SIerの三井情報開発とNIerのネクストコムが合併して誕生した三井情報。2007年4月の統合から今年度(11年3月期)で4年目に突入している。合併前、「SIとNIの融合を実現する」インテグレータとして業界では話題を呼んだが、昨年度で3年という一つの節目を迎えた。現段階で果たして統合効果が出ているのか、気になるところだ。
三井情報の昨年度(10年3月期)の通期連結業績は、売上高が489億9900万円(前年度比8.5%減)、営業利益で25億7400万円(36.0%減)、経常利益26億7400万円(34.2%減)だった。同社は、統合完了の初年度となる07年度から3か年の中期経営計画を策定したが、減収減益という結果に終わった。これは、世界同時不況という外部環境が大きな原因。加えて、「合併に伴う社内整備は進捗した。しかし、事業面では統合効果が十分に現れなかった」と下牧拓社長は認める。
そこで、同社は今年度からの3か年を「成長軌道の実現の期間」と捉え、「10年後の目標に向けたファーストステップ」(下牧社長)という方針を示している。中長期の持続的な成長に向けて社内体制を整備し、機能別組織を事業本部制に変更。これに合わせて、「コンサルティング」「システム構築」「システム販売」「運用・保守・サービス」で手がけていたビジネスを、SIを中心とした「ビジネスソリューション」、NIを中心とした「プラットフォームソリューション」、SIとNIの強みを生かした「サービス」の三本柱を主軸に据えて、それぞれのビジネスで事業本部を設置することになった。
これまで同社は、すべての事業で「SIとNIの融合」を意識してきた。しかし下牧社長は、「ユーザー企業のニーズによっては、SIだけ、NIだけで提供したほうが適しているケースも多かった」と振り返る。SIとNI両方をもつという強みを生かすためには、「SI、NI、SIとNIの両方と、3方向で強みが生かせる体制が必要と判断した」としている。
この事業本部制で、利益拡大の要になるのは「サービス」だ。具体的にはSaaSがメインで、ユーザー企業に対してSaaSを提供するためのネットワークインフラ構築なども行っていく。また、「当社所有のデータセンター(DC)からSaaSを提供していくことに加え、DC事業者とのアライアンスでビジネスを拡大することも進める」という。これにより、パートナーシップを組んだDCのインフラをサポートするビジネスが生まれる。
今年度の状況は、第1四半期で売上高97億1100万円(前年同期比5.8%減)、営業損益2億5400万円の赤字(前年同期は3億5700万円の赤字)、経常損益2億2400万円の赤字(3億2000万円の赤字)と改善に向かっている。通期見込みは、売上高が510億円(前年度比4.1%増)、営業利益24億5000万円(4.8%減)、経常利益250億円(6.5%減)。利益が減少するのは、「サービスを広げていくためにDC設備に投資するため」という。SIとNIを強める体制と、設備の基盤を固めながらサービスを創造していく。これにより、“真”のSI/NI融合を目指すというわけだ。(佐相彰彦)