日立システムズのグローバルにおけるERPビジネスが大きく様変わりしている。同社は中堅・中小から大手ユーザー企業まで、全国の顧客にERPの導入支援を手がけているが、とりわけERP商談のグローバル化が著しく進展。ERP商談のほとんどが海外絡みになりつつある。首都圏はもとより、西日本地区の中堅・中小企業の多くが海外に拠点をもつようになって、ERPの刷新のタイミングでグローバル統合された基幹業務システムに置き換える商談が活発化している。しかし、その一方でERPのグローバル統合は、一筋縄ではいかない難しさも抱えている。
中堅・中小企業でもニーズが高まる

田中啓喜
産業・流通情報サービス
第一事業部
第二システム本部
第四システム部
部長 ERPの神髄は、財務会計や販売・生産管理、人事給与などの基幹業務システムを統合することにある。バラバラで動いていた各システムを統合することで、経営リソースを俯瞰でき、経営判断をより迅速、的確に行うことができるようにするのが狙い。だが、日本企業にとって弱点となりやすいのが「海外法人の基幹システムを統合しきれていない」(田中啓喜・産業・流通情報サービス第一事業部第二システム本部第四システム部部長)ことだ。
田中部長は、名古屋以西のERPビジネスを担当しているが、西日本地区のERPの商談は、海外絡みの割合が年を追うごとに増えて「今では、ほとんどが海外拠点も含んだERPの刷新案件になっている」という。興味深いのは首都圏の大手ユーザー企業だけでなく、西日本の中堅・中小企業も果敢にグローバルビジネスの競争力を高めるため、ERPへの投資を積極的に行っている点だ。これまで国内と海外で基幹業務システムを分けていたユーザー企業も、日本の本社で全世界の経営データ、経営リソースをリアルタイムに把握し、経営判断の迅速化に努めようとしている姿が目立つようになっている。依然として堅調なASEANに加え、さらに自動車産業が盛んなメキシコなどへの導入も増えている。
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約20年にわたるERPコンサル経験を生かす
1990年代にERPが本格的に日本に上陸したときもそうだったが、ERP導入の難しさは企業の業務フローをパッケージにどう合わせるかだった。日本ではERPをカスタマイズしつつなじませてきた経緯があるが、それでもERPに精通したベンダーによる事前の周到なコンサルティングや要件定義を行わなければスムーズな導入は難しい。実は今でもグローバルで統一したERPを適用するときのカギを握るのが、事前の“コンサルティング”や“導入計画・準備”である。他社が手がけた事例だが、これを怠ったために「1年で導入する計画が3年かかったケース」もあるという。
日立システムズでは、(1)過去20年あまりの国内外のERP導入の豊富な経験にもとづく入念なコンサルティング(2)グローバル統合するために欠かせないネットワークやシステム基盤の構築(3)強固な情報セキュリティとヘルプデスクをはじめとするアフターサービスを3本の柱としてERPビジネスを強化。自社グループの海外拠点だけでなく、地場のビジネスパートナーも巻き込んでサポート網を充実させたところ、「他社からのリプレースも含めて、ERPビジネスが右肩上がりで伸びている」(田中部長)と強い手応えを感じている。
セキュリティとサポートも緻密に
ASEANでは日系企業の進出時期が早かったため、基幹業務システムの刷新が2巡目、3巡目となることも増えてきており、「ASEAN法人で業務フローができ上がってしまっているケースも珍しくない」(田中部長)という。コンサルティングは、まず日本の本社の経営層、次にASEAN各地の現地法人の経営幹部へと進めていく。
SAPやインフォア、オラクルなどのERPは欧米企業をモデルにして発達してきただけに、欧米企業のASEAN法人では大きな問題にならないことも、日系企業のASEAN法人では、「経営幹部への説明や、業務フロー変更に関しての説得に予想外の労力がかかる」ことがあると田中部長は話す。日立システムズでは、こうした日系の現地法人の特性も踏まえたうえで、入念なコンサルティングメニューを用意し、グローバルERP導入を支援している。
ネットワークやシステム基盤では自社で運営する国内外のデータセンター(DC)に加えて、パブリッククラウドサービスのMicrosoft AzureやAmazon Web Services(AWS)なども取り入れている。コンプライアンス対策では、日立システムズのIT資産管理・ライセンス管理システム「License Guard」をはじめとした対策ツールを駆使して対応している。
サポート面では、日立システムズの直系の拠点だけで中国4拠点、ASEAN8拠点を展開し、ERPに精通した地場の有力SIerからなるビジネスパートナーおよそ10社強と業務提携を結んで緻密に対応している。この他にも日立製作所や日立ソリューションズなど、グループ会社との連携も重視。世界各地で活用可能なリソースを総動員して日系企業のグローバルERP導入を支援している。