11月12日のBCNセッション(特別講演)では、ITビジネス研究会の代表理事で、IT産業ジャーナリストの田中克己氏が登壇。「広がる生成AIとAIバブル崩壊? ー IT産業へのインパクトー」と題して、生成AIがIT産業、特にソフトウェア開発業について話した。
一般社団法人 ITビジネス研究会
代表理事 兼 IT産業ジャーナリスト
田中克己氏
近年最大のITトレンドである生成AIは、目覚ましいスピードで世の中に浸透している。対話型はWeb検索代わりに使われており、エージェント型もオフィススイートや業務アプリに組み込まれ始めた。田中氏は「そうしたAIの躍進が雇用に与えるインパクトも明らかになっている」と述べて、米国のAccenture(アクセンチュア)、IBM、Amazon(アマゾン)といったテック企業で解雇や人員削減が進み、IT産業の失業率が高まっている現状をレポート。業界を問わず、労働時間も減少傾向にあると指摘した。
しかし、生成AIの効果は必ずしも高くない。今年夏に発表された米マサチューセッツ工科大学のレポートでは、「生成AIに投資する企業の95%までがゼロリターンに終わる」とのこと。生成AIツールは個人の生産性を高めるが、企業の利益向上には寄与しないのである。それにもかかわらず、生成AIに関わるIT企業の時価総額は軒並み上昇し、米Google(グーグル)、米Meta(メタ)、米Microsoft(マイクロソフト)などは生成AIに多額の投資を実行中。「米Goldman Sachs(ゴールドマン・サックス)のCEOはAIバブルの崩壊を懸念している」と田中氏は言う。
一方で、ソフトウェア開発現場での生成AI活用は順調に進む。「開発者の90%以上がコーディングに生成AIツールを使って作業時間を短縮している」と、田中氏。工程別ではコーディングとコードレビューと要件定義での活用が多く、開発者の89.7%が導入を肯定的に評価しているという。
もちろん、ソフトウェア開発領域での生成AI活用には影の側面もある。米調査会社Gartner(ガートナー)のレポートによれば、ポジティブな成果のトップ3は、生産性の向上(57.9%)、コード品質の向上(44.1%)、ドキュメント品質の向上(33.6%)。その半面、「成果がない」という回答も10.7%あり、具体的な課題としては「セキュリティー」「著作権」「保守性の低下」などが挙がっているという。
このような状況下で、日本の大手ソフトウェア企業はシステム開発に生成AIを積極的に適用しようとしている。開発ツールとして多く採用されているのは、「GitHub Copilot」。ほとんどのソフトウェア企業は開発工数の数十%削減を目標としている。
「将来的には、要件を入力するだけで、人手を介さずに業務システムをつくれるようになるのかもしれない」と田中氏。そうした進化に対応するにはビジネスモデルやIT人材/スキルを再定義しなければならない、と指摘し講演を締めた。