個人情報保護法が2005年に全面施行されるなど、日本の情報セキュリティ対策は、諸外国に比べて進んでいる。だが、ユーザー企業・団体の機密情報漏えいと、不正アクセスによる情報システムのダウンは後を絶たない。新しい脅威が生まれれば、それを防ぐための新たな対策が必要になる。「イタチごっこ」といわれるが、ユーザー企業・団体は、ITインフラを止めることはできないので、最新のセキュリティ対策を常に施しておかなければならない。システムを守るためのセキュリティ製品・サービス市場は、今後も引き続き伸びる公算が高い。
IT調査会社のIDC Japanが2011年末に発表した調査レポートによると、2011年の国内セキュリティソフトウェアの市場規模は、前年比5.2%増の1965億円になったもようで、2010年~2015年の年平均成長率(CAGR)は4.8%とした。15年の市場規模は2357億円に到達する見込みだ。セキュリティ関連のアプライアンス(専用機器)も、10~15年のCAGRは2.2%で、プラス成長を予測。国内IT産業の伸び率が、ほぼ横ばいであることを考えれば、有望なIT市場だ。
情報セキュリティ業界で、今注目を集めているのが「標的型攻撃」と呼ばれる不正アクセスを防ぐための製品・サービスと、モバイル機器の情報漏えいを守るためのソリューションである。
標的型攻撃とは、その言葉通り、特定の企業・団体を標的にした不正アクセスを指す。特別な情報をもっている企業・団体をターゲットとして、不正なプログラムを送り込んで情報を盗み取る。最近の主な例は、三菱重工とソニーの情報漏えいだ。標的型攻撃を防ぐための特別なソリューションは存在しない。パソコンとサーバーのマルウェア対策やIPS(不正侵入防御システム)の導入など、複数のセキュリティ製品・サービスを組み合わせることが不可欠になる。
一方、モバイル機器のセキュリティ対策は、スマートフォンとタブレット端末が普及し、BCP(事業継続計画)の観点から、以前に比べてデスクトップパソコンよりもノートパソコンを導入する企業が増えていることで注目を集めている。機器を管理するためのMDM(モバイルデバイス管理)ツールやAndroidのぜい弱性を狙った不正プログラム対策製品などは伸び盛りだ。最も身近な外部ストレージである「USBメモリ」を経由したウイルス対策製品も、最近とくに求められるようになった。
業務に必要不可欠になったIT環境を安定的に運用するためのセキュリティ対策は、企業規模を問わずにユーザーが重要視している分野だ。何も起こらなければムダになる「負の投資」というイメージは薄れ、今後も着実に成長していくだろう。
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