ネットワーク関連製品メーカーのジュニパーネットワークスは、2009年11月1日付で細井洋一氏が社長に就任、新体制で再スタートを切った。今年4月から米国本社の幹部がトップを兼務する体制だっただけに、ネットワーク関連業界で話題を呼んでいる。細井氏が掲げるのは、「中堅から大手への変貌」。得意の通信事業者向けビジネスに加え、エンタープライズ向けビジネスの拡大に向け、どのような戦略を打ち出そうとしているのだろうか。
これまでの集大成で社長に就任
──米国本社の幹部に引き抜かれたそうですが、前職(半導体メーカーのエヌビディア日本法人社長)とは畑違いとの見方もあります。なぜ、ジュニパーネットワークス日本法人の社長になろうと思ったのですか。
細井 実は、経歴でいえば、ネットワーク業界のほうが長いのです。例えば、バイテル・ジャパンでテレックスからFAX、VPNという流れでビジネスに携わりましたし、サン・マイクロシステムズでは「Network is a Computer」という理念のもとで業務に従事しました。このコンセプトは、言葉通り、コンピュータはネットワークありきで動くということです。コンピュータメーカーが、「ネットワークを第一に考えるんだな」と実感しながら仕事した覚えがあります。このような経験がベースになっています。
また、前職がエヌビディアだったのも、実は大きいんです。画像や映像などがHD化の流れになっているなか、エヌビディアはGPU(画像処理部品)メーカーとして大きな変革を遂げましたが、ポイントはネットワークと捉えていました。ネットワークが進化しなければ、高精細な映像などを配信できないからです。
このように、コンピュータとネットワークのICT業界に長くいるわけですが、その集大成として当社の社長になったのです。さらにいえば、米サン・マイクロシステムズのデビット・イェンが米ジュニパーネットワークスに転職したことも入社した理由です。「デビットが入った会社ならば間違いない」と、日本法人社長を引き受けたのです。
──実際、社長に就任されていかがですか。
細井 まず驚いたのが、次世代テクノロジーに対するR&Dです。売上高全体の20%という莫大な金額を投資していることに、大きな期待感をもちました。もちろん、現在のテクノロジーにも投資しており、さらに先を見据えたR&Dを行っているということです。
日本法人の社内の様子をいえば、“やんちゃ坊主の集まり”という表現が適切かもしれません(笑)。ネットワークに“命”をかけていると思えるほど、やる気がある連中です。製品の開発面では、ワールドワイドの視点に立ち、堅牢性と先進性を重視している。日本法人には、ベンチャー精神が旺盛な社員が多い。そういった意味では、まさに中堅企業から大手に生まれ変わろうとしている。そんな印象をもっています。
──課題はありますか。
細井 当社は現在、人員が120人規模なのですが、大手に生まれ変わろうとしているなかで、いかにスケールアップできるかということですね。みなさん、子どもの頃に経験したかもしれませんが、成長する時って体の節々が痛くなりますよね。今、当社はそのような状況だといえます。業績が伸びなければ急激に人員を増やすというわけにもいかないので、いかに現状の人員で成長できるか。これが課題です。ただ、社員の意識は高いので、決して達成できない目標ではないと自負しています。
──現状の人員で成長するために、体制を変えたりはしないのですか。
細井 当面は、体制を変えるつもりはありません。今は、各社員と面談や立ち話などでコミュニケーションを図り、一人ひとりの能力を把握することに時間を費やしています。そして、1年後、3年後を思い描きながら、120人規模の最適な体制を追求していきます。ですので、大きな組織変更といえば、来年夏ぐらいと考えています。
どうすれば最適な製品・サービスを提供できるかを追求する。
したがって、販売パートナーとは将来的なビジョンを共有していく。
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