ビジネス向けのノートPCは、いずれも十分な性能をもつため、処理能力などの比較が重要視されることが少なくなった。コモディティ化が進むとユーザー企業の採用基準は価格に向かう。安ければ安いほうがいいというわけだ。そのなかで、価格ではなく性能で勝負しているノートPCがある。パナソニックの「レッツノート」だ。軽量かつ長時間駆動、頑丈設計などによって高い評価を得て、モバイルワークを中心とするビジネスシーンで絶対的な地位を築いた。そのレッツノートで今、注目されている機能が、ワンビとのコラボレーションによって実現した遠隔データ消去ソリューション「TRUST DELETE Biz(パナソニック版)」。同機能が必要とされる背景や有効性について、パナソニックの坂本哲也・モバイル開発部部長とワンビの加藤貴・代表取締役社長に聞いた。

“持ち出し禁止”の問題を解決

──両社が出会うきっかけを教えてください。

パナソニック
AVCネットワークス社
ITプロダクツ事業部
モバイル開発部
坂本哲也 部長
坂本 レッツノートは、軽量、頑丈、長時間、ワイヤレス、放熱、高輝度、そしてセキュリティという七つのコア技術を強みとしています。コア技術を組み込むためにBIOSの開発も内製化していて、例えばパナソニック独自のさまざまなセキュリティ技術を、BIOSレベルで実現しているんですよ。BIOSレベルで開発に取り組んでいる数少ないメーカーの一社なんです。ワンビさんとの出会いは2009年ですが、ちょうどその頃はどのようなセキュリティ機能が本当に役に立つのか、ハードウェアのメーカーとして何をするべきかについて試行錯誤していました。

加藤 当社が創業した2006年頃は、個人情報保護法の施行によって、“情報の持ち出し禁止”が叫ばれるようになっていました。持ち出し禁止といわれても、ノートPCは本来、情報を持ち出すためにつくられているわけです。禁止したらノートPCである意味がなくなってしまう。そこで、ソフトウェアで持ち出し禁止を解除したいというのが当社のスタートです。ただ、ソフトウェアはWindowsなどのOS上で動作させることになるため、OSに依存してしまいます。OSを立ち上げるまで、セキュリティ機能が発動しない。そこに限界を感じていました。

坂本 モバイルが目的のPCなので、当社としても持ち出していただいて初めて価値があるわけです。持ち出して使っていただくにはどういう対策が必要なのか、というところが出発点です。

──両社の思惑が一致したというわけですね。

ワンビ
加藤貴 代表取締役社長
加藤 たまたまパナソニックさんの担当者と情報交換をする機会がありまして、「究極のセキュリティってなんだろう」という話になったわけです。ノートPCをなくしたときのシチュエーションを考えてみると、電源のオン/オフ、インターネット接続の有無、Windows起動の有無などがあり、すべてに対応するべきだろうと。ハードウェアだけ、ソフトウェアだけでは不十分。ならば一緒にやったほうがいい。それでパナソニックさんに提案しました。

坂本 もともと数社のソリューションを検討していて、その過程でワンビさんにご提案をいただきました。ワンビさんと一緒にやろうと決めたのは、機能面に加え、コミュニケーションが取りやすかったからです。私どもの要望に対して、すぐにフィードバックをいただけましたから。新機能投入のスピードを考えると、密にやり取りできたほうがいいとの判断です。


──最初に製品化したのはいつ頃ですか。

坂本 2011年です。最初に投入したのは、単純にデータ消去の命令を送るだけで、あらかじめ設定した通りの動作しかできなかったのですが、やはりお客様によって多様な要望がありました。例えばデータを消去したいけど、最初は消さずにロックだけにして、みつからなかったら消去するとか、命令を送るときに対処方法の変更を可能にするとか、それ以外にも電波が届かないケースでの対応など、お客様の声をフィードバックするかたちで機能を追加してきました。

加藤 パナソニックさんは、ノートPCを付加価値で差別化しようと本気で取り組んでいます。こうした取り組みをしているメーカーは、ほかに知りません。当社の高度なセキュリティ機能を効果的に運用できるのはパナソニックさんだけ。TRUST DELETE Bizとレッツノートの組み合わせができて本当によかったと思います。

