Special Feature
需要が過熱するNVIDIA GPU 国内にも押し寄せる「AI用ITインフラ」の波
2023/09/18 09:00
週刊BCN 2023年09月18日vol.1985掲載
「ChatGPT」に代表される生成AIが注目を集めるようになった2022年来、AIモデルの構築に欠かせないGPUの需要が急速に高まっている。中でも、最大手である米NVIDIA(エヌビディア)の高性能製品は供給が追いつかない状況が続いており、先進企業やクラウド事業者の間で国際的な“争奪戦”が繰り広げられている。沸き上がるAIブームをどのように今後のビジネス拡大につなげるか、エヌビディア製品を扱う各社の取り組みを取材した。
(取材・文/堀 茜、安藤章司、齋藤秀平 編集/日高 彰)
マクニカ 森 裕介 部長
森部長は「生成AIを活用したいという動きが活発化する中で、GPUの需要が高まり、世界的にリソースの取り合いのような状況になってきている」と説明する。米OpenAI(オープンエーアイ)は大規模言語モデル「GPT-4」の構築に数万基のGPUを利用したと言われているように、生成AIの開発・運用には莫大な規模のGPUリソースを必要とする。
生成AIの登場によってAI向けのIT基盤に対して投資する企業が増加したのと同時に、企業が投資を決めるまでの期間が短くなっていることも特徴として挙げられるという。「通常であれば、大きい投資は時間をかけて決定する企業が多いが、GPUに関しては投資決断までの期間が短くなり、スピードが相当早くなってきている」(森部長)。GPUの需給ひっ迫は深刻化しつつあり、できるだけ早く発注しないと、納入までの時間が延びてしまう。AIを使ったサービス提供が遅れ、ビジネスの損失につながるという危機感から、AI活用を検討する企業は思い切った判断を迫られているようだ。
さくらインターネット 舘野正明 副社長執行役員
さくらインターネットは23年6月、経産省からクラウドプログラムの事業者に認定され、エヌビディアのデータセンター(DC)向け高性能GPU「H100 Tensor コア GPU」2000基あまりを駆使したAI向け大規模GPUクラウド基盤を整備することを明らかにした。国から2分の1の助成を受けて総額130億円の投資を行い、24年1月から順次サービスを始める予定だ。国内には生成AIの開発に向けたGPUコンピューティング基盤が手薄であることから、国の支援を受けつつ、業界に先駆けてGPUクラウドサービスを立ち上げることでビジネスチャンスをつかむ。なお、さくらインターネットのほかにソフトバンクも、AI向けのGPUクラウドサービスを提供する事業者として認定されており、53億円の助成を受けてDC構築に総額約200億円を投じる予定だ。
エヌビディアが提供するデータセンター向け製品の「H100 CNX」。
AI用GPUの「H100」と高速ネットワークアダプターをあわせて搭載する
さくらインターネットが、クラウドプログラム参画を決めた背景には、政府内で国内でもクラウド事業者を育成すべきとの意向を捉えたことが挙げられる。現在、政府共通のクラウドサービスとしてデジタル庁がガバメントクラウドの4事業者を選定しているが、いずれもハイパースケーラーと呼ばれる外資の大手クラウドベンダーであり、国内ベンダーの選択肢を確保すべきとする議論が起こっていた。それと時を同じくして生成AIが登場。さくらインターネットでは、国内AI基盤の市場は26年度に2200億円規模に拡大するとみており、「国内のあらゆる産業の国際競争力を高めるのに役立つ」(舘野正明・副社長執行役員)ことから、十分に商機が期待できるとする。
エヌビディア日本法人 澤井理紀 テクニカルマーケティングマネージャー
