企業がパソコンやサーバーなどに格納する電子データは、近年急速に増え続け、それとともにシステムのバックアップに要する時間は長くなっている。企業が保有する顧客情報や取引情報、経理データなどは、電子データとしてパソコン端末やサーバー機器に保存されている場合がほとんどだ。これら重要データのバックアップ・リカバリを行う時は、事業継続の観点からも、システムのダウンタイムを限りなくゼロにしていく必要がある。また、東日本大震災のような天災に対応するには、機器自体の堅牢性に頼っているだけでは、データの損失を完全に防ぐことができない。

中小規模企業の災害対策は不十分

 バックアップ・リストア(復元)・システムの移行/配布に関する製品を開発・販売している米アクロニスが、今年1月、日本を含む世界13か国の企業、3000社を対象に実施した調査をもとにまとめた「アクロニス世界障害復旧評価指標」によると、日本は総合評価で第3位に入るなど、バックアップとシステム復元に関して高い技術と十分なリソースをもっていることがわかった。

 日本では、企業IT管理者の73%が重大な障害発生時に自社のバックアップとディザスタリカバリ(DR=障害復旧)の操作が問題なく機能するとし、71%の企業で、それらを実行する最適なスタッフを配備しているという。だが一方で、IT予算のうち、バックアップとDR操作製品にかける割合を「なし」と回答した企業が40%に上っている。一部の中堅・大企業は、大規模災害に備えてデータセンターを遠隔地に置くなど、天災への備えをしている。だが、多くの中小規模企業は対策が不足しており、こうした状況が、今、東日本大震災の被災地にある企業の復旧・復興を難しくしている。障害発生時の対応に関心は高いものの、予算配分は十分ではない――これが日本の現状だ。

 米アクロニスの日本法人であるアクロニス・ジャパンは、東日本大震災を契機に、主に中小規模企業が災害時に企業活動を継続するためのDR製品として、簡単で安価に導入できるバックアップソフトウェア「Acronis Backup & Recovery 10」を提案している。5月からは、中小規模企業向け障害復旧ソリューション「AUR」無償キャンペーンとして、「Acronis Backup & Recovery 10 Server for Windows」(ライセンス版のみ)購入者を対象とした、異なるコンピュータへのリカバリができるオプション製品「Universal Restore」の無償提供を開始した。

 「Acronis Backup & Recovery 10」は、使いやすさを最優先した個人ユーザー向けバックアップソフト「Acronis TrueImage」を企業向けに改良した製品で、重複除外や仮想化対応、異機種への復元を簡単にできる「Universal Restore」という三つの特徴機能をもつ。ファイル単位ではなく、HDDのセクタ単位でバックアップを行う「イメージバックアップ」方式を採用しているので、データ復元にかかる時間やその工数を競合製品に比べ20%程度に短縮できる。仮想化対応も万全で、一つのエージェントで複数の仮想マシンのバックアップを取得できる。

イメージバックアップによる復旧工程の短縮

簡単・安価に復旧できるバックアップソフト

 通常のデータバックアップの復旧工程では、図の通り、機器の復旧からOSの再インストール、パッチの適用、マシンの再設定などを行う必要があるが、「イメージバックアップ」ではOSやアプリケーションの再インストールや設定が不要で、工程を大幅に削減することができる。

 「Acronis Backup & Recovery 10」ファミリーには、中小規模向けの「スタンドアロンエディション」と、数千台のクライアントまで対応する大規模向けの「集中管理エディション」があり、オプション製品として「Universal Restore」と「Deduplication(集中管理型専用の重複除外)」をラインアップしている。吉田幸春・セールスエンジニアリングマネージャは「東日本大震災のように予測不能な障害や災害に対応するため、定期的にバックアップを取得することが重要になっている」としたうえで、「Acronis Backup & Recovery 10」やオプション製品を利用し、次のようなシステム提案をしている。

 企業は、アクロニス・ジャパンのバックアップ製品を使うことで、日々のデータをNAS(Network Attached Storage)や外付けディスクにバックアップすることができ、機器障害や災害発生時に迅速な復旧ができる。「週に1回、または月に1回程度、定期的にリムーバルメディアにデータをバックアップすれば、外部にデータ保管ができ、いざという時に異なる拠点でシステムを復旧できる。トラブルが発生しても、システムすべてを問題が発生する前の状態に戻すことができる」(吉田マネージャ)という。ディスクやメディアを同一機種で揃えられない場合は、オプションの「Universal Restore」を使うことで異なる機種への復元も可能だ。

吉田幸春・セールスエンジニアリングマネージャ

 さらに、「Acronis Backup & Recovery 10」は仮想化対応を強化し、「VMware ESX」や「Microsoft Hyper-V」等の仮想化ソフトに対応している。物理サーバー1台につき1ライセンス購入することで、複数の仮想マシンを保護できる「Virtual Edition」も用意している。吉田マネージャは「当社のバックアップ製品の売りは、元は個人ユーザー向けに開発されたものだけに、操作の選択画面が少なく、扱いやすいこと。また、WindowsとLinuxが同じ操作性になっていることだ」と語る。同社は今、「Acronis Backup & Recovery 10」をデータセンターを保有する通信キャリアなどへの拡販を狙っている。「データをデータセンター側にバックアップすることができる」(吉田マネージャ)からだ。

DRと事業継続への意識を高める

 現在、アクロニス・ジャパンでは、先述した期間限定の「中小企業向け障害復旧ソリューション」AUR無償キャンペーンで、バックアップ・リカバリ製品を未導入の顧客に対し、「Acronis Backup & Recovery 10 Server for Windows」を購入した場合は、通常価格が4万8000円の「Universal Restore」を無償で提供している。吉田マネージャは「2~3台程度のサーバーを保有する小規模企業から従業員500人以下の中規模企業までを対象に、簡単で安価にできるデータ復旧の手順を訴求していく」と話す。「Acronis Backup & Recovery 10」は、主に大手ディストリビュータ経由の2次店向けの代理店販売で展開しているが、東日本大震災を契機にDRや事業継続の意識を高めていく方針だ。

 東日本大震災では、太平洋沿岸部にある多くの企業が津波に襲われ、ITシステムが損壊・損失する被害を受けた。そして被災地域の企業に限らず、いま、DRと事業継続に対する備えは必須となっている。「Acronis Backup & Recovery 10」は、災害対策意識の高まる企業にフィットしたソリューションとして受け入れられそうだ。