成熟市場といわれる国内プリンタ市場において、新たな需要を創造していくため、各メーカーはさまざまな取り組みを進めている。業種・業務に特化したソリューションをはじめ、クラウド、IoT、ビッグデータなどをキーワードに、どのようにビジネスに結びつけようとしているのか。座談会では、まず2017年の市場を振り返り、そして18年の注目分野・業界、商品・販売戦略について、エプソン販売、ブラザー販売、リコージャパンの担当者に聞いた。
(司会・進行:BCN コンテンツプロデューサー 谷畑 良胤)
 
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(左から)
エプソン販売 スマートチャージ SBU スマートチャージ販売推進部 部長
北村光一

スマートチャージ製品のほか、レーザーを含むビジネスプリンタ全般の代表として参加

ブラザー販売 マーケティング推進部長
伊藤英雄

ミシン製品を除くブラザー製品全般についてマーケティングを担当

リコージャパン 経営企画事業本部 オフィスプリンティング事業センター 販売戦略室 室長
石田貴彦

国内における複合機(MFP)とプリンタの事業計画の立案と施策推進を担当

2017年度は各社とも順調に成長
技術的強みを生かした製品を投入

――まずは、現在のラインアップと主力製品について、差異化ポイントや特徴も含めて教えてください。
 
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北村(エプソン販売) お客様のさまざまな出力ニーズにお応えできるラインアップを揃えています。特徴的な製品は、昨年6月に発売したPrecisionCoreラインヘッドを搭載した高速ラインインクジェットプリンタの「LX-10000Fシリーズ」で、大量印刷をするお客様に向けて、100枚/分の高速印刷を実現しています。

 一方、分散印刷や小規模オフィス向けには、スマートチャージの「PX-M7070FX/PX-S7070X、PX-S840X」、インクカートリッジモデルのA3インクジェット複合機「PX-M7050F」があり、さらに小規模なお客様には、A4インクジェット「PX-M884F/781F」があります。業種・業務向けには従来のA4機に加えてA3機をエコタンク搭載プリンタにラインアップしたほか、モバイルプリンタの「PX-S05」があります。レーザープリンタもA4、A3でカラーを含めてラインアップは豊富で、中心機種は「LP-S7160/S6160」です。
 
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伊藤(ブラザー販売) 当社は、インクジェット17製品、レーザー20製品のうち、MFPが11製品とシングル機が9製品、そして高速インクジェット1製品をラインアップしています。特徴はコンパクトサイズや低ランニングコストの実現で、得意としているSOHOを中心に、小規模環境のお客様に支持されています。

 特徴的な製品は、2008年に市場に投入したA3のビジネスインクジェットで、17年1月に発売した「MFC-J6995CDW」などの3製品が順調に伸びています。レーザーは一昨年から、当社としてハイエンドにあたるモデルを投入しており、60万枚の高耐久かつコンパクトなA4モノクロレーザープリンタ「HL-L6400DW」なども加えて、より上位層への浸透を図っています。特定用途向けでは、モバイルプリンタやラベルプリンタをラインアップしています。
 
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石田(リコージャパン) 当社もお客様のニーズにお応えできるラインアップを揃えています。中心は、上位機ではA3機で55枚/分(A4)の「SP C841/C840シリーズ」、下位機ではA4期で20枚/分(A4)の「SP C260シリーズ」です。

 特徴は、特定業種向けのラインアップを揃えていることに加え、各業種のニーズに合うソリューションとセットで販売できることです。例えば、百貨店、スーパー向けにお歳暮などのギフトの配送ラベルに特化したモデルや、薬袋などの調剤薬局向けモデルを以前からラインアップしています。従来、自治体や医療分野に強みがありましたが、最近はインバウンド向けの簡単免税申請用アプリケーションを揃えるなどして、お客様、パートナーの方々に訴求しています。

――17年度を振り返り、市場観はいかがでしたか。販売実績やトピックがあれば聞かせてください。

石田 非常に好調でした。とくにカラーレーザーとジェルジェットは台数ベースで二桁成長しました。一般オフィスはダウントレンドではありますが、医療分野は市場がとくに盛り上がってきています。流通分野は開拓が進みつつあるという状況です。さらに自治体については、総務省が進めたネットワーク強靭化への取り組みが追い風になって、対応を図った製品の販売が拡大しました。

伊藤 当社のレーザー製品はA4のみですが、モノクロは市場トレンドが横ばいとされるなかで、多店舗案件の獲得などもあって伸長できました。ビジネスインクジェットについては、17年1月にA3機のラインアップを一新したこともあって、ビジネスを牽引してくれました。以前から強みとしていた建築や不動産分野に加えて、広い分野での需要を取り込むことができました。

北村 やはりレーザープリンタ市場は横ばいですが、インクジェットプリンタ市場は伸びていると思います。レーザープリンタでは当社はA3機の販売に注力して、カラー機ではお客様のプルを引き出す販促策を進めています。例えば、恒例のお得祭り、キャッシュバックキャンペーンなどです。モノクロ機では公共案件のリプレース需要を取り込み、レーザー全体で1割増を達成しました。

 一方、インクジェットプリンタはかなり伸びました。エコタンク搭載プリンタをはじめとして、新たなニーズの開拓につながっています。レーザープリンタやインクカートリッジ型をお使いのお客様の買い替え需要を喚起できていると考えています。
 
