アクロニス・ジャパンは2018年10月4日、同社のバックアップソリューション「Acronis Backup」とストレージを自由に組み合わせて購入するライセンス「Acronis Backup ストレージバンドルライセンス」の提供を開始した。この新たな形態でのライセンスはグローバルに先駆けて日本で先行提供されており、第1弾としてネットアップ製ストレージとのバンドル製品がネットワールドを通じて販売されている。このAcronis Backup ストレージバンドルライセンス提供の意図や今後の展開について、アクロニス、ネットアップ、ネットワールドの担当者に話を聞いた。

(左から)アクロニス・ジャパンの津村英樹・パートナー営業本部長、
ネットワールドの黒川拓生・執行役員マーケティング本部本部長、
ネットアップの北野 宏・執行役員アライアンス営業推進本部本部長
 

アプライアンスの良さとハードウェア非依存というメリットの「良いとこどり」

本多 昨年10月に提供を開始された「Acronis Backup ストレージバンドルライセンス」について、この施策が登場した背景を教えてください。アクロニスにおいては、バックアップに関して、ユーザーのどのような課題を解決できると考えたのでしょうか。

津村(アクロニス) この数年で、ユーザーがバックアップを取りたいと考える対象は大きく広がりました。最大の課題としては、対象のシステムが多様化する中で、対象ごとにかかるバックアップシステムのライセンスコストが膨らんでいることが挙げられます。

 災害対策の一環としてのバックアップに対する認識が高まる一方、増大するコストを抑えるためにバックアップ対象を絞り込まなければならず、結果的にクライアントのデータは、ユーザー各自がUSBなどへのコピーで行うような運用が増え、セキュリティーリスクを高めてしまっているケースも見受けられます。
 
アクロニス・ジャパン
津村英樹
パートナー営業本部長

 一方で、そうしたバックアップの課題を解決するための潮流の一つとして「バックアップアプライアンス」への関心が高まっています。バックアップアプライアンスのメリットは、ハードウェアとして購入してしまえば、その容量の範囲内でユーザーは自由にバックアップを取ることができることです。ライセンスコストの面では非常に優れた解決策ですが、その半面、バックアップが可能な容量がアプライアンス側の容量に依存してしまったり、アプライアンス自体の信頼性がアプリケーション側の求める信頼性に見合わなかったりするケースが出るといったデメリットもあります。これは、アプライアンスのハードウェアに依存する課題です。

 Acronis Backup ストレージバンドルライセンスでは、容量課金というバックアップアプライアンスのメリットを継承すると同時に、バックアップ先のハードウェアに依存するデメリットを、ハードウェアを限定しないことで解消することを目指しています。

 ネットアップは、要件も容量も非常にバラエティーに富んだストレージを持っておられます。お客様ごとのニーズにあったものを、バンドルライセンスで導入いただくことで、バックアップコストと、容量や信頼性の課題を同時に解決していただけると考えています。

黒川(ネットワールド) バックアップについては、対象ごとのライセンスコストが膨大になってしまうという点が、その重要性を訴求する上でネックになりがちでした。今回のスキームでは、そうした懸念は少なからず払拭されると期待しています。

津村 バックアップ対象のサーバーが60台の、ある組織で試算してみたところ、従来のライセンス形態と比較して、容量ベースのバンドルライセンスではコストが約3分の1になるといった結果も出ています。これは特に効果が大きかった例ですが、一般的に見ても半額程度までのコスト圧縮は十分に期待できると思います。

本多 このソリューションにおける、アクロニス、ネットアップ、ネットワールドという3社の組み合わせは、どのようなシナジーやユーザーメリットを生むと考えていますか。

黒川 当社の独自調査ですが、既存のユーザーにAcronis Backupとネットアップストレージの組み合わせをバックアップシステムとして利用しておられる方が多かったというのがあります。そのため、最も多くのお客様にメリットを感じていただける組み合わせだと考えました。

津村 今回のストレージバンドルライセンスは「バックアップ容量」に対する課金になりますが、これは「バックアップ対象のボリューム容量」ではなく、「実際にバックアップストレージを使った容量」への課金です。ネットアップは非常に優れた重複排除技術、データ圧縮技術を持っています。つまり、そうしたベンダーの製品でバンドルライセンスを使うことが、ユーザーにとってはメリットを最大化することにつながります。

