長らく海外勢の独壇場とされてきた「クラウド」市場に風穴を開け、最も躍進した日本発のクラウドのサービスといえば「IIJ GIO」がその筆頭に挙がる。登場から約3年、IaaS分野でシェア17.2%、売上高とともに1位(※)を確立してマーケットで存在感を強めるIIJ GIOの成長の秘密は、パートナーとの強固な連携にある。2月13日、東京・大手町の経団連会館にて開催された「IIJ GIOパートナーフォーラム2013」の模様をレポートする。
日本にクラウドが根づいてきた

IIJ 専務執行役員
クラウド事業統括
時田一広 氏 開会の挨拶に登壇したインターネットイニシアティブ(IIJ)専務執行役員 クラウド事業統括の時田一広氏は、まずIIJ GIOの現状と取り組みを紹介した。「サービス開始から33か月間。これまでの実績データを用意した。導入企業は900社、システム数は1600システムに達し、売り上げは、2011年度は前年比5倍、2012年度は前年度比11倍となった」。サービス開始初期の成長をけん引したのはネット企業。ソーシャルゲームなどのビジネスがGIOの立ち上げ当初を引っ張ってきたが、最近はエンタープライズでの利用も増え、業種業態別の導入比率に偏りがなく、幅広く利用されている。
「とくに基幹業務に関係するシステムをクラウドへ移行したり、新規システムをクラウドで立ち上げたりという使い方も増えた」と時田氏は説明する。そして、「クラウドは定着し、ブームは下火になった。われわれが手がけるクラウド案件にも実システムが増えており、クラウドが確実に企業のIT、世の中のITに根づいていると感じる。IIJは現在、世界6ヵ国10拠点をもっているが、今後は全世界で日本企業のグローバル化を支援する体制を整える」との方針を示した。
成長はパートナーと共に
IaaSはインフラなので、IIJ GIOパートナーのアプリケーションやソリューションをSaaSとして配信する土台となる。「IIJ GIOは基盤サービス。われわれは低コストで、しかも柔軟で使いやすい基盤サービスを継続していき、コストパフォーマンスの向上、使い勝手の改良などに継続的に取り組んでいく」と時田氏は言う。IIJだけではカバーしきれない「ビジネスの利用シーンに即したアプリケーションやソリューション」については、「IIJ GIOパートナープログラム」を軸にして、パートナーが有する製品・サービスをSaaSでエンドユーザーへと提供する。(パートナープログラムについての詳細は次ページ)
IIJは創業から20年。「いよいよラインアップがそろってきた。やっとここまで来たが、引き続きクラウドを活性化して行くために、パートナーの協力が不可欠だと考えている」(時田氏)と結んだ。
(※)出典:富士キメラ総研 2012年7月25日発行「富士マーケティングレポート・BT 急成長するパブリッククラウド(HaaS/IaaS)の現状と将来展望」 充実のパートナー制度でSaaS展開を支援 すでに100社がIIJ GIOでSaaSを展開

IIJ マーケティング本部
プロダクトマーケティング部長
神田恭治 氏 続いて登壇したIIJマーケティング本部プロダクトマーケティング部長 神田恭治氏は、IIJ GIOのトピックとロードマップを解説した。IIJのサービス事業は「自動化」と「標準化」の二つの要素で成り立っている。神田氏は、「標準化を推し進めて規模のメリットを享受し、コスト競争力をつけていく。標準化は、個別のニーズを削ぎ落とす作業だといえる。個々のニーズに応えることは重要だが、そのためにいろいろなパッケージを用意することは複雑化を招き、標準化に相反する。そのうえで、2013年もパートナーやエンドユーザーと密に連携し、サービスを提供していく。そのためには、パートナープログラムの発展が欠かせない」と説明する。
IIJ GIOは「持たないプライベートクラウド」を標榜し、エンタープライズ規模のユーザーに最適なクラウド環境を提供することを目指している。エンドユーザー企業だけでなく、SaaSで製品を提供する企業にとっても、サービスのサイズに合わせたインフラとなる。
「多くの企業の悩み事のトップは『HWの保守運用』『初期投資コスト』『アセットの増大による、会計上の固定費の増大』だ。ハードウェアの保守運用が高ければ、アウトソースすればよい。初期投資が大きい、固定費が膨らむならばサービスを利用してアセットを構築していけばよい。IIJ GIOはそうした課題に応える仮想化基盤を提供する。ビジネスの変化に対応できるためにクラウド基盤ならば、10日たらずで調達が可能だ。ビジネスの変化に耐えられるスピードを得られる」と神田氏は説明した。

「IIJ GIOパートナーアワード」受賞企業8社の代表者パートナーを支援する3フェーズ
IIJ GIOのパートナープログラムは、IIJ GIOが登場した時点からスタートしており、年間100社という高いペースで増加。現在は約300社がリストに名を連ねている。IIJ GIOパートナープログラムのフェーズは三つ。「企画」フェーズではIIJ製品とのポートフォリオが合致することを確認し、SaaS化をアドバイス。IIJが誇る実績ベースの豊富なノウハウが提供される。続く「開発」フェーズではIIJが検証環境を提供するほか、トレーニングおよび技術サポートを提供する。三つめの「販売」フェーズでは共同プロモーションやセミナーなどによるビジネス機会の創出、パートナー間連携の強化による販路の拡大を実現する。
エンドユーザーはWANやモバイルなどネットワーク越しにIIJ GIOへ接続するだけで基盤を利用することができ、社内に資産をもつ必要はない。「パートナーの皆様には、GIOの上でSaaSを展開いただき、より多くのエンドユーザにサービスを提供いただきたい」と神田氏は強調する。
IIJ GIOパートナープログラム特典
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