パートナー強化で、新規開拓も
──法人向けではTMLP、TMSといった需要の高いソリューション、また今後仮想化で新しい商材の市場投入を計画されているとのことですが、今後注力する商材、またパートナー戦略について強化する点はありますか。
大三川 注力商材としては、引き続きTMLP、TMS、仮想化環境についても力を入れていく方針で、既存パートナーに対してTMS、TMLPなどの販売支援プログラムを強化していきます。
導入に関する部分、コンサルティング分野で、アジア地区にも非常に多くの日系企業が進出しているので、アジアに展開する日系企業も含め、SIerなどと協業も増やし、新しいサービスを提供する準備をしています。
われわれだけではすべてのサービスを提供できませんから、パートナーさんには、ライセンスを販売するだけでなく、サービスやコンサルティングを一緒に提供してもらうことが非常に重要です。来年はVLE(Very Large Enterprise)開拓にフォーカスした新規SIer30社とのパートナーシップによって、大企業のインフラ構築、クラウドサービスなどに向けて、協業範囲を拡大します。われわれは得意分野を集中・強化して、パートナーがもっているソリューションを組み合わせて提供する。ユーザー企業の環境をいちばん理解しているのは取引のあるパートナーなので、パートナーが第一義的に全体をみて、当社が後方支援します。
──サービスなどにも力を入れるとのことですが、事業を推進するうえでの社内体制に対する施策を教えてください。
大三川 企業の寿命は30年という「30年周期説」というのがあります。これまでのビジネスではトレンドマイクロはウイルスの症状に対して「処方箋」を提供していたのですが、2.5秒に1個のペースで新種のウイルスが発生する状況下では、クラウドコンピューティング環境での事前防御が必須になってきています。取り巻く環境が刻々と変わるなか、われわれ自身も変わらなければいけない。
『変態』というと変な意味になりそうなんですが(笑)、『トランスフォーメーション』をしなければならない。それが組織の課題です。これまでとは打って変わって、今後は当社からユーザー企業に説明し、導入支援を行い、フォローアップをするといった「サービスビジネス」がキーになるとみています。体制的にはサービスに関わるエンジニアをさらに多く育てていきたい。新しい世界にスピーディに対応し、顧客の環境の変化やペインポイントを理解しなければなりませんね。
眼光紙背 ~取材を終えて~
セキュリティの商材を取り扱っているトレンドマイクロ。結果は前年よりも伸び調子だったようだ。だが、IT全体を見渡すと厳しい年だった、と振り返る。
政権交代は、少なからず業界に影響を与えている。「CSAJの常任理事も務めているので、業界のいろいろな方からの懸念の声が聞こえてくる。今の日本では、競争力がどんどん失われ、そのうち近隣諸国に抜かれる。近隣諸国は人材教育や、それに伴うさまざまな支援策などを充実させ、行く末を見ていますよね。でも日本は足元ばかりをみている。日本政府を含めてもっと積極的な対策を打っていく必要がある」と業界の将来を案じている。
大三川取締役は「販社さんのなかには第3四半期で売り上げが20%落ちた会社さんもあるけれど、来年は皆の力を結集して通年で2ケタ成長したい」と希望を込める。(環)
プロフィール
大三川 彰彦
(おみかわ あきひこ)1982年3月、日本大学商学部経営学科卒業後、同年4月、日本ディジタルイクイップメント(現日本HP)に入社。92年12月、マイクロソフト、2003年2月、トレンドマイクロに入社し、日本地域セールス&マーケティング統括本部長に就任。07年12月 上席執行役員 日本地域担当兼グローバルサービスビジネスGM 兼グローバルコンシューマビジネスGMを経て、08年3月より現職。
会社紹介
トレンドマイクロは1988年、米ロサンゼルスで創業し、昨年20周年の節目を迎えた大手アンチウイルスソフトベンダー。日本法人は東京に本社を置き、99年7月、NASDAQに上場。00年8月には東京証券取引所第1部に上場した。昨年度の連結売上高は1017億700万円(08年12月期)。