Special Feature
「STATION Ai」が目指すイノベーション創出 日本最大級のスタートアップ拠点
2025/03/03 09:00
週刊BCN 2025年03月03日vol.2049掲載
国内最大規模のスタートアップ拠点「STATION Ai(ステーションエーアイ)」が2024年10月、名古屋市にオープンした。政府がスタートアップ支援策を強化するなど、国を挙げて新しい産業の創出に取り組む中、愛知県に誕生した新施設が注目を集めている。スタートアップと地元企業などが一カ所に集まることで、日常的にイノベーションを生み出していこうという試み。IT企業も多く入居し、ビジネスチャンス拡大を目指す。愛知県をグローバルのスタートアップ集積地に育てる取り組みの狙いと現状を紹介する。
(取材・文/堀 茜)
愛知県がスタートアップ支援を政策として展開し始めたのは、18年。自動車産業を中心とした製造業が基幹産業として盛んなエリアで、スタートアップとの協業により既存産業を盛り上げたいという狙いがあった。スタートアップ側には、ビジネス拡大に向けたエコシステムを構築しやすい環境がメリットとしてある。愛知県経済産業局スタートアップ推進課の金丸良・主査は「東京で起業するスタートアップが多いのが現状だが、事業会社が多い愛知は事業を成長させるためのメリットが大きい地域だ」とする。
愛知県経済産業局
金丸 良 主査
STATION Aiについて、愛知県はスタートアップが成長するために既存産業の力を活用し、既存産業がより魅力的な事業にアップデートするためにスタートアップの力を活用するという相互の関係を生む場と位置付けている。多様なバックグラウンド、技術、価値観を持った人が互いに持つものを持ち寄ることで新しいビジネスを生み出すことを促していきたいとする。「イノベーションを起こしたいと思っている人たちが集まるシンボリックな場所」(金丸主査)と期待を寄せる。スタートアップが多く集まっていることに加え、パートナー企業として地元企業が多く入居している点がSTATION Aiの特徴だ。金丸主査は「『スタートアップとの連携で新規事業を生み出したい』など、パートナー企業の期待感は大きい」と感じているという。
愛知県はSTATION Aiを起点に、愛知をグローバルのスタートアップ集積地として発展させたいと展望する。日本の人口減少が進み、市場の縮小が見込まれる中、「グローバルで市場を取れるような新ビジネスを生み出さないといけない」(金丸主査)と語る。県がつながりのある海外の研究機関や企業をSTATION Aiに招くなどして、産業創出の拠点として活用していく方針だ。
大規模なスタートアップイベント「TechGALA Japan」。
STATION Aiも会場の一つとなり多くの人が来場した
STATION Ai
佐橋宏隆 社長
施設内は、個室を除いて入居する企業同士が気軽に話せるオープンな設計になっており、周りの企業と自然に会話が生まれるようなつくりになっている。スタートアップ約500社のうち、愛知県内の企業が3割、東京が4割、残りがそれ以外のエリアという地域構成になっている。同社は、愛知で起業する人を増やすため起業支援プログラムを展開。地元での起業を促すと共に、エリア外からスタートアップを誘致するという両面で拠点の充実を図っている。
スタートアップ企業にとってのメリットとして、会社のステージに合わせた課題の支援策をそろえていることや、東海地域の市場を開拓するために、顧客を紹介するマッチングなど、「事業成長のための『仕掛け』がSTATION Aiにはそろっている」(佐橋社長)とアピールする。また、パートナー企業に向けても、新規ビジネスを生み出せるスタートアップとの出会いがスムーズになるようマッチングを積極的にサポートしている。イベントも日常的に施設内で開催している。事業会社とスタートアップによる協業の芽も続々生まれつつある。
入居するスタートアップから特に好評な支援が、採用面のサポートだ。地方ではスタートアップが採用に苦労するケースが多いことから、同社が有料職業紹介事業の免許を取得し求人を紹介したり、HR系の事業者と連携しスタートアップが求めるエンジニアなどの採用につなげたりしている。
同社は、STATION Aiをオープンイノベーションを生み出すハブとして育てることを目指し、スタートアップの集積を29年に1000社にすることを目標に掲げる。愛知県と連携し、海外企業にもアプローチを強化する考えで、佐橋社長は「スタートアップと協業したいならSTATION Aiを訪れようという場にしていきたい」と力を込める。
匠技研工業
前田将太 社長
