる。これによりログデータの信頼性を高めているという。
マネージャーは文字通り管理者向けの機能。管理対象PCの稼働状況などを詳細に把握できるほか、前述したようにゴーストドライブのアクセスを許可するなど、管理対象者のPCにダイレクトに制御コマンドを送信して遠隔操作できる。
ログデータの収集や可視化などをJasmy IoTプラットフォーム側のサーバーが担い、マネージャーはWebブラウザーで利用するかたちになるため、各従業員のPCにエージェントをインストールするだけで使い始めることができる。こうした手軽さと、ブロックチェーンを活用したセキュアなリモート環境のメリットを前面に押し出したい意向だ。
顧客接点を広げるためのパートナー戦略
ただし、販売戦略上の課題もある。既存のプロダクトカテゴリーではIT資産管理製品などと重なる機能が多いように見えるが、「新しい技術を使って、従来製品にはない幅広い機能を網羅しているため、サービスの価値や導入効果を十分に説明しきれていない」と佐藤社長は話す。多機能をアピールするのではなく、ユーザーの具体的な課題に対応したソリューションとしての価値訴求を考えなければ、市場開拓のきっかけをつくることは難しいという実感があるようだ。佐藤社長は「力を入れたいのが、ログデータを従業員の監視ではなく健康管理や生産性向上策を検討するためのデータとして活用してもらうこと。パートナー企業も巻き込んでソリューション開発を検討している」と話す。
法人向けIT市場の顧客との接点を広げ、サービスの認知度を高めるためのパートナーシップも拡大している。22年4月から、VAIOと連携してSecure PCのエージェントをインストールしたPCをDevice as a Service形式で提供している。22年11月にはクラウド勤怠管理システム「AKASHI」とのAPI連携も開始している。
また、ダイワボウ情報システムが取り扱いを本格化しており、販売体制の整備も進んでいる。「両社で半年ほどかけて売り方を議論し、そのフィードバックをプロダクトの改善にもつなげてきた」(佐藤社長)として、事業の成長を加速させたい考えだ。
Jasmy IoTプラットフォーム活用ソリューションの第2弾として、ブロックチェーン技術を使った個人情報活用サービス「Jasmy Personal Data Locker」(PDL)を提供している。導入企業は、顧客の個人情報を自社で取得・管理することなく、イベントやスポーツ観戦の入退場管理システム、アンケートシステムなどを構築できるほか、顧客の許諾を得てPDLに蓄積された個人情報や行動履歴データをマーケティングに活用することもできるという。
佐藤社長は「Secure PCは完全に法人向けだが、PDLはコンシューマーのデータが大量に蓄積されていき、より早いスピードでビジネスが成長する可能性もある。二つのソリューションを通してジャスミーの取り組んでいることの価値を広く理解してもらい、Jasmy IoTプラットフォームのエコシステム活性化にもつなげたい」と展望する。
米Gartner(ガートナー)の日本法人によれば、国内市場でブロックチェーンはハイプ・サイクルの「幻滅期」の底を脱し、社会実装のフェーズに移行し始めた(「週刊BCN」1940号参照)。ただし、ブロックチェーンを活用した汎用的なキラーソリューションはまだ市場に見当たらず、ブロックチェーンを中核技術とする「Web3」のバズワード化も本格的な市場拡大を後押しするには至っていない。そんな中、ジャスミーはハイブリッドワーク時代のニーズに応えたセキュアで生産性の高いPC活用を支えるソリューションを開発し、その拡販を足掛かりとしてブロックチェーン活用の裾野拡大を目指す。同社の設立メンバーで2018年11月から社長を務める佐藤一雅氏に、同社のビジョンや事業戦略を聞いた。
(取材・文/本多和幸 編集/藤岡 堯)
佐藤一雅 社長
ユーザーが安全に管理されているはずだと信じていたデータが、サイバー攻撃やシステムの欠陥、人為的な管理ミスなどによって流出してしまったり、ユーザーが望んでいないWebサイトに誘導するための広告・コンテンツ配信に利用されたりといった例は珍しくない。
こうした課題を解決すべく、デジタルサービスのユーザーである個人や企業など、データを本来の持ち主に帰属させた上で、セキュアに管理・活用できる環境を非中央集権型の仕組みで実現するというのがジャスミーの構想であり、そのための最適な技術基盤としてブロックチェーンに着目、採用したという経緯だ。まさにWeb3の基本的な考え方と共通するロジックと言える。
ジャスミーによるデータ管理・活用のためのサービスの柱は「Jasmy IoTプラットフォーム」で、そのコア技術が「Secure Knowledge Communicator」(SKC)と「Smart Guardian」(SG)だ(図参照)。
SKCは、データを本来の持ち主がコントロールできる環境をつくるための機能群となる。具体的には、データを所有者の意思に基づいてジャスミーのブロックチェーン上で分散管理・蓄積する機能、自身が保有するデータの授受を許諾したり、トレースしたりできる機能、そしてこれらの機能を利用するためのKYC(Know Your Customer、個人の識別と本人認証)機能などで構成される。
