DB(データベース)ベンダーのファイルメーカー社長として、2010年3月30日付で石井元氏が就任した。ミッションは「製品を広める」こと。既存ユーザーが多い中堅・中小企業(SMB)だけでなく、大企業でも「FileMaker」シリーズの新規顧客を開拓していく。これまでのビジネスモデルに、ちょっとしたエッセンスを加え、DBの最適な使い方を浸透させる方針だ。「安定成長を維持し続ける」と話す石井氏に今後の戦略を聞いた。
高性能にマーケティングを付加
──今年3月30日付で社長に就任されましたが、ファイルメーカーの第一印象はどのようなものでしたか。
石井 入社前に感じたことは、国内外で非常に歴史があり、お客様を多く獲得している会社と捉えていました。実際に入ってからも、この印象は変わらず、しかも非常に強く感じたのは、当社のファンが多いということです。ユーザーが心の底から製品を慕ってくれる。ボランティア的に、ユーザーが無料でセミナーを実施してくれるケースもあるのです。このような方々に支えられている。こういったことから、他社とは一味違う会社という印象がすごく強くあります。
──一方で、課題として捉えておられるのはどのような点でしょうか。
石井 強いて課題を挙げるならば、先ほど申し上げたようなコアなファンがいるにもかかわらず、まだまだ当社の製品が一般的に広く知られていないということです。なかには、「(親会社のアップル製品である)Mac専用」だとか、「SMBに特化している」という印象をもっている方がいらっしゃるのかもしれません。実際には、当社の製品はMacだけでなくWindowsにも対応しています。むしろWindowsユーザーのほうが多いくらいなのです。企業規模に関しては、確かにSMBが多くを占めますが、大企業が導入しているケースも増えています。拡張性があり、少人数でも大人数でも使える。このような製品であることを、もっとアピールしていきたい。
──課題解決の策はありますか。
石井 マーケティング面では、6月から全国5か所でのプライベートイベントを開始しました。秋には、カンファレンスも実施する予定です。カンファレンスについては昨年、申込者が多く、定員オーバーでお断りしたケースがあったと聞いています。今年は広い会場を確保するなど、できるだけ多くの方に参加してもらいたいと考えています。
──マーケティングに加え、販売面の強化も必要ですね。
石井 その通りです。引き続き、ディストリビュータや家電量販店などとパートナーシップを深めていきます。当社製品をベースにソリューションやサービスを開発する企業に対して世界規模で展開しているアライアンス「FBA(FileMaker Business Alliance)」のメンバーが販売するケースもありますので、このアライアンスによる拡販も視野に入れます。
販売支援の強化策については、例えば販売促進用ツールの提供を考えています。店頭では現在、製品展示のラックを置いています。加えて、製品の使い方が分かるカタログの配布なども考えています。当社の製品領域「DB(データベース)」というのは、実は何ができるのかを訴えるのが難しいのです。そこで、適した用途を提案する。当社のソリューション事例は300以上に達しています。この事例を精査して、業種別の事例集の作成を模索しています。このような取り組みによって、ユーザーと販売パートナーに理解していただき、とくに販売パートナーがビジネスを拡大しやすい環境を構築していきます。
当社の製品を導入していただいた企業には、例外なく高く評価してもらっています。指名買いも多い。これまでは、「製品力」で売れていたのです。しかし、今後は製品力だけでなく、当社側からもマーケティング面や販売面を強化して、全方位で広めていくことが製品を普及させるために重要だと考えています。
まだまだ当社の製品は一般的に知られていない。
拡張性があり、同じソフトで少人数でも大勢でも使える製品であることをアピールしていきたい。
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