SIerの三井情報開発とNIerのネクストコムが合併して2007年4月に誕生した三井情報。今年度(11年3月期)は4年目ということで、「SIとNIの融合」を果たすインテグレータとして昨年度よりも1ステップ上の取り組みが必要となる。今年度から始まる3か年の新しい中期経営計画を策定、6か月が経過しようとしている現在、果たして、強みを生かした事業は実現できているのか。下牧拓社長に話を聞いた。
組織変更で事業を三本柱に
──三井情報開発とネクストコムが合併して、昨年で3年が経過しました。4年目に入った今、力を入れておられるのはどんなことでしょうか。
下牧 確かに今年3月(昨年度)で合併から3年が経過し、今年度は一つの節目を迎えたといえます。実際、昨年度で中期経営計画が終了していますので、新しい中期経営計画で今年度は進んでいます。
昨年度の中期経営計画は、合併した効果を出すための路線を敷くことに重きを置いていましたので、社内体制の整備がメインだった。その成果が現れて、基盤は整ったといえます。ですので、今年度は、整備した基盤を生かして、いかに成長軌道に乗せるか。これがカギになってきます。今回の中期経営計画では、経営ビジョンとして、「顧客企業の経営戦略や業務基盤をICT(ITとネットワーク)で総合的に支える『ICTトータルマネジメントパートナー』になる」ことを掲げました。このビジョンをもとに、昨年7月から役員を招集し、現場の社員の声を吸い上げながら新中期経営計画の策定に向けて時間をかけてたっぷりと議論しました。成長軌道に乗ることを目指し、社員全員が策定に取り組みました。計画に沿って、今はとにかく進んでいる状況です。
──今年度に入って半期が終わろうとしていますが、順調に進んでいる、と。
下牧 昨年度に比べれば調子がいい。リーマン・ショックの影響による大不況は、底を打ったといえます。
──今回の中期経営計画のポイントは何ですか。
下牧 当社は、アプリケーションとシステムを開発するSI機能をもった三井情報開発と、ネットワーク関連の製品販売やインテグレーションを手がけるネクストコムが合併したということで、「SIとNIの融合」が果たせる会社として誕生した。融合して何がやれるかがポイントなんですが、それにはSI、NI、SI+NIといった三本柱が必要なんです。そこで、今年度からSIを手がける「ビジネスソリューション事業本部」、NIを行う「プラットフォーム事業本部」、SIとNIの両方を生かした「サービス事業本部」を設置しました。これにより、顧客企業が要望することに対して、三方向から応えることができると自負しています。
SIとNIの融合で実現できることを「サービス」としたのは、世の中が所有から利用へとなり、サービス化に向かっているからです。実際、今年度からサービスを提供しています。具体的にはSaaSですが、CRE(企業不動産)や省エネなどに関連したサービスを提供しています。また、サービスを提供するには、データセンター(DC)がポイントですので、設備の増強を進めています。新しいDCは、11月からの稼働を予定しています。
──SIとNIの融合が生み出す「サービス」を新たに加えたことで、市場のニーズにマッチしたビジネスが展開できるということですね。
下牧 「その通り」と言いたいところですが、どうですかね(笑)。ただ、一つだけ言えるのは「融合」というのは何もすべてを融合すればいいというわけではない。一つひとつの強みを生かし、それに新しい強みを付加するのが望ましいと考えています。それを具現化したのが「サービス事業本部」の設置なのですが、打つべき手は打ったと考えています。今年度は第1四半期で業績が前年同期を上回り、ビジネスは堅調に伸びています。決してベストとはいえませんので、「そこそこの結果」という言い方をしますが、今の状態を続ければ確実に成果が出せると確信しています。
──ただ、今年度は「増収減益」になっていますね。
下牧 これは、DCへの設備投資による減益です。売上高は上回る計画ですので、主要ビジネスは伸びるということです。
「融合」というのは、すべてを融合すればいいというわけではない。
一つひとつの強みを生かし、それに新しい強みを付加するのが望ましい。
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