──両社の役割について教えてください。

加藤 セキュリティ機能の多くはBIOS上で実現していて、それをどう動かすか、いつ動かすか、まず設定として埋め込むことを当社のソフトウェアが担っているのと、もう一つはサーバーから命令を送らないといけないので、そのサーバー部分をつくっています。また、サーバーからSMS(Short Message Service)やインターネットを使って命令を実行するという部分も担当しています。なぜ、SMSかというと、電源が入っていなくても、そこだけは通信ができるようになっているためです。

リモートでノートPCを破壊

──レッツノートに搭載した遠隔データ消去ソリューションの優位性について教えてください。

坂本 一般的なリモートワイプは、紛失・盗難のためというよりも、PCをリセットするためのものです。それもインターネットにつながっていないとリモートワイプの命令を出せない。レッツノートの場合は、通信キャリアのSMSを使用するため、インターネット接続を必要としません。また、SMSを使用しないLAN環境用モデルでも、GPSやWindows 8以降の機能で得られる位置情報を使って、設定したエリアの外に出たらロックやデータ消去を自動的に実行するということができます。

加藤 セキュリティ対策に関しては、暗号化で十分という話もありますが、暗号化の弱点は、ログインした状態において無力だということです。ちょっと席を外したときに盗まれたとしたら、対応できません。また、シンクライアントであればデータを持っていないので大丈夫だともいわれますが、モバイルで活用するにはネットワーク接続が課題となります。電波が届かないケースを考慮すると、結局、Windowsを立ち上げてからシンクライアントとしてサーバーに接続するというハイブリッド環境で運用しています。その場合、ネットワークにつながらないときには、リッチクライアントとして使うわけですから、PCにデータが残る。また、VPNに接続するための情報などがPC側にあるなど、せっかくシンクライアントにしても、セキュリティ対策としては不十分というわけです。実はこれ、シンクライアントからレッツノートに切り替えたお客様に教えていただいた話なんですよ。


坂本 レッツノートは、リモートでデータを消去するだけでなく、起動抑制ができます。起動抑制を受けたPCは、もう修理するしかありません。レッツノートを転売目的で盗んでも無駄ですし、修理に出したら起動抑制の指示を受けたPCだとわかるので盗んだことがバレてしまうのです。

──遠隔データ消去ソリューションは、どのような業界で使われることが多いのですか。

坂本 秘匿情報を取り扱うお客様が多いのですが、最近ではセキュリティ意識の高まりもあって、業界を問わずいろいろなお客様でお使いいただいています。例えば、通貨処理機などを取り扱うグローリー様には、厳格な基準を設けた特定エリアに持ち込むことができる“唯一のPC”が、TRUST DELETE Bizを搭載したレッツノートということで使っていただいています。

加藤 以前はセキュリティ機能を求めるユーザーは限られているという印象でしたが、セキュリティ意識の高まりからその状況が変わってきています。マイナンバー(社会保障・税番号)制度も追い風になりそうです。マイナンバーの管理は企業の義務ですし、漏えいしたら罰則もありますから。

マイナンバー対策にも有効

──レッツノートを活用するビジネスシーンを想像すると、マイナンバーの管理はあまり関係ないような気がしますが。

加藤 マイナンバーをPCに保管する場合、使用後はカギのかかる場所にPCを置く運用が必要になります。デスクトップPCではそのような運用ができないため、ノートPCが適切になります。しかし、同時に不正に持ち出された場合にデータの漏えいを防止するセキュリティ機能が必要不可欠になるのです。

坂本 サーバーのセキュリティ対応が十分だとしても、クライアント側のPCが不十分であれば情報漏えいの危険が高くなります。水が低いところに流れるように、情報も流れてしまうものです。ノートPCがマイナンバーと無関係だと思われるかもしれませんが、レッツノートのお客様は、組織全体のセキュリティを考慮して採用しているのです。

加藤 レッツノートは、「良いPCだけど、高いよね」と言われていますが、大きな声で違うと伝えたいのです。まず、堅牢で数年間使っていても壊れる気がしないし、データの漏えいを防止する高度なセキュリティ機能を装備しています。同等のセキュリティを他社のノートPCで実現しようとすると、膨大な費用がかかってしまいます。実は、最も低価格なビジネスPCと言えるのです。その証拠に、新幹線のなかを見渡してみると、仕事をしている人たちのPCのほとんどはレッツノートだと気づくはずです。

坂本 レッツノートの付加価値は、パートナー企業様が顧客に提案するときの差別化要因になります。マイナンバーが動き出すことで、セキュリティ意識はますます高まってきます。レッツノートは費用対効果でご選択いただける商材と自負しています。