日中両国のIT企業による新たな協業が生まれた。日本産老舗クラウド事業者のニフティは、このほど大連のITサービス提供企業である大連華信計算機技術股份有限公司(大連華信)とクラウド事業の中国展開で提携した。国内有数のパブリッククラウドサービス「ニフティクラウド」の基盤を提供し、大連華信が自社のデータセンター(DC)から「華信商用雲技術サービス Powered by NIFTY Cloud」として提供している。両社の技術力と市場ノウハウを融合することで、ユーザーの要望に応える高品質なサービスとして、中国のクラウド市場を開拓していく。

急成長遂げる中国IT企業

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耿文東
大連華信計算機
技術股份有限公司
ITサービス事業部
クラウドサービス
コンサルティング総監

 大連華信は、グループ約8000人の従業員、20以上もの拠点を抱える中国の大手IT企業だ。日本のITベンダーにとっては、オフショアアウトソーシングでなじみのある企業だが、実は中国国内では各業界の企業や政府、金融機関などに対して、アプリケーションや各種ソリューションなど、包括的なITサービスを提供して急速な成長を遂げている。中国工業和信息部によると、2015年度における中国ソフトウェア提供企業の売上規模TOP100社のうちの1社となり、その額は13億3000万元にのぼると発表された。大連華信の耿文東・ITサービス事業部クラウドサービスコンサルティング総監は、「金融領域ではICカードシステムでシェア1位を獲得しているほか、Eコマース領域では20社以上の顧客へソリューションを提供している。また、日本企業が設計した国内有数のTier4レベルの高品質DCを自社で保有し、IT運用環境、ソフトウェアのコンサルティング、設計、開発などをワンストップで提供している」と説明する。

 大連華信が展開する中国では現在、クラウド市場が急速に拡大している。調査会社の艾瑞咨詢(iResearch)によると、15年の中国企業クラウドサービス全体市場規模は394億元で、19年には約3倍となる1182億6000万元に拡大する見込みだ。アリババグループやファーウェイ、3大通信キャリアなどの地場企業に加え、ここ数年の間に、Amazon Web Services(AWS)やマイクロソフトなどのグローバルクラウドベンダーが参入。トータルITサービスを提供している大連華信にも、顧客からのクラウドへの要望が増大し、対応が迫られていた。そこで、ニフティとの提携を通じたクラウド市場への参入を決断した。

高信頼性・高品質を武器に

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渡邊太郎
ニフティ
クラウド事業部
クラウドインテグレーション部
課長

 パートナーにニフティを選んだ背景について大連華信の耿総監は、「高品質な『ニフティクラウド』と、中国市場に精通する当社の強みを組み合わせることで、優位性のあるサービスが提供できると判断した」と話す。ニフティクラウドは、VMware仮想化基盤を採用したIaaS型のサービスで、高信頼性・高品質性が特徴。10年に提供を開始して以来、導入実績は5000件を超えた(16年10月末時点)。ニフティの渡邊太郎・クラウド事業部クラウドインテグレーション部課長は、「VMwareの利用ライセンス数は世界有数の規模で、VMwareと常に密な技術連携を行っている。また、運用の80%を自動化して安定性にもすぐれている」と説明する。

 ニフティとしても、クラウド事業のグローバル展開に力を注ぐなかで、規模が大きくクラウド市場も拡大路線にある中国は戦略地域と位置づけている。そこで、地場のパートナーを通じた展開を検討していた。ニフティの渡邊課長は、「中国市場に長けているだけでなく、日本企業との関係構築にも慣れている大連華信は、とても心強いパートナーだった」と話す。両社の思惑が合致し、Win-Winの関係が成立したわけだ。
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顧客の要望に全力で応える

 中国市場で提供する華信商用雲技術サービスは、競合のクラウドと比較して、地域性を重視したサービスに仕立てる方針だ。大連華信の耿総監は、「顧客に対して、高品質なサービスを組み合わせたトータルのクラウドソリューションを提供する」と説明。ただITリソースを提供するだけでなく、これまで大連華信が中国市場で培ってきた経験・ノウハウを生かし、導入コンサルティングやクラウド環境への構築のほか、自社ソリューションのクラウド上での提供など、各種サービスを組み合わせて提供する。顧客が社内環境で構築したプライベートクラウドと華信商用雲技術サービスを組み合わせることも可能だ。「現在、中国市場で利用可能なパブリッククラウドは汎用的なサービスが多く、顧客の要求を十分にカバーできているとはいえない。華信商用雲技術サービスでは、ここで差異化を図る」(大連華信の耿総監)という。

 ターゲット対象には、地場企業に加えて日系を含む外資企業も盛り込んだ。とくに、品質を求めるユーザーを中心に開拓する。大連華信の耿総監は、「中国のパブリッククラウド市場では、仮想マシン(VM)利用数10台以上のユーザーで、価格よりも品質を重視する傾向がある。この領域のお客様に使っていただきたい」と意欲を示す。

 日本市場でもニフティクラウドのユーザー層は、従来のゲーム企業やインターネットサービス企業に加え、エンタープライズ企業が増えており、社内の基幹システムの移行にあたって品質を重視するケースが増えている。ニフティの渡邊課長は、「目先のコストより、将来の機会獲得に向けた品質を大事にするお客様に長期間使っていただける。そのために、大連華信を全力でサポートしていく」と話す。

 華信商用雲技術サービスの本格的な提供はこれから。どんなサービスに成長していくのか、今後が楽しみだ。
 
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