――営業DXサービス「Sansan」の2023年の手応えは。
コロナ禍を機に、単なる名刺管理ではなく、営業を強くするデータベースとしての価値を訴求し、新機能もリリースした。それらの成果が表れた。名刺を入り口に営業DXに取り組みたいとの引き合いや成約が大部分になり、サービスの位置づけを変えられた。特に23年に発表した新規顧客開拓機能は、SMB層に刺さる手応えを得られた。
共同創業者・取締役COO 富岡 圭
――請求書管理サービス「Bill One」の状況は。
インボイス制度を追い風に、想定以上に成長できた。ただ、もともとインボイス制度への対応を目的としたサービスではなく、あらゆる企業で求められる月次決算を加速させるのが価値の本質だ。その意味ではまだ顧客を獲得しきれていない。
――24年の目標は。
全社の売上成長率30%を目指す。Sansanでは、既存顧客でのアップセルを進めるとともに、新たな顧客の獲得も目指す。まだ単なる名刺管理サービスとの認識があるため、営業を強くし、収益の向上に寄与できることを訴える。Bill Oneでは、インボイス制度の対象となる業務について、効率化できていない企業は多いため、その需要をつかみたい。また、23年に発表したBill Oneビジネスカードはフィンテックの領域に進出する第一歩だ。まだ立ち上げ時期のため、その有用性を示し、インボイス制度対応以外の価値も訴求するのは大きなテーマだ。
大企業を意識した新機能を検討
――今後のSansanの機能拡充の方向性は。
機能のアップデートには期待してもらいたい。現在、主に大企業の取り込みを念頭に、社内のコラボレーションを促進する機能を検討している。具体的には、社内電話帳のようなものと組み合わせて、必要な知見を持つ社内の人材をすぐに見つけられるようなイメージだ。名刺は社外との接点として使われるが、社内でも活用できるようにしたい。名刺の情報は、社内データベースの役割を果たすとみている。獲得履歴から自社の社員の得意な分野が分かるし、名刺の変遷をたどれば相手の経歴を把握することもできるからだ。
――パートナー戦略はどう進めるか。
各プロダクトの機能アップデートを進める中で、既存パートナーと提供価値や売り方の歩調を合わせるようにする。それと同時に新規パートナーの開拓も進める。23年は自治体への取り組みを進めるための協業があった。得意領域を持つパートナーとのチャレンジは継続したい。Sansanの新規顧客を開拓する機能は、特に大企業では「Salesforce」のような営業支援システムと統合したいとのニーズがある。これからはSIerとのビジネスも重要になる。