また、AIに適したハードウェアを提供するだけでなく、AIモデルの開発や運用に必要なソフトウェア製品をそろえている点も強みに挙げる。市場で利用可能となっているAIモデルを企業独自のデータでカスタマイズして精度を高めたり、誤った情報の出力や悪意のある指示の実行を防いだりできるフレームワークを用意しており、企業が実際のビジネスにAIを活用する場面で発生する課題に対応しやすいことも、同社がAI市場で支持を集める理由になっているという。
日本法人の岩永秀紀・パートナー事業部事業部長は「AIというと、日本は周回遅れ的なところがあったが、生成AIに関しては急速にキャッチアップしている」と話す。生成AIが注目を集めて以降、クラウドサービス事業者に加え、自社でAIの開発・運用基盤の構築を目指してGPUを導入する企業も増え、従来に比べて案件の大規模化が進んでいる。具体的な数字は明らかにしていないが、23年5~7月期の国内市場の売上高は過去最高を達成したという。
エヌビディア日本法人 岩永秀紀 事業部長
岩永事業部長によると、日本法人のビジネスは、これまでにいくつかの段階を踏んできた。チップやグラフィックボードを単体で売る第1段階、GPU搭載サーバーなどのシステムを販売する第2段階を経て、現在はソフトウェアやクラウドサービスなどを含めて提供する第3段階に変わってきている。
それに伴い売り方やパートナーとの関係も変化している。これまでは大学の研究室や企業の研究開発部門などに販売店が小規模なシステムを販売していたが、大規模な引き合いが増加したことで、「ハードウェアだけでなく、その上にある開発環境やフレームワークを含めてフルスタックで提案しており、販売店だけではなし得ないビジネスになりつつある」(岩永事業部長)。
ビジネスが「1社(のパートナー)だけでは完結できない」(岩永事業部長)状況になる中、日本法人としては、パートナーの数をとにかく増やす路線は取らず、既存のパートナーにはない顧客基盤やスキルを持ったITベンダーをパートナーとして迎えたいとする。さらに、今後は導入に必要なSIやコンサルティングといった部分がより必要になるとみており、それぞれの領域で強みを持ったパートナー同士の協力関係の構築にも注力する方針だ。
高まる需要に対し、エヌビディアは各サプライヤーと協力して継続的に供給体制を組み直したり、新製品を発表したりして対応している。既に世界中でエヌビディアのGPUが奪い合いになる中、安定的に国内市場に供給できるかどうかは、日本法人の成長や、国内でのAI活用の推進に向けたかぎになりそうだ。
また、同社はGPUに加えて、エヌビディアが20年に買収したMellanox(メラノックス)ブランドのネットワーク製品を以前から取り扱ってきたことを、販売代理店としての強みとしてアピールしたい考えだ。エヌビディアがフォーカスするビジネス領域がGPU単体からネットワークを含むDC全体に拡大するのに合わせ、マクニカもAIを導入しやすくなるような環境づくりでパートナー企業や顧客を支援していくとする。
マクニカの森部長は、エヌビディア製品のビジネス拡大の戦略として「パートナー企業とエヌビディアの機器を当社が統合し、売りやすいかたちで広げていきたい」と見通しを語る。同社は、AIの基盤となるGPU製品は、汎用型サーバーなどと異なり、エンドユーザー向けに提案の仕方が難しいのが課題となると分析。AIが研究や開発といった限られた用途から、民間企業に実サービスとして取り入れられていく流れの中で、ハード単体ではなく、ソフトウェアと組み合わせたソリューションとして提案していく。
森部長は「まずはエヌビディアと一緒に当社が動いて、リセラーパートナー、エンドユーザー向けに含めて需要を創造していく。エンタープライズ向けのビジネスは当社だけでは難しく、パートナーの役割は大きい。パートナーの顧客基盤を生かして、(AIの需要をつかむことで)パートナー企業がビジネスを拡大していける方法に巻き込んでいきたい」と展望する。
さくらインターネット 須藤武文 副部長
