──今後はどのようにハイエンドにアピールするかが市場開拓の鍵となりそうですが、販売戦略を教えてください。
新免 通信キャリアに関して申しあげますと、欧州で成功事例が増えています。海外の成功事例の要素を社内で共有し国内で展開するべく、チームを編成して販売活動を始めたところです。新しく設置した部署は「市場開発部」といいます。ありふれた名前ですが、字のごとく市場を開発する部なので(笑)。市場開発部を新設して、対象のマーケットセグメントのエンドユーザーに、メッセージを直接伝えることができる体制を構築しました。
──SMBを主軸に次の成長戦略として大企業、通信キャリアを開拓するとのことですが、パートナー施策で計画されていることはありますか。
新免 SMBには引き続き力を入れて製品の供給を行っていく、ということは大前提として、上位レイヤーを狙っていけるインテグレータさんとの関係を強化します。今回もう一つの組織改変は、インテグレータを積極的に開拓する部署を設けたこと。これは営業部署ですが、大手電機メーカーさんや日本の独立系のSIer、NIerとエンゲージすべく活動しています。
キャリア開拓でクラウド展開も
──先日、新しいトピックとして「FAMS」というUTMの管理、ログ分析・レポーティングサービスを発表されましたね。
新免 UTMのような高度なセキュリティ防衛製品は、ネットワーク上で何が起きているかを出力するログなどを使って監視・分析することで価値を確認できます。それにはログ管理サーバーや、レポーティングのための管理ツールが必要です。ところが、SMB市場で高額なログ管理製品を入れている企業はきわめて少ないことから、UTMの存在価値をすべて引き出せているわけではない。
メーカーとしていかに支援できるかと考えたとき、当社が販売するUTMの管理、分析・レポーティングのためのサーバー製品を、サービスとして提供することで、高額なコストやソフトウェアのインストレーション、製品運用といった煩雑な作業からユーザーを解放することができるわけです。国内では、それを代理店さんが自らのパッケージとして使っていただくのもよし、再販されるのもよし、さまざまな形での提供方法を考えることができます。
一方で、“本当のクラウド”も展開したいと考えています。その鍵が通信キャリアの開拓です。今はオフバランスをする動きが盛んです。サービスとしてセキュリティ機能を供給することが、今後の趨勢になると理解しています。当社の製品をデータセンターに設置し、クラウドからセキュリティ機能をご利用いただく。それを実現するにあたり、不可欠なのがコストダウンです。一定のサービスレベルもさることながら、そもそも顧客が喜ぶだけの機能があるかどうか。「FortiGate」は機能、性能面、コスト面で顧客のニーズを満たし、積極的にその分野に導入いただける製品として準備できています。
眼光紙背 ~取材を終えて~
落ちついていて、言葉を選んで簡潔にまとめるスマートな話し方。容姿は、シアトルマリナーズのイチロー選手に似ている。「周りから、よく言われるんですけど、向こうが僕に似たんですよ」とか、「お気に入りの本を『こち亀』にしようかとも思っていたんですよ」と冗談を飛ばす気さくなリーダーだ。
現在41歳。IT業界には外資系で若手経営者がトップに立ち、市場でのプレゼンスを高めている企業がほかにもある。「いま、業界全体の成長率がフラット、もしくはマイナス気味になっている。当社はこの業界の流れをプラスに転じるよう促していきたい」と新免社長はきっぱりと言い切る。
国内ではUTMは中小企業専用の意識が強く、また他メーカーでもそのようにアプローチしていることがある。ハイエンドへの製品アプローチの積極化は、国内のセキュリティ市場の方向を転換する大きな波となるのだろうか。(環)
プロフィール
新免 泰幸
(しんめん やすゆき)ネットワークとセキュリティ業界において20年近い経験を積む。NECでセールスプロモーション、アライドテレシスではシステムエンジニアリングマネージャー、そして日本アバイア、日本ルーセントテクノロジーでシニアプロダクトマーケティングマネージャーに従事する。前職ではノキアジャパンのジェネラルマネージャとして、企業向けインターネットセキュリティとビジネス向けスマートフォンのマネジメントに携わる。フォーティネットでは大規模向けビジネス部門のセールスディレクターを務め、今年6月に現職。
会社紹介
UTM(統合脅威管理)アプライアンスで高いグローバルシェアを誇るセキュリティベンダー。メールセキュリティ製品や、エンドポイント製品、データベース監査製品などを幅広く手がける。米本社のFortinetは2000年、カリフォルニア州サニーベールで設立。日本でもSMBを中心にUTMで高いシェアをもつ。