本社は東京だが、STATION Aiの開業に合わせて同施設内に名古屋支店を設けた。前田将太社長は「当社の売り上げを都道府県別に見ると、愛知県が1位だった。静岡県、岐阜県の顧客も多い。支店を構えることは、東海エリアで拡販に注力するというメッセージになる」と説明する。愛知県を中心とした中部地域での拡販にあたり、「製造業全体を変革するには間接的なステークホルダーを巻き込みながら進めた方がいい」(前田社長)と判断。エリアの自治体や金融機関とのつながりを求めていた点も、支店開設を後押しした。
STATION Aiでは固定席を契約しており、前田社長や他の社員が交代で利用している。自席の斜め前にメガバンクの席があり、顧客を紹介してもらったり、融資の相談に乗ってもらったりとつながりを強めている。また、地元企業とつながりの深い信用金庫と一緒に、製造業の中小企業を6~7社回って営業をしたこともある。前田社長は「(他の入居企業と)物理的な空間が近く、自然に会話が生まれている。STATION Aiの環境を大いに活用させてもらっている」と語る。
2月末には、イベントスペースを貸し切って、顧客の成功事例などを紹介するユーザー会を開催し、ソリューションの認知度向上を図った。STATION Aiは地元企業から注目度が高く、「一度行ってみたい」という声も多かったことから、会場にすることでより多くの企業を集められるという利点もあった。
同社はSTATION Ai開業前の24年9月、愛知県から次世代ユニコーンの創出を目指すビジネスコンテスト「AICHI NEXT UNICORN LEAGUE」で匠フォースを発表し、優勝している。前田社長は「顧客に価値を提供することで事業を伸ばし、応援してもらった愛知県や中部・東海地域に貢献していきたい」と展望する。
マイクロリンク
久野尚博 社長
久野尚博社長は、「入居してみて、スタートアップが必死にやっている姿、オープンイノベーションを生み出そうと多くの企業が連携する姿に刺激を受けている」と語る。交流イベントが数多く開かれ、自分たちから求めていなくても、STATION Aiのスタッフから相性が良さそうなスタートアップを紹介してもらうことも多い。これまで接点がなかった企業との出会いが、新規顧客の開拓につながるという手応えを感じている。イノベーションという意味では、自社の若手エンジニアがスタートアップの技術者と交流することで新しいアイデアを思いつくような効果も期待しているという。久野社長は「ここにしかない価値は、いろいろな企業と日常的に関わりが持てる点だ」と評価する。
製造業のDXを支援してきた同社では、今後AIの活用が不可欠だとみており、「AI関連の企業との協業も模索したい」(久野社長)と展望する。販売面では、製造業にフォーカスしているスタートアップと組んで営業連携などもしていきたいと考えている。
STATION Aiへの入居は、顧客へのアピールにつながる面もあるという。新しい価値をスタートアップと一緒につくる姿勢は、「DXを支援する当社にとって先進性をアピールできる」。同社自身が中小企業として苦労している採用面でも、最新のオフィスで働けるという環境面を生かせるため、プラス面が大きいとする。
久野社長は、「ここにいる価値を最大限にできるよう、スタートアップやパートナー企業との関係を深めて、新しい価値を生み出していきたい」と意気込んでいる。
(取材・文/堀 茜)

スタートアップ500社が入居 既存産業盛り上げを狙う
STATION Aiは、オープンイノベーションの拠点として、民間資金を活用し公共事業を実施するPFI事業の形態で愛知県が名古屋市の鶴舞地区に建設した。運営はソフトバンクの100%子会社であるSTATION Aiが担っている。開業時でスタートアップ約500社、東海地域を中心とした事業会社がパートナー企業として約200社が入居。スタートアップの拠点として日本最大級の規模を誇る。一般の人も訪れることができるカフェやホテルも併設している。2月には、約5000人が参加する大規模なスタートアップイベント「TechGALA Japan」が名古屋で開かれ、その会場の一つとなったSTATION Aiでも講演やトークセッションが多数行われ、立ち見が出るほどの盛況ぶりだった。愛知県がスタートアップ支援を政策として展開し始めたのは、18年。自動車産業を中心とした製造業が基幹産業として盛んなエリアで、スタートアップとの協業により既存産業を盛り上げたいという狙いがあった。スタートアップ側には、ビジネス拡大に向けたエコシステムを構築しやすい環境がメリットとしてある。愛知県経済産業局スタートアップ推進課の金丸良・主査は「東京で起業するスタートアップが多いのが現状だが、事業会社が多い愛知は事業を成長させるためのメリットが大きい地域だ」とする。