須藤武文・クラウド事業本部副部長は、「GPUサーバーを運用してみると、その消費電力の大きさに驚く」とし、通常の業務アプリ用サーバーとは比較にならない電力が必要になると指摘する。業務アプリ用で使う場合、ラックあたりに必要な電源は2~4kVA程度で済むが、「最新のGPUを使って生成AIを快適に稼働させるにはラックあたり少なくとも十数kVAは要る」(須藤副部長)といい、数倍の電力供給と冷却能力が求められる。
国内で最新GPUを2000基あまり実装し、処理速度を示す単位のFLOPSで2exaFLOPSを実現している国内ベンダーはなく、「まずは生成AIの活用で必要となる計算資源を国内に確保するのが喫緊の課題」(同)と強調。その上で、自社でDC設備を持っている強みを生かし、生成AI向けに規格外のスペックを実現することで、自社の競争優位性の発揮を目指す。外資の大手クラウドベンダーが参入するなかでも、「市場が立ち上がったばかりの生成AIの分野であれば、国内で一定の市場シェアを確保できる」(同)と、自信をのぞかせる。
(取材・文/堀 茜、安藤章司、齋藤秀平 編集/日高 彰)

販売の現場では「前年比倍増以上」の勢い
「この数カ月で劇的にビジネスが動き始めているような感触だ」。ディストリビューターとしてエヌビディア製品を国内市場で販売するマクニカクラビスカンパニービジネスソリューション第2統括部の森裕介・営業第1部長はこのように述べ、22年11月のChatGPT登場以降、エヌビディアのGPUやAI関連製品の動きが急激に活発化しているとの認識を示した。特にハイエンドのGPUの需要が高まっており、次第に納入までのリードタイムも長くなる傾向にある。23年度に入ってまだ半年足らずだが、同社は本年度のエヌビディア製品の売り上げについて前年度比2倍以上を確実視しているという。
森部長は「生成AIを活用したいという動きが活発化する中で、GPUの需要が高まり、世界的にリソースの取り合いのような状況になってきている」と説明する。米OpenAI(オープンエーアイ)は大規模言語モデル「GPT-4」の構築に数万基のGPUを利用したと言われているように、生成AIの開発・運用には莫大な規模のGPUリソースを必要とする。
生成AIの登場によってAI向けのIT基盤に対して投資する企業が増加したのと同時に、企業が投資を決めるまでの期間が短くなっていることも特徴として挙げられるという。「通常であれば、大きい投資は時間をかけて決定する企業が多いが、GPUに関しては投資決断までの期間が短くなり、スピードが相当早くなってきている」(森部長)。GPUの需給ひっ迫は深刻化しつつあり、できるだけ早く発注しないと、納入までの時間が延びてしまう。AIを使ったサービス提供が遅れ、ビジネスの損失につながるという危機感から、AI活用を検討する企業は思い切った判断を迫られているようだ。
国は「特定重要物資」と位置づけ
世界的なGPU不足を受けて、政府もコンピューティングリソースの確保に動き出した。22年の通常国会で成立した経済安全保障推進法を受け、経済産業省は工作機械や半導体、蓄電池などと並んで、「クラウドプログラム」を特定重要物資に指定。国内の事業者によるクラウド基盤の安定供給を確保する目的で、クラウド技術の開発やその環境整備に助成金を交付する取り組みを23年1月に発表した。
さくらインターネットは23年6月、経産省からクラウドプログラムの事業者に認定され、エヌビディアのデータセンター(DC)向け高性能GPU「H100 Tensor コア GPU」2000基あまりを駆使したAI向け大規模GPUクラウド基盤を整備することを明らかにした。国から2分の1の助成を受けて総額130億円の投資を行い、24年1月から順次サービスを始める予定だ。国内には生成AIの開発に向けたGPUコンピューティング基盤が手薄であることから、国の支援を受けつつ、業界に先駆けてGPUクラウドサービスを立ち上げることでビジネスチャンスをつかむ。なお、さくらインターネットのほかにソフトバンクも、AI向けのGPUクラウドサービスを提供する事業者として認定されており、53億円の助成を受けてDC構築に総額約200億円を投じる予定だ。