SGは、SKCを利用して作成されるIDにデバイスを簡単かつ安全にひもづけ、デバイスの持ち主だけが使用できる環境を実現する。例えばIoTデバイスが感知・測定したデータの送受信や遠隔操作のためのコマンドをセキュアに授受することを可能とする。また、独自のブロックチェーンと分散管理型ストレージの二重構造でセキュアにそれらのデータを保管・管理できる環境も提供しているという。
SGとSKCは特許申請中の独自技術だが、Jasmy IoTプラットフォームに採用しているブロックチェーン技術はオープンソースを活用したコンソーシアム型だという。随時最新のブロックチェーン技術を採用してサービスとしての最適化を図るというスタンスで、Jasmy IoTプラットフォームの差別化要素はSKCとSGであるのだろう。佐藤社長はこう語る。
「ブロックチェーンの黎明期は、ブロックチェーンエンジンそのものを差異化しようという考え方が市場でも支配的だったが、技術開発が進んで機能的な違いは小さくなっているし、インターオペラビリティ(相互運用性)も高まり、異なるブロックチェーン同士をスムーズに接続できるようになっている。どのブロックチェーンを使うかはそれほど重要ではなくなっており、ブロックチェーンを具体的なソリューションに活用しやすくするための仕組みづくりこそがジャスミーとして一番成果を出したいところだ」
(取材・文/本多和幸 編集/藤岡 堯)

Web3と共通する課題意識
ジャスミーが掲げるビジョンを端的に表現すれば「データの民主化を実現する」ことだという。人やモノ、サービスがインターネットでつながり、広くデジタルサービスが浸透するにつれ、発生するデータ量は増えていく。現状、こうしたデータの多くは巨大プラットフォーマーの中央集権型のシステムによって収集され、彼らの非常に強いイニシアティブの下で分析・活用されていることが新たな社会課題の要因になっているというのがジャスミーの問題意識だ。
ユーザーが安全に管理されているはずだと信じていたデータが、サイバー攻撃やシステムの欠陥、人為的な管理ミスなどによって流出してしまったり、ユーザーが望んでいないWebサイトに誘導するための広告・コンテンツ配信に利用されたりといった例は珍しくない。
こうした課題を解決すべく、デジタルサービスのユーザーである個人や企業など、データを本来の持ち主に帰属させた上で、セキュアに管理・活用できる環境を非中央集権型の仕組みで実現するというのがジャスミーの構想であり、そのための最適な技術基盤としてブロックチェーンに着目、採用したという経緯だ。まさにWeb3の基本的な考え方と共通するロジックと言える。
ジャスミーによるデータ管理・活用のためのサービスの柱は「Jasmy IoTプラットフォーム」で、そのコア技術が「Secure Knowledge Communicator」(SKC)と「Smart Guardian」(SG)だ(図参照)。

SKCは、データを本来の持ち主がコントロールできる環境をつくるための機能群となる。具体的には、データを所有者の意思に基づいてジャスミーのブロックチェーン上で分散管理・蓄積する機能、自身が保有するデータの授受を許諾したり、トレースしたりできる機能、そしてこれらの機能を利用するためのKYC(Know Your Customer、個人の識別と本人認証)機能などで構成される。
SGは、SKCを利用して作成されるIDにデバイスを簡単かつ安全にひもづけ、デバイスの持ち主だけが使用できる環境を実現する。例えばIoTデバイスが感知・測定したデータの送受信や遠隔操作のためのコマンドをセキュアに授受することを可能とする。また、独自のブロックチェーンと分散管理型ストレージの二重構造でセキュアにそれらのデータを保管・管理できる環境も提供しているという。
SGとSKCは特許申請中の独自技術だが、Jasmy IoTプラットフォームに採用しているブロックチェーン技術はオープンソースを活用したコンソーシアム型だという。随時最新のブロックチェーン技術を採用してサービスとしての最適化を図るというスタンスで、Jasmy IoTプラットフォームの差別化要素はSKCとSGであるのだろう。佐藤社長はこう語る。
「ブロックチェーンの黎明期は、ブロックチェーンエンジンそのものを差異化しようという考え方が市場でも支配的だったが、技術開発が進んで機能的な違いは小さくなっているし、インターオペラビリティ(相互運用性)も高まり、異なるブロックチェーン同士をスムーズに接続できるようになっている。どのブロックチェーンを使うかはそれほど重要ではなくなっており、ブロックチェーンを具体的なソリューションに活用しやすくするための仕組みづくりこそがジャスミーとして一番成果を出したいところだ」
この記事の続き >>
- セキュアなリモート環境を手軽に
- 顧客接点を広げるためのパートナー戦略
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