金丸 良 主査
STATION Aiについて、愛知県はスタートアップが成長するために既存産業の力を活用し、既存産業がより魅力的な事業にアップデートするためにスタートアップの力を活用するという相互の関係を生む場と位置付けている。多様なバックグラウンド、技術、価値観を持った人が互いに持つものを持ち寄ることで新しいビジネスを生み出すことを促していきたいとする。「イノベーションを起こしたいと思っている人たちが集まるシンボリックな場所」(金丸主査)と期待を寄せる。スタートアップが多く集まっていることに加え、パートナー企業として地元企業が多く入居している点がSTATION Aiの特徴だ。金丸主査は「『スタートアップとの連携で新規事業を生み出したい』など、パートナー企業の期待感は大きい」と感じているという。
愛知県はSTATION Aiを起点に、愛知をグローバルのスタートアップ集積地として発展させたいと展望する。日本の人口減少が進み、市場の縮小が見込まれる中、「グローバルで市場を取れるような新ビジネスを生み出さないといけない」(金丸主査)と語る。県がつながりのある海外の研究機関や企業をSTATION Aiに招くなどして、産業創出の拠点として活用していく方針だ。
STATION Aiも会場の一つとなり多くの人が来場した
集積こそが最大の価値 採用サポートなど手厚く支援
運営会社STATION Aiの佐橋宏隆社長は「スタートアップとパートナー企業がこれだけの規模感で集積していること自体が最大の特徴であり、価値になる」と力を込める。入居企業は、個室、固定席、コワーキングスペースの3種類から希望の使い方を選ぶが、個室と固定席はほぼ空きがない状態で、入居状況は想定以上に順調だという。スタートアップの事業領域に制限はないが「運営会社として、イノベーションを生み出したいという意欲を強く持つスタートアップを選定させてもらっている」(佐橋社長)。
佐橋宏隆 社長
施設内は、個室を除いて入居する企業同士が気軽に話せるオープンな設計になっており、周りの企業と自然に会話が生まれるようなつくりになっている。スタートアップ約500社のうち、愛知県内の企業が3割、東京が4割、残りがそれ以外のエリアという地域構成になっている。同社は、愛知で起業する人を増やすため起業支援プログラムを展開。地元での起業を促すと共に、エリア外からスタートアップを誘致するという両面で拠点の充実を図っている。
スタートアップ企業にとってのメリットとして、会社のステージに合わせた課題の支援策をそろえていることや、東海地域の市場を開拓するために、顧客を紹介するマッチングなど、「事業成長のための『仕掛け』がSTATION Aiにはそろっている」(佐橋社長)とアピールする。また、パートナー企業に向けても、新規ビジネスを生み出せるスタートアップとの出会いがスムーズになるようマッチングを積極的にサポートしている。イベントも日常的に施設内で開催している。事業会社とスタートアップによる協業の芽も続々生まれつつある。
入居するスタートアップから特に好評な支援が、採用面のサポートだ。地方ではスタートアップが採用に苦労するケースが多いことから、同社が有料職業紹介事業の免許を取得し求人を紹介したり、HR系の事業者と連携しスタートアップが求めるエンジニアなどの採用につなげたりしている。
同社は、STATION Aiをオープンイノベーションを生み出すハブとして育てることを目指し、スタートアップの集積を29年に1000社にすることを目標に掲げる。愛知県と連携し、海外企業にもアプローチを強化する考えで、佐橋社長は「スタートアップと協業したいならSTATION Aiを訪れようという場にしていきたい」と力を込める。
東海地区での拡販に活用 金融機関などとの連携進む
入居するスタートアップは、どのように施設を活用しているのだろうか。匠技研工業は、中小部品メーカー向け見積もり支援システム「匠フォース」を展開する。データを活用して適正価格判断を行うことで、利益体質の経営や技術承継の実現を支援する同社のソリューション。製造業をターゲットとしている。
前田将太 社長
本社は東京だが、STATION Aiの開業に合わせて同施設内に名古屋支店を設けた。前田将太社長は「当社の売り上げを都道府県別に見ると、愛知県が1位だった。静岡県、岐阜県の顧客も多い。支店を構えることは、東海エリアで拡販に注力するというメッセージになる」と説明する。愛知県を中心とした中部地域での拡販にあたり、「製造業全体を変革するには間接的なステークホルダーを巻き込みながら進めた方がいい」(前田社長)と判断。エリアの自治体や金融機関とのつながりを求めていた点も、支店開設を後押しした。
