OKI(沖電気工業)は、2010年4月に新・中期経営計画をスタートした。その1年前に就任した川崎秀一社長は、約2年にわたってATMなど業界特化の専用機器とこれに関連した「ソリューション&サービス」の拡大を事業の柱に据え、全社員の意識改革を図った。メーカーでありながら、クラウド時代に対応し、得意分野でサービスを拡充する考えだ。川崎社長の改革をひと言で表せば、既成概念を取り払って「マーケットインする」ということに尽きる。
「マーケットイン」への意識改革
──11年間、御社のトップを務めてこられた篠塚勝正社長兼CEO(最高経営責任者)の後を継ぎ、社長に就任して約2年間、どんな経営を心がけてこられましたか。
川崎 大局的にいえば、プロダクトアウト(自社の生産・販売計画に基づいて市場へ製品やサービスを投入する)ではなく、マーケットイン(まず消費者のニーズを十分にくみ上げて製品化して市場に投入)することを重点に据えて、企業全体の改革を進めてきました。「当社の製品が売れないのはなぜなのか?」──。基本的に顧客は必要のないモノは買わない。「必要だから買う」という製品を顧客にお届けできているのかということを問い続けることが、マーケットインの一つの姿勢だと言ってきました。前線にいる営業担当者が“先兵”となり、いま、あるいは将来にわたって、世の中で何が必要とされてくるかを探し出す作業を意識的に行わせています。
──IT業界内では、「OKI(沖電気工業)はいま、どんなことをしている会社なのか?」ということをよく耳にします。OKIは、メーカーなのでしょうか。
川崎 原点はメーカーです。それも、技術があって、すぐれた製品をつくることができるメーカーだったかもしれません。しかし、それではダメです。企業体の装いやDNAを新しく変えたうえで、メーカーであり続けたい。2009年4月に社長に就任してから、10年4月に初めて組織を大幅に再編し、事業本部を六つにくくりました。「利益は事業本部でつくり出せ」という狙いがあります。
いままでは、各事業本部にそれぞれ営業組織を組み入れていました。その営業組織をすべて事業本部の外に出して、「統合営業本部」に整理しました。営業担当者は、とにかく顧客に向き合って、営業活動を通じて販売する、“弾”を売ることに専念するようにしました。もう一つは、世の中の変化を常に捉えるということです。そうした変化を感じとって、「こういうモノをつくり出さないといけない」という具申をするようにと徹底しています。
──OKIのグループ全社員に対して、意識改革と発想の転換を求めているのですね。
川崎 そうです。営業担当者をはじめ、われわれは売れるモノを見つけ出すんだ、もしくは、自分たちの事業本部でやってくれないのならば、売れるモノを外部から自ら見つけ出して顧客に売っていくという姿勢を醸成しようとしています。また、営業組織を抜き出したことに加え、六つの事業本部のなかに、「ソリューション&サービス」を創設しました。その一つにクラウド・サービスがありますが、「サービス提供」は重要性を増しています。当社組織のなかには、製品をつくる事業体が縦に位置づけられています。それに横糸を通して、顧客が求める姿をまとめるのが、この事業本部の役割です。
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