年率2ケタ近い増収をイメージ
──クラウドコンピューティングにしても、近年注目を集めている中国ビジネスにしても、御社は少々対応が遅いように思えてなりません。
河井 遅いのではなく、他社と同じことをしても意味がないのです。あなたが遅いと指摘するクラウドにしても、当社は組織横断で500人規模の人員を投入しており、これとスマートコミュニティを融合した独自のアーキテクチャも開発しています。2010年秋には、家庭や工場、ビル、道路、電力設備などさまざまなハードデバイスから集めた情報をリアルタイム処理し、制御システムを通じて街全体のインフラを最適化する「スマートインテグレーションバス」を発表しました。クラウド技術やリアルタイムデータ転送技術、システム連携、制御システムなどを複合的に組み合わせたもので、当社ならではのもの。
中国でのビジネスについては、今はまだいえませんが、近いうちにこれまで仕込んできた成果をお披露目できますよ。
──制御系の要となる組み込みソフトは?
河井 組み込みソフトは、当社ならびに当社グループの東芝情報システムが強みとしている領域の一つですが、ここへきて回復の兆しがはっきりしてきました。エコカーに対するニーズの高まりで、自動車関連の一極回復という側面はありますが、仕事は着実に増えています。業務アプリケーションから制御系の組み込みソフトまでできるSIer限られていますので、この強みの部分は今後とも伸ばしていきます。
──お話をうかがっていると、大手ユーザー企業や国家プロジェクト級の公共案件に偏るイメージがあります。中堅企業向けの取り組みはどうですか。
河井 当社の売り上げの約8割が大手企業や大規模プロジェクトで占められているのですが、中堅企業向けビジネスも重点分野であることに変わりはありません。2010年秋には、年商100億~500億円の中堅ユーザー向けの業務アプリケーションを強化するため、当社とグループ企業、有力パッケージソフトベンダーの商材を体系化した「AGENT3(エージェントキューブ)」を発表しました。当社の人事給与と販売管理、東芝情報機器の就業管理、エス・エス・ジェイの財務会計、東洋ビジネスエンジニアリングの生産管理を揃えたものです。
正直に申し上げれば、中堅ユーザーに限っては当社グループ会社がそれぞれ個別に対応していたケースが散見された。私は以前、東芝の北陸支社長を務めていたのですが、支社長はその地域で会社を代表する存在なのですね。さまざまな業種業態の顧客と接する機会も多いので、東芝ソリューションはもっとこうした地域の“顔”をうまく使うべきだと考えています。
──今後の経営目標は。
河井 まだはっきりとは決めていません。ただ、国内外でのビジネスの状況をみる限り、向こう3年は年率2ケタ近い増収をイメージしています。
・こだわりの鞄 英国ロンドンの高級服仕立屋からスタートしたブランド「Aquascutum(アクアスキュータム)」の鞄。「北陸支社長に就くときに、コートとセットで購入した」そうだ。「支社長は地域の顔」であり、それにふさわしい身なりにと「東京・三越で買った」とのこと。
眼光紙背 ~取材を終えて~
河井信三社長のビジネス信条は「スピード」だ。ただ前に進むだけのスピードだけでなく、「縦横無尽に機動性あるスピード感」とも付け加える。
「前へ進むことが速い人は多いが、タイミングを見計らったり、ましてや撤退するスピードまでも速いという経営者は意外に少ない」と話す。右肩上がりの比較的分かりやすい経済環境は終わりを告げ、成長と収縮を繰り返しながら地球全体では総じて拡大していく複雑なビジネス環境にあるなか、前進のみのスピードでは不十分というわけだ。
「たとえ見切り発車でも前へ進み、ダメだと感じたらすぐに引く。そしてまた進む」。機動力あるスピード感を出すには、優秀な人材が不可欠で、なかんずく「ソフトウェアは人の頭脳やアイデアが製造装置そのもの。いくら人材が揃っていても、マネジメント力が貧弱では生かせない」と、自らも含めた経営・マネジメント力の強化を重視する。(寶)
プロフィール
河井 信三
(かわい しんぞう)1954年6月29日、兵庫県生まれ。78年、慶應義塾大学経済学部卒業。同年、東京芝浦電気(現東芝)入社。96年、電力事業部電力営業第二部グループ長。99年、電力事業部電力営業第一部長。05年、電力流通事業部電力流通営業部長。06年、北陸支社長。08年、東芝ファイナンス社長。10年11月、東芝ソリューション入社。11年1月1日、社長就任。
会社紹介
東芝ソリューションは、東芝グループの中核的SIerである。グループ会社に東芝情報システム、東芝情報機器、東芝ITサービス、東芝ソリューション販売首都圏などを抱える。2009年度(10年3月期)連結売上高は前年度比約11.4%減の2529億円と厳しかったが、2010年度(11年3月期)は同約8.4%増の2742億円への回復を目指す。