Special Issue

サイバープロテクションのソリューションプロバイダーがパートナーと共創する社会的価値とは?

2023/07/14 09:00

 今日、多くの企業が「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)」に取り組むなど、社会貢献を経営戦略として遂行しようとしている。そうした取り組みをパートナー戦略として推し進めているのが、スイスとシンガポールに本社機能を置き、日本を含む150カ国でビジネスを展開しているサイバープロテクションのソリューションプロバイダー、Acronis(アクロニス)だ。同社CEOのパトリック・プルヴァミュラー氏とSVP Business Operations & Chief of Staffのアローナ・ゲックラー氏に、Acronisのソリューションとパートナーの戦略について聞く。

ソリューションのシンプルさを強みに

 企業を狙うサイバー攻撃は高度化、悪質化の一途をたどっている。その攻撃から事業運営に欠かせない重要データ、あるいは外部への流出が許されない重要データを守る上では、脅威の侵入を防ぐ「防御」の対策のみならず、万が一の脅威の侵入に備えた対策も整えなければならない。

 すなわち今日では、米国国立標準技術研究所(National Institute of Standards and Technology:NIST)のサイバーセキュリティフレームワーク(CSF)などに沿ったかたちで、ITシステムに内在するリスクの「特定」から、脅威に対する「防御」「検知」「対応」、そして「復旧」に至るまでの対策・体制を整備することが、サイバーリスクを引き下げるための必須施策となりつつあるわけだ。加えて、近年における最も深刻な脅威といえるランサムウェアを使った攻撃への備えを固めるためには、データ保護(データバックアップ/復旧)の仕組みも整備・強化する必要がある。

 Acronisが提供する製品「Acronis Cyber Protect」は、NIST CSFなどに則ったサイバーセキュリティの機能とデータ保護の機能を包括的に提供するソリューションだ。製品としては、サービスプロバイダーに向けた「Acronis Cyber Protect Cloud」も用意されている。

 「Acronis Cyber Protectの最大の強みは、サイバー攻撃から企業のデータを保護するために必要な機能が一括して提供される“シンプル”さ」と、パトリック・プルヴァミュラーCEOは語り、次のように続ける。

 「サイバーセキュリティやデータ保護の市場は競争の激しいビジネス領域だが、多くのセキュリティベンダーは、例えば、AI(人工知能)を使った次世代型ウイルス対策ソフト(NGAV)をはじめ、エンドポイントにおける脅威の監視と検知、調査、対応を自動化・効率化するEDR(Endpoint Detection and Response)、さらにはデータ保護など、特定の領域に焦点を絞った製品づくり、製品提供を行っている。そのため、ユーザー企業や販売パートナーは、対策ごとに製品を選り抜き、組み合わせて使わなければならない。対してAcronis製品の場合、業界最高水準レベルのアンチウイルスやEDR、データ保護をはじめ、ディザスタリカバリ、自動化、エンドポイント管理などの機能が、統合されたかたちで提供される。これは、パートナーやユーザー企業にとって扱いやすく、コストパフォーマンスに優れたソリューションであり、だからこそ、数多くのお客さま、そしてパートナーに選ばれている。事実、パートナーがTCOを60%削減できたという実績もある」
 
パトリック・プルヴァミュラー
CEO

 プルヴァミュラーCEOの言うとおり、Acronisのユーザー企業の数はすでに世界約75万社に上っている。また、Acronisのソリューションを扱うパートナー(サービスプロバイダー)の数も世界で1万8000を超えている。

パートナーの成功を支援する

 Acronisは2003年の創設以来、間接販売を中心に製品を普及させてきた。そのため、パートナー支援の体制、サービスも充実している。

 この点についてSVP Business Operations & Chief of Staffのアローナ・ゲックラー氏は「パートナーは当社ビジネスの中核であり、パートナーの成功を支える優れたツール、サービスを提供することは、当社の成功に直結した取り組みといえる」と語り、そのパートナー支援の取り組みとしてトレーニングに特に力を注いでいるとする。

