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<新興ストレージベンダー座談会>ストレージの新たな概念を生み出す 新興だからこその強みで市場活性化へ

2015/10/28 19:56

週刊BCN 2015年11月02日vol.1602掲載

パートナーが売るメリット
導入の容易性をアピール

──パートナーに向けた施策を教えてください。

森山 まずは、既存パートナーを大切にして、マーケットを拡大していく、というのが基本方針です。フォーカスする領域が変わってきていますので、パートナーの増加も考えてはいますが、増やすのであれば、既存パートナーとマーケットセグメントをしっかり話し合って、同じ領域でパートナー同士の競合が起きないようにします。今後は、プライマリストレージの置き換えをターゲットとしていくため商談規模も大きくなりますから、個々のパートナーの特徴を生かすとともに、技術面や営業面の双方で、しっかりとサポートしていきます。

 当社は、100%間接販売ですからパートナーの存在が非常に重要です。HDDをベースとした従来型ストレージの案件は、設計、導入、運用開始後におけるパフォーマンスのチューニングのいずれも、SIerの方々にとって難しい作業で手離れもよくないという声を聞きます。しかし、当社の製品であれば、容易にすぐれた仮想化環境をすばやく構築して運用できます。いい換えれば、パートナーの方々にとって、従来の製品導入のためにかかっていた労力を、より収益につながるアプリケーション系の提案などに振り向けることができる商材です。そのメリットを強くアピールして、パートナーの方々とともにマーケットを拡大していきたいと思います。

ピュア・ストレージ・ジャパン
阿部恵史
マーケティング部長
阿部 日本では、契約一つをとってみてもパートナーの方々の存在が非常に重要な役割を担います。それだけに当社も、パートナーとともにビジネスを拡大していくという方針で取り組んでいます。これはグローバルでの方針であり、米国本社の設立当初からパートナープログラムの提供を開始し、販売、マーケティング、保守の各メニューを取り揃えています。現在は、グローバルで「イヤー・オブ・ザ・チャンネル」を掲げてさらに取り組みを強化しています。現在、2次店を含めて11社の体制ですが、さらに増やしていく方針です。とくに、当社がターゲットとするDB系などのソリューションを軸にした展開も重要になってきます。そのマーケット拡大のためには、パートナーの力が欠かせません。日本では、金融をはじめとして開拓できていない分野も多いので、ぜひパートナーの方々と協力し、市場を開拓したいと思います。

──NASなど従来型ストレージの販売に強いディストリビュータやSIerとは、どのようにパートナーシップを組んでいくのですか。

森山 フラッシュストレージが、ディストリビュータやSIerの方々のもつポートフォリオをいかに補完できるかを訴えていきます。例えば、競合他社の対抗軸として、性能面での当社製品の強みをアピールして、アプローチを進めています。

 当社製品の特徴は、仮想化専用ストレージです。それだけに、仮想化プラットフォーム「VMware vSphere」に強いSIerの方々から評価され、パートナー契約をいただいたケースもあります。また仮想化では、Hyper-V、Red Hat Enterprise Virturization、OpenStack Cinderにも対応していますから、ストレージというだけでなく仮想化環境の構築に長けたパートナーの開拓を進めています。

阿部 重要な点は、パートナーにとってビジネスとして成立するのかということです。そのため、当社の製品なら、これぐらいのビジネスになるという規模を示すことが重要だと捉えています。また、日本が実績重視という点で、具体的な事例を提示して納得してもらうようにしています。そのうえで、製品の強みやソリューションのバリエーションをアピールし、商談機会の拡大につなげることを目指しています。

──仮想化やクラウドをはじめ、新技術への対応はいかがでしょうか。

森山 仮想化という観点からすると、インテグレーション機能についてはいち早くキャッチアップしており、お客様が既存の仮想環境で安心して使用できるよう取り組みを進めてきました。クラウド分野では、パブリッククラウドはわれわれの脅威となる可能性はあるものの、プライベートクラウドでは運用コストの削減を大いにアピールできます。また、ハイパーコンバージド製品も出して、取り込めるものは取り込んで製品戦略を展開する方針です。