STATION Aiでは固定席を契約しており、前田社長や他の社員が交代で利用している。自席の斜め前にメガバンクの席があり、顧客を紹介してもらったり、融資の相談に乗ってもらったりとつながりを強めている。また、地元企業とつながりの深い信用金庫と一緒に、製造業の中小企業を6~7社回って営業をしたこともある。前田社長は「(他の入居企業と)物理的な空間が近く、自然に会話が生まれている。STATION Aiの環境を大いに活用させてもらっている」と語る。
2月末には、イベントスペースを貸し切って、顧客の成功事例などを紹介するユーザー会を開催し、ソリューションの認知度向上を図った。STATION Aiは地元企業から注目度が高く、「一度行ってみたい」という声も多かったことから、会場にすることでより多くの企業を集められるという利点もあった。
同社はSTATION Ai開業前の24年9月、愛知県から次世代ユニコーンの創出を目指すビジネスコンテスト「AICHI NEXT UNICORN LEAGUE」で匠フォースを発表し、優勝している。前田社長は「顧客に価値を提供することで事業を伸ばし、応援してもらった愛知県や中部・東海地域に貢献していきたい」と展望する。
入居企業から刺激 自然な交流から価値を生む
地元IT企業で、本社をSTATION Aiに移したのがマイクロリンクだ。製造業向けのソフトウェア開発を手掛ける同社は、名古屋市西区にあったオフィスをSTATION Ai開業時に移転した。独自開発した、初期費用0円で製造現場の「見える化」を実現するSaaSソリューション「IoT GO」が主力製品で、AIの活用などにも積極的に取り組んでいる同社は、STATION Aiの前身で、シェアオフィスに設置されていたスタートアップ拠点「PRE-STATION Ai」のイベントに参加して情報収集したり、スタートアップを紹介してもらったりしていた。STATION Aiの開業にあたりソフトバンクから入居を打診され、多くのスタートアップが集う空間での交流を求めて移転を決めたという。
久野尚博 社長
久野尚博社長は、「入居してみて、スタートアップが必死にやっている姿、オープンイノベーションを生み出そうと多くの企業が連携する姿に刺激を受けている」と語る。交流イベントが数多く開かれ、自分たちから求めていなくても、STATION Aiのスタッフから相性が良さそうなスタートアップを紹介してもらうことも多い。これまで接点がなかった企業との出会いが、新規顧客の開拓につながるという手応えを感じている。イノベーションという意味では、自社の若手エンジニアがスタートアップの技術者と交流することで新しいアイデアを思いつくような効果も期待しているという。久野社長は「ここにしかない価値は、いろいろな企業と日常的に関わりが持てる点だ」と評価する。
製造業のDXを支援してきた同社では、今後AIの活用が不可欠だとみており、「AI関連の企業との協業も模索したい」(久野社長)と展望する。販売面では、製造業にフォーカスしているスタートアップと組んで営業連携などもしていきたいと考えている。
STATION Aiへの入居は、顧客へのアピールにつながる面もあるという。新しい価値をスタートアップと一緒につくる姿勢は、「DXを支援する当社にとって先進性をアピールできる」。同社自身が中小企業として苦労している採用面でも、最新のオフィスで働けるという環境面を生かせるため、プラス面が大きいとする。
久野社長は、「ここにいる価値を最大限にできるよう、スタートアップやパートナー企業との関係を深めて、新しい価値を生み出していきたい」と意気込んでいる。
国内最大規模のスタートアップ拠点「STATION Ai(ステーションエーアイ)」が2024年10月、名古屋市にオープンした。政府がスタートアップ支援策を強化するなど、国を挙げて新しい産業の創出に取り組む中、愛知県に誕生した新施設が注目を集めている。スタートアップと地元企業などが一カ所に集まることで、日常的にイノベーションを生み出していこうという試み。IT企業も多く入居し、ビジネスチャンス拡大を目指す。愛知県をグローバルのスタートアップ集積地に育てる取り組みの狙いと現状を紹介する。
(取材・文/堀 茜)
愛知県がスタートアップ支援を政策として展開し始めたのは、18年。自動車産業を中心とした製造業が基幹産業として盛んなエリアで、スタートアップとの協業により既存産業を盛り上げたいという狙いがあった。スタートアップ側には、ビジネス拡大に向けたエコシステムを構築しやすい環境がメリットとしてある。愛知県経済産業局スタートアップ推進課の金丸良・主査は「東京で起業するスタートアップが多いのが現状だが、事業会社が多い愛知は事業を成長させるためのメリットが大きい地域だ」とする。