 「当社がパートナーに向けて提供しているトレーニングは、単に製品の使い方を習得したり、パートナー認定を取得したりするためだけのものではない。そのプログラムには、当社のMSPとしてのビジネスモデルの構築法や製品セールスの手法、ITインフラの継続的な保守・運用管理のトレーニングなどが含まれている。また、トレーニングプログラムは各国向けにローカライズされており、日本でもすでに約150社がトレーニングを受け、当社の認定パートナーになっている」(ゲックラー氏)
 
アローナ・ゲックラー
SVP Business Operations & Chief of Staff

 このトレーニングは「アクロニス#CyberFitアカデミー」として常に新しいトレーニングプログラムを追加・拡大し続けており、現在20のクラウドセールスとテクノロジーのコースを日本語で提供中だが数カ月のうちにさらに数を増やしていく予定だ。このプログラムには、パートナーのセールス担当者からITエンジニアに至るまで、さまざまな要員に向けた研修プランが実装されているという。さらに日本では、2023年夏には数多くのパートナーを集めた初の「ブートキャンプ」が実施され、製品のトレーニングと併せて、ビジネスモデル構築のトレーニングが集中して行われるもようだ。

 「当社によるパートナー支援のプログラムは、パートナーの成功をサポートすることを主眼としている。そのため、技術面でのサポートだけではなく、ビジネスの成長にフォーカスしたサポートにも力を注いでいる。そうした支援の一環として、当社のソリューションのセールス展開やマーケティングをサポートするためのマテリアルも積極的に提供している」とプルヴァミュラーCEOは語る。

パートナーとともに取り組む社会貢献活動「アクロニスサイバー財団プログラム」

 パートナーの“成功”をバックアップするという意味では、Acronisではもう一つ、他のIT企業ではなかなか例を見ない取り組みも推進している。それは「アクロニスサイバー財団(Acronis Cyber Foundation)プログラム」である。

 同プログラムは、公平な社会をパートナーとともに築いていく取り組みであり、18年にスタートを切った。23年までの5年間で18の学校とコンピューター教室を開設。5500人以上の子どもたちに学習の場を提供することに成功している。

 また、同プログラムでは世界各地で移民、子ども、若者、高齢者などを対象としたITトレーニングプログラムも展開し、雇用と学習の機会を増やそうとしている。すでにスイスにおいて移民のITスキルの向上に取り組んだほか、シンガポールではシニアや若者向けにサイバーセキュリティやサイバー詐欺に関する啓発セッションやワークショップを複数開催している。

 さらに、20年の新型コロナウイルス感染症の流行時には人道支援プログラムを発動し、コロナ禍によって危機的状況にあったグアテマラ、ペルー、セネガル、レバノン、南アフリカのいくつかのコミュニティに食料品、衛生用品、文房具などを供給している。

 「当社では、社会貢献は企業の当然の責務であると考えており、それによって自分たちの社会的価値とサステナビリティが高められると認識している。その活動をパートナーとともに展開することは、私たちがパートナーに提供できる付加価値の一つでもある。これからも、より多くのパートナーにアクロニスサイバー財団のプロジェクトに参加していただき、お互いの絆を強めながら、それぞれの従業員の満足度や企業としての社会的価値、そして社会貢献の裾野を拡大していきたいと願っている」とプルヴァミュラーCEOは語った。
  • 1

関連記事

アクロニス・ジャパン、事業体制を再編し、営業力を強化 新規パートナー獲得に注力

アクロニスの「Cyber Protect Cloud」バックアップオプション、IIJが採用

アクロニス・ジャパン あらゆる脅威からシステムを守る発想 セキュリティもデータ保護も同時に提供

外部リンク

アクロニス・ジャパン=https://www.acronis.com/ja-jp/