東日本大震災から3か月、日本の情報サービスの課題や弱点が露わになってきた。首都圏に集中しすぎるデータセンター(DC)や、システムの標準化への遅れが災害時の復旧を困難にすることなど、事業継続に対する疑念が頭をもたげてくる。復興に向けた取り組みが本格化するなか、情報サービス業はまず何を改め、どう進んでいくべきなのかを浜口友一・情報サービス産業協会(JISA)会長に聞いた。
事業継続を根底から揺るがした
──東日本大震災から3か月が経ちました。震災によって日本の情報サービスの弱点が次々と明らかになりましたが、まずはJISA会長として、どのように受け止めておられるのかを聞かせてください。
浜口 われわれ情報サービス業は、これまでユーザーに事業継続プラン(BCP)をずいぶんと提案してきたのですが、至らぬ点が数多くあったといわざるを得ません。BCPのあり方を根底から揺るがしたし、抜本的に考え直す事態だと捉えています。
──具体的にはどのような点でしょう。
浜口 大きく分けて二点。データセンター(DC)と情報システムの標準化です。まず、DCについては、利便性を求めるばかりに首都圏に集中しすぎている。情報システムの最後の砦であるDCの多くは耐震・免震構造を備え、何重にも電源を用意してきました。地震発生時はこうした取り組みが功を奏して、日本経済や社会を支える基幹システムがダウンするような損害は、辛うじて免れた。これは評価していいと思うのですが、その直後からの広範囲かつ長期間にわたる電力不足への備えは十分ではなかった。もう一つ、システムやデータの標準化が十分でないために、柔軟なバックアップ体制や別システムに移行することが難しい。復旧が遅れる原因にもなり、コスト面でみても独自仕様のシステムにメリットは見出せません。
──JISAでは震災直後にDC用発電機に使う燃料の優先供給や、今夏の節電に関しての要望書を経済産業大臣宛に出すなど、DC絡みで助けを求める場面が続きました。
浜口 それだけDCは重要な設備であり、止まることが許されないのです。 DCは基本的に非常用発電機を備えていますが、あくまでも非常用であり、長時間の運転を連日行うような設計にはなっていない。震災直後は燃料供給の途絶が現実のものとなり、また仮に発電機を長時間動かせたとしても、耐久性の問題や燃料の備蓄に関わる消防法、排気ガスに関する大気汚染防止法、騒音規制法などさまざまな規制の問題にぶつかります。
幸いにも震災直後は、DCが集中する23区の多くが計画停電の対象外となり、今夏の前年同期比15%のピーク時電力の削減では、DCに限っては0~10%減と特別な配慮をいただけました。これは、あくまでも特別な配慮であり、DCそのものの事業継続の能力が向上したわけではありません。
──どうすればよいとお考えですか。
浜口 まず、DCの見直しは早急に行わなければなりません。首都圏集中を是正するとともに、日本全体の電力事情がさらに悪化するようであれば、海外DCへの分散も視野に入れるべきでしょう。最悪の事態は誰も考えたくないものですが、それでも、どこが弱かったのか、何が問題だったのかを業界全体で真摯に反省して、改善に向けた行動を起こさなければならない。DCのインフラだけでなく、標準化によってオープンで汎用的な情報システム基盤の普及促進に努め、再び大規模な災害や障害が起こってもバックアップ先で迅速に復旧できる仕組みに変えていくことが求められています。
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