AI用GPUの「H100」と高速ネットワークアダプターをあわせて搭載する
さくらインターネットが、クラウドプログラム参画を決めた背景には、政府内で国内でもクラウド事業者を育成すべきとの意向を捉えたことが挙げられる。現在、政府共通のクラウドサービスとしてデジタル庁がガバメントクラウドの4事業者を選定しているが、いずれもハイパースケーラーと呼ばれる外資の大手クラウドベンダーであり、国内ベンダーの選択肢を確保すべきとする議論が起こっていた。それと時を同じくして生成AIが登場。さくらインターネットでは、国内AI基盤の市場は26年度に2200億円規模に拡大するとみており、「国内のあらゆる産業の国際競争力を高めるのに役立つ」(舘野正明・副社長執行役員)ことから、十分に商機が期待できるとする。
案件は大規模化傾向 SI・コンサルがより重要に
エヌビディアによると、ブームの火付け役となったオープンエーアイをはじめ、グローバルで1600以上の企業が生成AIの開発やサービスの提供にエヌビディアのGPUを活用しているという。日本法人の澤井理紀・テクニカルマーケティングマネージャーは「数十億から数千億のパラメーターがある生成AIのモデルをトレーニングしたり、ファインチューニングしたりするには膨大な計算能力が必要になり、その計算能力を賄うのがGPUだ」とした上で、「エヌビディアのGPUは、AIの処理に最適化されており、生成AIモデルのトレーニングや実行において高い演算能力を提供できる」と優位性を説明する。
また、AIに適したハードウェアを提供するだけでなく、AIモデルの開発や運用に必要なソフトウェア製品をそろえている点も強みに挙げる。市場で利用可能となっているAIモデルを企業独自のデータでカスタマイズして精度を高めたり、誤った情報の出力や悪意のある指示の実行を防いだりできるフレームワークを用意しており、企業が実際のビジネスにAIを活用する場面で発生する課題に対応しやすいことも、同社がAI市場で支持を集める理由になっているという。
日本法人の岩永秀紀・パートナー事業部事業部長は「AIというと、日本は周回遅れ的なところがあったが、生成AIに関しては急速にキャッチアップしている」と話す。生成AIが注目を集めて以降、クラウドサービス事業者に加え、自社でAIの開発・運用基盤の構築を目指してGPUを導入する企業も増え、従来に比べて案件の大規模化が進んでいる。具体的な数字は明らかにしていないが、23年5~7月期の国内市場の売上高は過去最高を達成したという。
岩永事業部長によると、日本法人のビジネスは、これまでにいくつかの段階を踏んできた。チップやグラフィックボードを単体で売る第1段階、GPU搭載サーバーなどのシステムを販売する第2段階を経て、現在はソフトウェアやクラウドサービスなどを含めて提供する第3段階に変わってきている。
それに伴い売り方やパートナーとの関係も変化している。これまでは大学の研究室や企業の研究開発部門などに販売店が小規模なシステムを販売していたが、大規模な引き合いが増加したことで、「ハードウェアだけでなく、その上にある開発環境やフレームワークを含めてフルスタックで提案しており、販売店だけではなし得ないビジネスになりつつある」(岩永事業部長)。
ビジネスが「1社(のパートナー)だけでは完結できない」(岩永事業部長)状況になる中、日本法人としては、パートナーの数をとにかく増やす路線は取らず、既存のパートナーにはない顧客基盤やスキルを持ったITベンダーをパートナーとして迎えたいとする。さらに、今後は導入に必要なSIやコンサルティングといった部分がより必要になるとみており、それぞれの領域で強みを持ったパートナー同士の協力関係の構築にも注力する方針だ。
