1990年代後半から始まった企業のウェブサイト構築ラッシュの流れを掴み、ウェブ制作会社としてNo.1のポジションを確立したアイ・エム・ジェイ(IMJ)。国内最大のECサイト「楽天市場」を構築・運用するなど、有力サイトを構築した実績は数え切れないほど多くある。ただ、企業にとってウェブサイトを運用することが当たり前になった現在、ただ構築するだけではユーザー企業は満足しない。その流れを感じ取り、廣田武仁社長は新たなビジネス戦略を打ち出した。それが「デジタルマーケティングでNo.1のポジション」だ。
ニーズの変化で組織再編
──1990年代後半から2000年前半にかけて、「楽天市場」や「Sony Style」などの有名ウェブサイトの構築・運用を手がけ、ウェブサイト制作会社としてNo.1のポジションを確立しました。ただ、昨年度(10年3月期)は業績が低迷。転換期のように感じます。
廣田 アイ・エム・ジェイ(IMJ)は、1996年にデジタルハリウッドから分社・独立した企業です。90年代後半から00年代前半は、インターネットの爆発的な普及に後押しされ、ウェブサイトの建築ラッシュといいますか、どの企業もウェブサイトの構築に乗り出しました。IMJはその流れに乗って成長し、01年には株式上場を果たすことができました。
IMJはウェブサイト構築・運用では老舗です。それに、PC用とモバイルサイト用のどちらも構築・運用でき、しかも大規模開発を手がけるノウハウ、体制をもつ企業はそうはいない。楽天やソニーと仕事ができたのはこうしたことがポイントで、当時はIMJのスタッフが楽天には60人くらい、ソニーには20人くらい常駐したこともあります。大手のユーザー企業に評価され、おかげさまで先頭を走ることができたと思っています。
ただ、建築ラッシュだった過去とは違います。ほとんどの企業はウェブサイトをもち、マーケティングのためにウェブサイトを活用するのは当たり前。単純にウェブサイトを構築して運用するだけでなく、今はどう有効活用して商売につなげるかが、ユーザーの重視するポイントです。言い方は雑ですが、ユーザーはかなり“賢く”なっているのです。そうなると、われわれも変わる必要がある。「デジタル(メディア)マーケティングを支援してユーザーのビジネスを成功に導く企業」にならなければなりません。
──そこで、今年度から大幅に組織を変えるに至った、と。
廣田 前年度まで「ウェブサイト構築」「モバイルサイト構築」「集客(運用)」といったかたちで、機能やデバイス別で組織を分けていました。ウェブサイト建設ラッシュの時代であれば、それぞれが独立して成長できましたから、それでよかった。ですが、今はそれぞれを連携させて、お客さまにトータル提案することが重要。ですから、PC用サイトとモバイル用サイトそれぞれで分かれていた部門を統合し、PCとモバイルサイトの構築から運用、集客やROI(投資収益率)最適化のコンサルティングサービスまでを一部門で手がけられる体制に変えたのです。IMJとモバイル関連ビジネスの子会社IMJモバイルの営業組織も統合しています。
──再編の効果は現れていますか?
廣田 営業戦略として重視しているのは、広くたくさんの企業を掴むのではなく、優良顧客を深耕することです。今年度(11年3月期)第1四半期でみると、1社ごとの取引単価が上がっており、まずまずかなと。お恥ずかしい話、これまでPC用とモバイル向けサービスを両方とも提供できていたのは、全顧客の10%もありませんでした。ただ、再編後は、1社のユーザー企業に向けて、PC向けとモバイル向けサービスのどちらも提供できるケースも増えています。
ウェブサイトと情報システムの連携は今後必要になってくるはず。
マーケティングからみたシステムが求められるようになった時、
SIerと協業する可能性は十分にある。
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