企業向けクラウドサービス「IIJ GIO」を提供するインターネットイニシアティブ（IIJ）が、クラウドの普及を促すために、ユニークな仕組みを構築した。

　IIJは今年8月、業務アプリケーションの開発を手がけるISV（独立系ソフトウェアベンダー）を、ユーザー企業のIT部門/システムインテグレータ（SIer）とリンクさせるソフトウェア提供基盤を開設する。この基盤は、ISVが商用アプリをIIJの基盤にアップロードし、ユーザー企業やSIerは基盤を利用してアプリをダウンロードすることができるというものだ。IaaSベンダーのIIJが流通の担い手になるかたちで、業務アプリのデリバリ（提供）の加速化を目指している。IIJは、同社のIaaSプラットフォーム上で動くアプリを迅速に手に入れることができる基盤を提供することによって、ユーザー企業のIaaS導入の促進を狙っている。

　IIJは8月に、「IIJ GIO」の新たな中核商材となる仮想化プラットフォーム「VWシリーズ」を発売する。「VWシリーズ」は、「ホステッドプライベートクラウド」をキーワードとして、IIJのIaaSプラットフォーム上での仮想サーバー設計とOS（基本ソフト）構築を、ユーザー企業が自由に自社の環境内で行うことができるものだ。「VWシリーズ」は、ユーザー企業の視点からすれば、仮想サーバー/OSを自社のニーズに最適なかたちでつくることができるというメリットがあるが、OS上で動く肝心の業務アプリを迅速に入手できないとシステムが動かず、導入の意味がない、というネックがある。その解決策としてIIJが考え出したのが、ソフトウェア提供基盤の開設だ。

　クラウドコンピューティングは、システム構築をスピードアップできることが大きなメリットだ。しかし、実際は、ハードウェアリソースの流通が高速化しているだけで、アプリに関しては、SAPやオラクルなどソフトベンダーがパッケージで販売するケースがいまだに多く、デリバリが速くなったとはいえない。そんな状況下で、IIJは「ユーザー企業は迅速にアプリが手に入る」「ISVはアプリの販売チャネルが増える」の二つを、ソフトウェア提供基盤の訴求ポイントとしている。開設時に、日本マイクロソフトやF5ネットワークスジャパンのアプリをダウンロードできる環境を用意し、今後、ISVパートナーの数を増やし、メニューを拡充していく。ソフトウェア提供基盤を強化することによって、IaaS事業の拡大を図るわけだ。

　IIJのソフトウェア提供基盤の開設は、IT市場に強いインパクトを与える可能性をもっている。今後、クラウドの普及を目指す他のIaaSベンダーが似たモデルを採用すれば、業務アプリとクラウドの両方のマーケットが活性化することが考えられる。（ゼンフ ミシャ）