精密小型モーターや制御用電子回路などの開発・製造・販売を手がけるオリエンタルモーターは、マイクロソフト製ERP「Microsoft Dynamics AX(Dynamics AX)」を中国拠点で導入し、販売・会計関連のデータを一括管理して業務の効率化やビジネス拡大などを実現した。シーイーシーからの導入を通じて、製品のサポートだけでなく、中国でビジネスを展開するためのノウハウを吸収。成長路線を敷くことにつながった。
煩雑な管理の打破に向けて刷新
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稲垣邦彦・アジアカンパニー管理担当部長(左)と
上井 真・生産管理本部生産企画部課長
オリエンタルモーターは、精密小型モーターや制御用電子回路など何万品目もある製品を1台から注文を受け付け、大口の受注であっても顧客の希望する納期に出荷することを強みとしている。国内に加えて、欧米やアジアにも拠点がある。
中国への進出は2004年。上海にオフィスを設置した。設立当初は、営業を中心に新規顧客の開拓に注力し、順調に顧客が増えた。3年が経過した07年にはビジネスが軌道に乗り始めた。一方、財務業務を中心とした社内管理業務は、立ち上げ当初と比べてさほど変わっていなかった。そんな折、日本で管理業務を担当していた上井真氏(現・生産管理本部生産企画部課長)が管理部長として中国に赴任。当時の様子を上井氏はこう振り返る。「真っ先に感じたのは、販売システムと会計システムの連携に課題があること」。販売と会計が別々のシステムでデータが連携されていなかったのだ。そこで問題になってくるのが中国の会計事情である。日本と大きく異なる点が売り上げを計上するタイミング。日本は信用取引が前提で請求書を発行したら売り掛けとして計上できるが、中国は出荷から検収まで時間がかかり、検収通知を受領し、個別のタイミングで「領収書発行=売り上げ」となる。しかも、税務局が管理する通し番号が振られた領収書で処理しなければならず「販売システムと会計システムのデータが別々だと管理が煩雑になる」(上井氏)と判断した。
煩雑な管理になってしまうのは、取引きが前払いの場合と後払いである売掛金の場合があって、顧客によって異なっているからだ。加えて、オリエンタルモーターの幅広い顧客に応えるビジネススタイルによって、領収書の枚数は膨大なものだった。しかも、売掛金の管理は手作業で行っていた。「リアルタイムに財務状況が把握することができなかった」と上井氏。システム刷新を決意した。
導入後わずか半年で効果を発揮 システムを刷新する必要性に迫られ、上井氏は情報収集に奔走。「セミナーに参加したり、日系企業向けのコミュニティ雑誌を読んで資料を請求したりと、とにかく多くの情報を収集した」と上井氏は振り返る。そのなかで、「1日の変化をリアルタイムで把握するには、ERPの導入が必要との考えが強くなった」という。そこで目にとまったのがDynamics AX。販売元のシーイーシーから機能の説明を聞いているうちに「当社の課題を解決できると確信した」。すぐに導入を検討したが、本社側から「反対」との答えが返ってきた。
しかし、本社の反対にも関わらず、Dynamics AXは10年9月には稼働を開始した。これは、日本サイドの疑問に中国サイドがきちんと答えたからだ。当時、日本側の責任者だった稲垣邦彦氏(現・アジアカンパニー管理担当部長)はこう振り返る。「今でも、『金蝶』『用友』以外の会計パッケージを採用するリスクは大きい。当時、会計要員の手薄な当社でDynamics AXの採用するのは無謀」。これに対して、シーイーシーのスタッフは、ていねいに発票制度をはじめとする中国固有の制度・慣習を日本側に説明。日本側の懸念事項を一つひとつ解消し、採用に結びつけたのだ。
11年2月、稲垣氏は上海に赴任してDynamics AXを自身でも運用。「売掛金管理の精度向上など目にみえて効果がわかった」という。上井氏も、「社内の業務効率化を実現し、営業が顧客に対して価値を提供する本来の業務を遂行できた」と語る。
その後、蘇州、広州と工場を短期間で操業する際にシーイーシーのノウハウとDynamics AXの柔軟な拡張性が威力を発揮。稲垣氏は、「シーイーシーに依頼して、数か月で蘇州のシステムが稼働したとき、本当にERPのパワーを実感した。Dynamics AXで、資金繰りの精度が格段に向上し、経理部門の残業も大幅に減って業績も向上した」と満足そうに話す。
複数の中国拠点でDynamics AXを導入して成功を収め、「導入から5年が経過したことを踏まえてバージョンアップを検討している」と、稲垣氏は次のステップを語る。その際、「当然バージョンアップも、中国ビジネスに精通したシーイーシーに相談して進めていく。当社にとって、掛け替えのないビジネスパートナー」と強調する。
「中国ならではの文化を把握しているシーイーシーのサポートがあったからこそ」と稲垣氏は改めて訴える。シーイーシーのノウハウがオリエンタルモーターのERP導入を成功に導いた。