監視カメラのハードウェア、ソフトウェアに加え、AIを搭載したクラウド型監視プラットフォーム「VORTEX」などを開発し、インテリジェントな監視社会の実現をリードする台湾VIVOTEK（ビボテック）。同社が開発した最新AI解析技術である、自然言語の入力で目的のシーンを瞬時に探し出す検索機能が注目を集めている。技術の詳細と、それがもたらす可能性について、ビボテックジャパンの佐藤稔浩社長に話を聞いた。

創業25周年のグローバルな　セキュリティソリューションプロバイダー

　2025年に創業25周年を迎えるVIVOTEKは、台湾で創業したグローバルなセキュリティソリューションプロバイダーだ。10年に南米チリで起きた鉱山落盤事故の救出活動では、同社の小型ネットワークカメラが活用された。同社は世界100カ国以上で事業を展開しており、日本でも18年にビボテックジャパンが発足。日本市場のニーズに合わせた製品・サービスの提案やサポートなどを行っている。
 
　VIVOTEKはネットワークカメラやネットワークビデオレコーダー、それらの管理ソフトウェアなど幅広い製品を提供している。さらに、プラットフォームは利用環境や目的に応じてオンプレミス、クラウド、ハイブリッドクラウドから柔軟に選択することが可能だ。

　そのラインアップの中で、ビボテックジャパンが注力するのがAIを活用したクラウド型監視プラットフォーム「VORTEX」だ。佐藤社長は「従来の監視システムは、膨大な映像データから目的のシーンを探し出すのに多大な時間と労力を要した。AI、特にわれわれが注力するVLM（Vision Language Model）のような技術は、この『探す作業』を劇的に効率化する」と語る。

「赤ちゃんを抱いている大人」など自然言語で検索が可能

　VIVOTEKはAIによるビデオ分析機能をいち早く製品に実装し、三つのフェーズで技術革新を重ねてきた。例えば第1フェーズでは、映像内に仮想のエリアを設定して、その中の人物や物体の動きを検知できるようにした。第2フェーズでは、人物や車両の属性、服の色などでの検索に対応し、3年前からこの機能を提供している。

　最新の第3フェーズでは、視覚情報と言語情報を統合して処理するAIモデルのVLMを取り入れ、自然言語で検索できるようになった。例えば「赤ちゃんを抱いている大人」「昨日の昼間に大きな荷物を持っている人」などと入力すれば、それに合致する場面を映像データの中から迅速かつ的確に見つけ出してくれる。自動車なら「A社のセダン」と、メーカーや車種での絞り込みも可能だ。
 
　VORTEXは複数のカメラをクラウドで一元管理するため、例えばショッピングモールなどでの迷子捜索にも役立つ。異なるカメラ、時間帯から対象の迷子を検索・抽出し、その子の移動経路を探ることが可能だ。

　「これらの検索は、カメラ（エッジ）側で撮影した映像自体でなく、撮影と同時に生成しクラウドにアップロードした検索用メタデータで行っている。メタデータは映像データより容量が軽いため、クラウドを圧迫することはなく、さらにリアルタイムアラートも実現できている」と佐藤社長は強調する。

防犯だけではなく業務改善にも　グローバル品質と日本市場での最適化

　IP監視ソリューションの用途は、不審者のトラッキングといった防犯対策にとどまらない。例えば物流倉庫では、進入禁止エリアでのフォークリフトや荷物の放置監視、ヘルメットや安全ベストなどの着用確認、といった安全管理の向上に貢献している。工場の生産ラインでは、生産性が低いプロセスの録画映像を解析し、オペレーションやリソース最適化につなげたケースもある。アイデア次第で活用の可能性は大きく広がるだろう。

　VIVOTEKのネットワークカメラは多彩で、固定ドーム型やバレット型はもちろん、火災検知に使えるサーマルカメラ、駐車場などのナンバープレート認証カメラなどを取りそろえている。さらに、出入口管理や勤怠管理に使える顔認証カメラといった特定用途向けの製品も用意しており、多様なニーズに対応可能だ。

　佐藤社長は「ビボテックジャパンは、グローバル品質と日本市場への最適化を両立させた製品を提供中だ。初めてのお客様も安心して利用できるよう、日本語でのサポート体制を確立し、製品説明やトレーニング、導入支援、販売促進資料も充実させている。ぜひ、グローバル品質のビボテック製品を体験していただきたい」と呼び掛けた。