大手SIerの東芝ソリューション株式会社(梶川茂司社長)は、ビジネス領域の拡大を急ピッチで進める。東芝グループの強みを生かしたグローバル進出や、国内中堅企業市場の深耕など、新規領域への進出を加速。既存ビジネスの大きな伸びが見込みにくい状況を踏まえ、新規事業の立ち上げによる成長戦略を打ち立てるのが狙いだ。

「スマートコミュニティ」と中堅向けビジネスを本格化

 グローバル進出の柱の一つが、スマート・グリッドに代表されるITを活用した省エネ都市の支援ビジネスだ。東芝ソリューションでは「スマートコミュニティ(環境配慮型都市)」を支える、基盤ソフトウェアの開発に力を入れる。

 同社は、スマートコミュニティ向けシステム商材として「スマートコミュニティ統合ソリューション」を体系化。このソリューションの中核技術として、「スマート・インテグレーション・バス」を組み込んだ。家庭やビル、工場、発電所などから集められる情報をリアルタイムに共有する情報バスのことである。

スマート・インテグレーション・バスの概要

 スマート・グリッドビジネスには、ソフトウェアによる高度な制御技術が欠かせない。電力インフラに強い東芝グループと、システム開発の専門ベンダーである東芝ソリューションのノウハウを組み合わせることで、スマートコミュニティビジネスを軌道に乗せる。経済産業省の「次世代エネルギー・社会システム実証=スマートコミュニティ実証」によると、スマートコミュニティの国内市場規模は2020年に約3.2兆円で、約6.2万人の国内雇用が創出、と試算されている。

 スマート・グリッドは、中国やインドなど、電力需要が急拡大している経済新興国で導入機運が高まっている。東芝ソリューションは、こうしたチャンスを足がかりに「海外ビジネスを拡大させる」(落合正雄・取締役統括技師長)方針を示している。

東芝ソリューションの落合正雄・取締役統括技師長

 もう一つの注力分野は、国内中堅企業市場だ。大規模ユーザーのシステム構築を強みとしてきた東芝ソリューションは、年商100~500億円の中堅ユーザー向けの業務アプリケーションを強化するため、グループ企業や有力パッケージソフトベンダーの商材を体系化し、「AGENT3(エージェントキューブ)」を発表した。東芝ソリューション本体の人事給与、東芝情報機器株式会社の就業管理、エス・エス・ジェイ株式会社の財務会計、東洋ビジネスエンジニアリング株式会社の生産管理を揃える。販売管理については現在開発を進めており、2011年初めには出荷を開始する予定だ。

AGENT3(エージェントキューブ)の概要

明日(あした)のカタチを創る力

 東芝ソリューションが、グローバルや中堅市場へ事業領域を拡大する背景には、国内の産業構造の変化がある。11月11~12日にかけて、都内で開催したイベント「東芝ソリューションフェア2010」の会場で基調講演に立った落合取締役は、産業構造の転換に資するビジネスモデル変革への決意を力強く表明した。

 近年、日本の競争力は低下し続けている。国民一人あたりGDPの下落に加え、2030年までに生産年齢人口が1200万人減るという予測もある。つまりデータからみると、日本は市場も労働力も縮小していく傾向が明らかで、世界に類をみない少子高齢化という問題に直面しているのだ。 

 経済産業省産業構造審議会が2010年6月に発表した「産業構造ビジョン2010」は、構造的問題を克服するための「4つの転換」を提言している。「産業構造の転換」「企業のビジネスモデルの転換」「グローバル化と国内雇用維持の両立への転換」「政府の役割の転換」だ。これらの転換のために、さまざまな施策が考えられているが、ITはそれらを支える存在として大きく注目されている。落合取締役は、なかでも「スマートコミュニティをはじめとするスマート化や、クラウドコンピューティングの推進が重要視されてくる」とみる。

大勢の来場客で賑わう「東芝ソリューションフェア2010」会場

 東芝グループは、「スマート・グリッド」をさらに発展させ、電気、ガス、水道、通信、交通など、トータルに環境に配慮した都市「スマートコミュニティ」の創出を目指している。東芝ソリューションは、スマートコミュニティ環境の構築基盤やアプリケーション群を提供し、コンサルから運用までトータルにサポートする。

 「産業構造ビジョン」が提言した「企業のビジネスモデルの転換」「グローバル化と国内雇用維持の両立への転換」では、クラウドコンピューティングの活用が期待されている。クラウドコンピューティングの本質は、「人と人」「企業と企業」「企業と社会」を「つなぐ」役割を果たし、新しい価値やビジネスモデルをもたらすことといえる。

 人と社会と企業を「つなぐ」とは、どのようなことなのだろうか。まず、クラウドに「つなぐ」ことで、いつでも、どこでも、好きなだけITを活用することができるようになる。また、複数の企業を同一クラウドに「つなぐ」ことで、コミュニティを形成して「集合知」を活用できるようになる。また、複数のクラウドを「つなぐ」ことで、新しいサービスを提供することもできるだろう。クラウドを利用し、業種・業界のノウハウと、IT基盤やSIのノウハウを強いパートナーシップで「つなぐ」ことで、新たな価値を提供することも可能だ。このような「協創」によって、顧客とともに新たなビジネスが創られていくのである。

 東芝ソリューションは、11月8日、新たなブランドステートメント「明日(あした)のカタチを創る力」を発表した。「人」と「技術」と「サポート」の三つの力によって顧客満足度を高め、顧客とともに明日のカタチを創るソリューションパートナーを目指す。