北野(ネットアップ) 今回のソリューションについては、パフォーマンスの高さというよりも、高い操作性、管理性といったネットアップストレージの特徴が大きな付加価値を生むだろうと考えています。ネットワールドは、ソリューションセールスに優れたディストリビューターです。今回の新しいソリューションを提供していくに当たっても、さまざまな側面からバックアップしていただけると期待しています。
 
ネットアップ
北野 宏
執行役員
アライアンス営業推進本部
本部長

黒川 今回のソリューションは、特にアクロニスにとっては世界に先駆けて日本が最初の市場になると聞いています。そのディストリビューターとしてわれわれを選んでいただいた以上、期待に応えられるよう、積極的に訴求していきたいと考えています。

バックアップを「サイバープロテクション」「データマネジメント」の付加価値に

本多 各社の今後のビジョンについて、お話しいただけますでしょうか。

津村 アクロニスは今、「バックアップ」ベンダーから、より総合的な「サイバープロテクション」ベンダーへの変革を目指しています。これは、機器の故障やメディアの経年劣化といったものに由来する物理的な消失・損壊だけでなく、サイバー攻撃による改ざんや消失といった事態からも、データを幅広く保護していくという考え方です。そうした視点から、ブロックチェーン技術を取り入れ、改ざんリスクを削減できるデータ管理ソリューションや、アンチランサムウェアのプロダクトなどもラインアップに加えています。

 こうした拡充の中で、バックアップというものを、重要なデータを確実に保護していくサイバープロテクションのためのソリューションの一部として付加価値化していきたいと考えています。実は、ストレージバンドルでは、こうしたランサムウェア対策やデータ改ざん防止の仕組みも標準でライセンスに含まれています。今回のソリューションを通じて、バックアップだけでなく、より幅の広いサイバープロテクションを視野に入れたデータ保護に取り組んでいくべきという提案をしていきたいと考えています。

北野 ネットアップは現在、総合的なストレージベンダーとして業界でもほぼ唯一と言っていい存在になっていますが、われわれもアクロニスと同様、ベンダーとしてのトランスフォームのさなかにあります。データの保存先としてのストレージを提供するだけでなく、より広範なデータマネジメントソリューションを提供していこうというのが、その変化の方向性です。

 引き続きストレージへの投資も続ける一方で、それ以上に今後はエンタープライズシステムに入り込んでくるであろうコンテナのようなテクノロジーにも投資領域を広げています。Kubernetes連携ソリューションの「Trident」などは、その成果の一つです。特に日本では、欧米に比べて新たな技術の導入や活用が進むのに時間がかかる傾向がありますが、われわれとしてはデジタル・トランスフォーメーション(DX)の必要性を訴えると同時に、日本独自のDXに向けたシステムの作り方、そのための手法や、ネットアップがそれをどうサポートできるのかといったことについて、さまざまな形でお伝えしていきたいと思っています。

黒川 ネットワールドとしては、バックアップにせよ、ストレージにせよ、メジャーなベンダーの製品、ソリューションを全て取り扱っており、自社で内容をしっかりと検証しながら、後ろ盾となって提案できるスキルを持っているという自負があります。今回のネットアップとの組み合わせによるAcronis Backup ストレージバンドルライセンスも、自信を持ってお客様に提案できるものです。特に今回については、世界に先駆け、日本で先行して提供されるものであり、それをネットワールドが独自に展開できるという点で、非常に大きなチャンスだと考えています。
 
ネットワールド
黒川拓生
執行役員
マーケティング本部
本部長

編集長の眼

 常に生まれ続ける新たなセキュリティーリスクへの対応を考慮すると、バックアップの重要性は高まる一方だ。さらに日本は災害大国である。ディザスターリカバリー(DR)の観点でも、ITユーザーのバックアップへの意識は高まっている。

 一方で、ユーザー企業のIT投資はデジタルビジネス領域など、企業の成長に直結する“儲けるためのシステム”にシフトしている。バックアップにかかるコストはなるべく下げたいというのが偽らざる本音だろう。ライセンスコストを節約するための有力な選択肢であるバックアップアプライアンスにしても性能がハードウェアに依存してしまうという課題がある中で、Acronis Backup ストレージバンドルライセンスはまさにそのソリューション(解決策)を提示した感がある。

 業界有数の総合ストレージベンダーとしてポートフォリオを拡大してきたネットアップ、データマネジメント領域のソリューション提案に定評のあるネットワールドという3社の強力タッグによる世界に先駆けた新たなビジネスの開拓に期待は高まる。