 当社の製品は、一見汎用の共有外部ストレージに見えるものの、プライベートクラウド、パブリッククラウドのどちらにもご利用いただいている仮想化専用のストレージで、中身は新技術の塊です。最近では、アプライアンス型ではないサーバーコンポーネントを使ったHCI(ハイパーコンバージドインフラストラクチャ)やSDSなどの技術も台頭してきており、当社も当然ながらそうした提供形態も検討しましたが、仮想化、フラッシュ、クラウドの課題を解決し、パートナーとお客様に価値をご提供するためにはこの形態の最善、との信念でストレージアプライアンスを提供しております。

阿部 仮想化を含め、当然、新技術への対応はしっかり取り組んでいますし、これからもさらに強化していきます。クラウドについては、例えば、OpenStackのコミュニティへの貢献をはじめ、日本でもOpenStackサミットのイベントに出展するなど、かなり力を入れて取り組みを進めています。また、米国ではすでに実施していますが、「FlashStack」というコンバージドインフラストラクチャ製品も販売しており、日本でも近くパートナーを通じて発売する予定です。

既存の製品や事業との
「しがらみがない」が強み

──新興ベンダーだからこその強みとは、どのような点だと思いますか。

阿部 やはり、既存ビジネスとのしがらみがないことですね。他のビジネスユニットを気遣うことなく、破壊的なイノベーションで本当にいいものをお客様に提供できます。その強みを生かしていくことが、大手ベンダーのブランド力との差を埋める手段だと確信しています。

森山 意思決定が早いことです。そのため、会社の決定と製品計画とを、迅速、的確にお客様に伝えることができます。過去のしがらみがないので、良いと判断したことを即座に実行できることは大きな魅力でもあります。それだけに、開発エンジニアとの距離も近く、さまざまな局面で大手ベンダーにありがちな組織の隔たりに悩まされることが少なく、お客様の声を直接開発部門、サポート部門に伝えることができています。

 お客様の要望に対するレスポンスの速さは、小回りの利く新興ベンダーだからこその強みです。私は、大手メーカーに在籍していたことがあるのですが、その時と比較するとスピード感がまったく違う。パートナーとの距離も近いので、施策もすぐに展開できますし、ユーザーに対するソリューションの提案もいち早く行うことができます。

──最後に、今後の取り組みを、5年後など将来を見据えながら教えてください。

 5年後も変わらないと思いますが、仮想環境専用ストレージベンダーとして、お客様のストレージ環境により付加機能を提供していくことをミッションとして取り組みます。具体的には、仮想マシン単位でより細かな管理を実現していきます。ワークロードごとの分析をはじめ、それを発展させてアプリケーションをワークセットごとに分析して最適配置するなど、ロードバランシング的な機能の実現を目指していきます。当社の強みは独自のオペレーティングシステム、すなわちソフトウェアにあります。今後は、さらにソフトウェアの開発に重点を置いて、他社では考えつかないような技術を市場に投入していきます。

阿部 当社は「Flash for All」をビジョンの一つとして掲げています。つまり、すべてのシステム環境でオールフラッシュストレージを使えるようにする。そのために、次世代のすぐれたストレージベンダーになることを目指しています。実際、(今となっては大手の)EMCやNetApp以降、成功した独立系ストレージメーカーが出てきていないので、その次の存在になります。なおかつ、今まで以上のバリューを提供し、その結果、企業としての成長を遂げたいですね。

森山 「オールフラッシュ・データセンター」をテーマに据えて、DC内のストレージを磁気ディスクからフラッシュに変えることを目指しています。当社は東芝の出資も受けていますが、その先端テクノロジーをいち早く製品化するとともに、より購入しやすい製品も提供していきます。また、可用性に重きを置いており、さらに堅牢性を高めた製品開発も進めていきます。

──ありがとうございました。

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外部リンク

ヴァイオリン・メモリ=http://www.violin-memory.com/jp

ティントリジャパン=http://tintri.co.jp

ピュア・ストレージ・ジャパン=http://www.purestorage.co.jp