愛知県経済産業局
金丸 良 主査
STATION Aiについて、愛知県はスタートアップが成長するために既存産業の力を活用し、既存産業がより魅力的な事業にアップデートするためにスタートアップの力を活用するという相互の関係を生む場と位置付けている。多様なバックグラウンド、技術、価値観を持った人が互いに持つものを持ち寄ることで新しいビジネスを生み出すことを促していきたいとする。「イノベーションを起こしたいと思っている人たちが集まるシンボリックな場所」(金丸主査)と期待を寄せる。スタートアップが多く集まっていることに加え、パートナー企業として地元企業が多く入居している点がSTATION Aiの特徴だ。金丸主査は「『スタートアップとの連携で新規事業を生み出したい』など、パートナー企業の期待感は大きい」と感じているという。
愛知県はSTATION Aiを起点に、愛知をグローバルのスタートアップ集積地として発展させたいと展望する。日本の人口減少が進み、市場の縮小が見込まれる中、「グローバルで市場を取れるような新ビジネスを生み出さないといけない」(金丸主査)と語る。県がつながりのある海外の研究機関や企業をSTATION Aiに招くなどして、産業創出の拠点として活用していく方針だ。
大規模なスタートアップイベント「TechGALA Japan」。
STATION Aiも会場の一つとなり多くの人が来場した
(取材・文/堀 茜)

スタートアップ500社が入居 既存産業盛り上げを狙う
STATION Aiは、オープンイノベーションの拠点として、民間資金を活用し公共事業を実施するPFI事業の形態で愛知県が名古屋市の鶴舞地区に建設した。運営はソフトバンクの100%子会社であるSTATION Aiが担っている。開業時でスタートアップ約500社、東海地域を中心とした事業会社がパートナー企業として約200社が入居。スタートアップの拠点として日本最大級の規模を誇る。一般の人も訪れることができるカフェやホテルも併設している。2月には、約5000人が参加する大規模なスタートアップイベント「TechGALA Japan」が名古屋で開かれ、その会場の一つとなったSTATION Aiでも講演やトークセッションが多数行われ、立ち見が出るほどの盛況ぶりだった。愛知県がスタートアップ支援を政策として展開し始めたのは、18年。自動車産業を中心とした製造業が基幹産業として盛んなエリアで、スタートアップとの協業により既存産業を盛り上げたいという狙いがあった。スタートアップ側には、ビジネス拡大に向けたエコシステムを構築しやすい環境がメリットとしてある。愛知県経済産業局スタートアップ推進課の金丸良・主査は「東京で起業するスタートアップが多いのが現状だが、事業会社が多い愛知は事業を成長させるためのメリットが大きい地域だ」とする。
金丸 良 主査
STATION Aiについて、愛知県はスタートアップが成長するために既存産業の力を活用し、既存産業がより魅力的な事業にアップデートするためにスタートアップの力を活用するという相互の関係を生む場と位置付けている。多様なバックグラウンド、技術、価値観を持った人が互いに持つものを持ち寄ることで新しいビジネスを生み出すことを促していきたいとする。「イノベーションを起こしたいと思っている人たちが集まるシンボリックな場所」(金丸主査)と期待を寄せる。スタートアップが多く集まっていることに加え、パートナー企業として地元企業が多く入居している点がSTATION Aiの特徴だ。金丸主査は「『スタートアップとの連携で新規事業を生み出したい』など、パートナー企業の期待感は大きい」と感じているという。
愛知県はSTATION Aiを起点に、愛知をグローバルのスタートアップ集積地として発展させたいと展望する。日本の人口減少が進み、市場の縮小が見込まれる中、「グローバルで市場を取れるような新ビジネスを生み出さないといけない」(金丸主査)と語る。県がつながりのある海外の研究機関や企業をSTATION Aiに招くなどして、産業創出の拠点として活用していく方針だ。
STATION Aiも会場の一つとなり多くの人が来場した
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- 集積こそが最大の価値 採用サポートなど手厚く支援
- 東海地区での拡販に活用 金融機関などとの連携進む
- 入居企業から刺激 自然な交流から価値を生む
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