高まる需要に対し、エヌビディアは各サプライヤーと協力して継続的に供給体制を組み直したり、新製品を発表したりして対応している。既に世界中でエヌビディアのGPUが奪い合いになる中、安定的に国内市場に供給できるかどうかは、日本法人の成長や、国内でのAI活用の推進に向けたかぎになりそうだ。
実ビジネスへのAI導入をいかに支援するか
顧客層が研究機関などから企業の事業部門へと広がる中、販売パートナーもそれに対応する動きを見せている。マクニカでは、自社へのAI基盤の導入を検討する企業向けに、エヌビディアが提供する開発環境上で最新のAIソリューションを無償で検証できるサポートプログラム「AI TRY NOW PROGRAM」を5月から開始している。AIの開発・運用や、産業用デジタルツイン構築支援製品「Omniverse」、エヌビディアパートナーが提供する病理画像解析・創薬などのソリューションを本番環境に近いかたちでテスト可能で、導入にあたってパフォーマンスや機能が十分であるかをチェックすることができる。また、同社はGPUに加えて、エヌビディアが20年に買収したMellanox(メラノックス)ブランドのネットワーク製品を以前から取り扱ってきたことを、販売代理店としての強みとしてアピールしたい考えだ。エヌビディアがフォーカスするビジネス領域がGPU単体からネットワークを含むDC全体に拡大するのに合わせ、マクニカもAIを導入しやすくなるような環境づくりでパートナー企業や顧客を支援していくとする。
マクニカの森部長は、エヌビディア製品のビジネス拡大の戦略として「パートナー企業とエヌビディアの機器を当社が統合し、売りやすいかたちで広げていきたい」と見通しを語る。同社は、AIの基盤となるGPU製品は、汎用型サーバーなどと異なり、エンドユーザー向けに提案の仕方が難しいのが課題となると分析。AIが研究や開発といった限られた用途から、民間企業に実サービスとして取り入れられていく流れの中で、ハード単体ではなく、ソフトウェアと組み合わせたソリューションとして提案していく。
森部長は「まずはエヌビディアと一緒に当社が動いて、リセラーパートナー、エンドユーザー向けに含めて需要を創造していく。エンタープライズ向けのビジネスは当社だけでは難しく、パートナーの役割は大きい。パートナーの顧客基盤を生かして、(AIの需要をつかむことで)パートナー企業がビジネスを拡大していける方法に巻き込んでいきたい」と展望する。
“高火力”サーバー運用のノウハウ生かす
さくらインターネットは、北海道の冷涼な外気でサーバーなどの機器を冷却することが可能な石狩DCを運用しており、GPUクラウドもここで運用することを想定している。また、同社は15年ごろから機械学習やデータ解析用途にGPUサーバーを活用した“高火力コンピューティング”のサービスを提供しており、ここで培った運用ノウハウをGPUクラウドに応用できると踏む。高火力コンピューティングはGPUサーバーのベアメタル(サーバー機器)の貸し出しから始まったが、今回は当初からクラウドサービスとして設計しているのが違い。
須藤武文・クラウド事業本部副部長は、「GPUサーバーを運用してみると、その消費電力の大きさに驚く」とし、通常の業務アプリ用サーバーとは比較にならない電力が必要になると指摘する。業務アプリ用で使う場合、ラックあたりに必要な電源は2~4kVA程度で済むが、「最新のGPUを使って生成AIを快適に稼働させるにはラックあたり少なくとも十数kVAは要る」(須藤副部長)といい、数倍の電力供給と冷却能力が求められる。
国内で最新GPUを2000基あまり実装し、処理速度を示す単位のFLOPSで2exaFLOPSを実現している国内ベンダーはなく、「まずは生成AIの活用で必要となる計算資源を国内に確保するのが喫緊の課題」(同)と強調。その上で、自社でDC設備を持っている強みを生かし、生成AI向けに規格外のスペックを実現することで、自社の競争優位性の発揮を目指す。外資の大手クラウドベンダーが参入するなかでも、「市場が立ち上がったばかりの生成AIの分野であれば、国内で一定の市場シェアを確保できる」(同)と、自信をのぞかせる。