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高速ラインインクジェット複合機/プリンタ
エプソンのスマートチャージ
「LX-10000Fシリーズ」
印刷速度:100枚/分 
本体価格:260万円 

カウンター・チャージプラン、インク・ スタンダードプランの場合。
オール・イン・ワンプラ ン(ファクス機能付き)の場合は月額7万2000円~新開発のPrecisionCoreラインヘッドにより、イン クジェットで100枚/分の高速印刷。
さらに高画質と低コストを実現。 同価格帯のレーザー方式と比較しスピード2倍、またインクジェットならではの低コストで、オフィスのセンターマシンとして活躍できる商品。
 
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ビジネスプリンター
「PX-M884F」
印刷速度 24ipm 
本体価格 オープンプライス

インクの大容量化が可能なインクパックシステム搭載。インクパックをプリンター下部に内蔵することで、省スペースと大容量インクを両立。また、ファーストプリントはエプソンのビジネスインクジェットプリンターでは最速の カラー5.3秒、モノクロ4.8秒で対面業務でもお客様をお待たせしない高パフォーマンスモデル。

施策の核は特定業種への特化
パートナーとともに推進する

――17年に進めた販売施策とその成果について教えてください。

北村 取り組んだ施策は大きく3点です。1点目は、17年は過去最大規模の新製品群を投入しました。高速ラインインクジェットプリンタやエコタンク搭載プリンタのラインアップ強化をはじめ、インクを大容量化したインクパック搭載の「PX-M884F」など、強力な製品が揃いました。2点目は、モノクロレーザープリンタ、インクジェットプリンタを中心に、パートナーの方々とタッグを組んで業種用途の案件獲得に取り組みました。SIerの方がもつソリューションと組み合わせたり、教育委員会に地場の販社と組んで売り込むといった取り組みを進めました。3点目は前述のプル施策で、インクジェットのローエンドモデルを中心に訴求し、引き合いを多くいただいています。

伊藤 16年に当社のハイエンドにあたるレーザー製品を投入したタイミングに合わせて、業種向けソリューションやサポートを強化しています。医療分野からスタートし、昨年からは製造、物流へと拡大しています。先行した医療では、引き合いをいただける数が着実に増えつつあります。

 具体的には、製品のカスタマイズに柔軟に対応するなどの取り組みを、海外の販社の事例も参考にしながら進めています。クリニックや調剤薬局といった小規模ユーザー向けには、1台でさまざまなサイズの帳票に対応したり、流通向けでは、小規模店舗に向けてFAX付きモデルを用意するなど、細かなニーズに対応するようにしています。サポートでは、当日保守などのお客様に応じた細やかな対応を行うことでメニューの充実を図っています。

石田 やはり特定業種向けの施策です。例えば自治体のネットワーク分離で、インターネット、LGWAN、住基ネットが存在するなかでも、1台のプリンタで複数ネットワーク(最大3系統)からの出力に対応できるインターフェースオプションを提供しました。これが拡販に貢献しました。

 流通向けは、10.1インチパネルを搭載した「SP C841/C840シリーズ」が中心です。大型量販店などの本部で、POPを作成してあらかじめ印刷条件を指定してサーバーに入れておくと、各店舗で出力時に印刷条件の設定をすることなく印刷できる無償アプリを提供しています。医療系はちょうど入れ替えのタイミングなので、パートナーと協業してニーズを取り込む施策やMIF(市場稼働台数)拡大に向けた取り組みを進めています。また、ディストリビュータチャネルなど、販売体制の強化も図っています。このほか保守サービスのM-PaC(エムパック)の販売も非常に好調です。

――今、企業の大きなテーマに働き方改革がありますが、プリンタとの親和性は考えられますか。

石田 場所にとらわれない働き方でいえば、「リコー LFプリントサービス AE2」があります。これは出張先で緊急に資料などの出力が必要な時に役立つサービスで、社内LANにアクセスできなくても、クラウド経由で営業所のオフィスに設置された対応機器などから安全にプリントできるものです。また、オンプレ型ではRICOH e-Sharing Boxを使うと、外出先で手元にない資料の確認や受信ファクスの確認ができます。

伊藤 当社の製品は、働き方改革と親和性が高いものが多いと考えています。例えば、在宅勤務やサテライトオフィスでは、レーザー、インクジェットともに小型でコンパクトのため設置場所に困りません。業務効率化では、持ち運びが容易なモバイルプリンタを活用すれば、現場で見積りや提案書を印刷できます。また、ウェブ会議システム「OmniJoin」も提供していますが、クラウドサービスのため、ローコストで手軽に会議システムを導入できます。実際、当社内でも活発に活用しています。

北村 当社もブラザーさん同様に、在宅勤務への対応です。一例を挙げると、ある保険会社では外交員の方が在宅勤務でプリントする際、消費したインクの負担をどうするかが課題でした。そこで、長期間、インク切れの心配がなく利用できるエコタンク搭載モデルを提案したことで、採用いただきました。また、モバイルプリンタをタブレット端末と組み合わせると、どこでも簡易的なオフィス環境を実現できます。今後は、Googleクラウドプリントなどとの連携も検討したいと考えています。
 
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プリンターメーカー座談会に関するアンケート

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