「ChatGPT」に代表される生成AIが注目を集めるようになった2022年来、AIモデルの構築に欠かせないGPUの需要が急速に高まっている。中でも、最大手である米NVIDIA(エヌビディア)の高性能製品は供給が追いつかない状況が続いており、先進企業やクラウド事業者の間で国際的な“争奪戦”が繰り広げられている。沸き上がるAIブームをどのように今後のビジネス拡大につなげるか、エヌビディア製品を扱う各社の取り組みを取材した。
(取材・文/堀 茜、安藤章司、齋藤秀平 編集/日高 彰)
マクニカ 森 裕介 部長
森部長は「生成AIを活用したいという動きが活発化する中で、GPUの需要が高まり、世界的にリソースの取り合いのような状況になってきている」と説明する。米OpenAI(オープンエーアイ)は大規模言語モデル「GPT-4」の構築に数万基のGPUを利用したと言われているように、生成AIの開発・運用には莫大な規模のGPUリソースを必要とする。
生成AIの登場によってAI向けのIT基盤に対して投資する企業が増加したのと同時に、企業が投資を決めるまでの期間が短くなっていることも特徴として挙げられるという。「通常であれば、大きい投資は時間をかけて決定する企業が多いが、GPUに関しては投資決断までの期間が短くなり、スピードが相当早くなってきている」(森部長)。GPUの需給ひっ迫は深刻化しつつあり、できるだけ早く発注しないと、納入までの時間が延びてしまう。AIを使ったサービス提供が遅れ、ビジネスの損失につながるという危機感から、AI活用を検討する企業は思い切った判断を迫られているようだ。
(取材・文/堀 茜、安藤章司、齋藤秀平 編集/日高 彰)

販売の現場では「前年比倍増以上」の勢い
「この数カ月で劇的にビジネスが動き始めているような感触だ」。ディストリビューターとしてエヌビディア製品を国内市場で販売するマクニカクラビスカンパニービジネスソリューション第2統括部の森裕介・営業第1部長はこのように述べ、22年11月のChatGPT登場以降、エヌビディアのGPUやAI関連製品の動きが急激に活発化しているとの認識を示した。特にハイエンドのGPUの需要が高まっており、次第に納入までのリードタイムも長くなる傾向にある。23年度に入ってまだ半年足らずだが、同社は本年度のエヌビディア製品の売り上げについて前年度比2倍以上を確実視しているという。
森部長は「生成AIを活用したいという動きが活発化する中で、GPUの需要が高まり、世界的にリソースの取り合いのような状況になってきている」と説明する。米OpenAI(オープンエーアイ)は大規模言語モデル「GPT-4」の構築に数万基のGPUを利用したと言われているように、生成AIの開発・運用には莫大な規模のGPUリソースを必要とする。
生成AIの登場によってAI向けのIT基盤に対して投資する企業が増加したのと同時に、企業が投資を決めるまでの期間が短くなっていることも特徴として挙げられるという。「通常であれば、大きい投資は時間をかけて決定する企業が多いが、GPUに関しては投資決断までの期間が短くなり、スピードが相当早くなってきている」(森部長)。GPUの需給ひっ迫は深刻化しつつあり、できるだけ早く発注しないと、納入までの時間が延びてしまう。AIを使ったサービス提供が遅れ、ビジネスの損失につながるという危機感から、AI活用を検討する企業は思い切った判断を迫られているようだ。
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- 国は「特定重要物資」と位置づけ
- 案件は大規模化傾向 SI・コンサルがより重要に
- 実ビジネスへのAI導入をいかに支援するか
- “高火力”サーバー運用のノウハウ生かす
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